「完結」異世界転生した男は特殊部隊に所属していた

leon

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第三話 魔王

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村に戻ると、住民たちの目が明らかに変わっていた。昨夜の魔物討伐と遺跡での戦いをレンから聞いたのだろう。広場に集まった彼らは、俺を見るなり感謝の言葉を口にした。「本当に助かった。あんな化け物を一晩で…お前は神の使いか何かか?」一人の女が涙ぐみながら言ったが、俺は軽く手を振って制した。「神じゃない。ただの人間だ。それより、これからどうするかだ。魔物の根源は北の山脈にあるらしい。そこを叩かないと、根本的な解決にはならない」村長のガルドが前に出て、渋い顔で頷いた。「北の山脈か…あそこは昔から不気味な場所だ。魔王の伝説も残ってる。お前一人で行くつもりか?」「一人でもなんとかなるが、情報と補給があれば助かる。弾薬が減ってきた。火薬や金属を扱える奴はいるか?」村長は少し考え込み、鍛冶屋の老人を呼んだ。名はトラン。白髪で筋張った腕を持つ頑固そうな男だ。「お前さんのその武器、見たことねえな。火薬ってのは知らんが、鉄なら扱える。どんな形にすりゃいい?」俺は89式小銃を見せ、弾丸の構造を簡単に説明した。トランは目を細めて銃を眺め、やがて頷いた。「難しいが、やってみよう。材料は村の倉庫にある分で足りるはずだ」弾薬の補充が現実的になった。これで戦える。次に、食料と移動手段だ。「北の山脈まで何日かかる?馬か何かはあるか?」レンが答えた。「歩きなら5日。馬車なら3日だ。馬はあるが、道が険しいから荷物は最小限にしないとな」「なら、馬車を用意してくれ。食料は干し肉と水で十分だ。あと、地図があれば貸してくれ」村長が古い羊皮紙の地図を渡してきた。森、川、山脈が大まかに描かれている。現代の地図ほど精密じゃないが、方向は分かる。俺は計画を立て始めた。

1. 弾薬を補充する。
2. 馬車で北へ向かう。
3. 山脈で魔王の手先を叩き、本拠を探す。シンプルだが、実行には慎重さがいる。この世界の敵は予測不能だ。

その夜、村で簡単な宴が開かれた。住民たちが俺を労うためだ。酒と焼いた獣の肉が出され、子供たちが笑いながら走り回る。戦場慣れした俺には妙に新鮮な光景だった。レンが隣に座り、小声で言った。「俺も北へ行く。お前一人じゃ心細いだろ?」「援護は助かる。だが、無理はするな。お前が死んでも責任は取れんぞ」レンは笑って頷いた。「死ぬ気はないさ。ただ、村を守りたいだけだ」その気持ちは分かる。俺もかつては国のために戦った。目的は違っても、戦う理由があるならそれでいい。


翌朝、馬車に乗り込んだ。トランが作った弾は完璧じゃないが、試射で命中精度を確認済みだ。数は50発。これでしばらくは戦える。レンが馬を操り、俺は地図を手に周囲を警戒しながら進んだ。森を抜け、荒れた平原を越える。道はでこぼこで、馬車が揺れるたび装備が音を立てた。「この辺は静かだな。魔物は出ないのか?」俺の問いに、レンが首を振った。「平原は安全だ。問題は山脈に入ってからだ。あそこは霧が濃くて、魔物がうじゃうじゃいるって話だ」霧か。視界が悪いのは厄介だ。暗視装備がない以上、音と勘で戦うしかない。訓練で培った索敵技術が試されるな。

3日目の昼、山脈の麓に着いた。切り立った岩肌と深い霧。確かに不気味な雰囲気だ。馬車を隠し、徒歩で進むことにした。俺は銃を構え、レンは槍を手に持つ。「気配を感じたらすぐ教えろ。敵が先制する前に叩く」レンは頷き、慎重に歩き始めた。霧の中、視界は10メートル程度。風が冷たく、遠くで何かが唸る音が聞こえる。魔物か、あるいはもっと厄介な何かか。突然、レンが足を止めた。「聞こえるか?足音だ」耳を澄ますと、確かに複数の足音。重く、不規則だ。俺は銃を構え、霧の奥を睨んだ。現れたのは、黒い甲冑をまとった人型の魔物。数は8体。赤い目が霧の中で光っている。「レン、後ろに下がれ。俺が仕掛ける」一呼吸置き、最初の1体に弾を撃ち込んだ。頭が吹き飛び、倒れる。だが、他の7体が一斉に突進してきた。動きが速い。俺は冷静に狙いを定め、次々と撃つ。4体を仕留めたところで、残りが至近距離に迫った。拳銃に切り替え、素早く胸を撃ち抜く。レンが槍で援護し、最後の1体を突き刺した。「やるな、お前」レンが息を切らしながら言った。俺は肩をすくめた。「訓練の賜物だ。それより、これが魔王の手先なら、本拠が近いはずだ。気配を探れ」霧の中をさらに進むと、岩壁に隠された洞窟が見えた。入り口から不気味な風が吹き出している。間違いない、ここだ。


洞窟に入ると、空気が一変した。湿気と腐臭が混じり、壁には奇妙な紋様が刻まれている。奥から微かな光が漏れていた。俺はレンに小声で指示した。「敵がいたらすぐ下がれ。俺が先行する」銃を構え、静かに進む。洞窟は意外に広く、道が分岐している。直感で右を選び、さらに奥へ。やがて、巨大な空間に出た。中央に黒い玉座があり、その上に浮かぶ影。人間の形だが、異様に大きい。全身が黒い霧に覆われ、目だけが赤く輝いている。「魔王か?」俺の声に、影が低く笑った。「我が名はザルガート。この世界を支配する者だ。お前、異邦人か。面白い力を持っているな」「支配とか興味ない。村を襲うのを止めれば、俺も用はない」ザルガートが嘲笑うように声を上げた。「愚かな人間め。この世界は我が物だ。お前ごときが何をできよう?」交渉の余地なし。俺は即座に銃を構え、弾を撃ち込んだ。だが、弾は影に吸い込まれ、効果がない。物理攻撃が効かないのか。「レン、援護しろ。弱点を探す」ザルガートが手を振ると、黒い霧が襲ってきた。俺は横に跳び、霧を避ける。レンが槍を投げると、霧が一瞬薄れた。そこに赤い核が見えた。先の手先と同じだ。「胸だ!狙え!」拳銃に切り替え、核に連射。ザルガートが咆哮を上げ、動きが鈍る。レンが槍で突き刺し、俺が最後の弾を撃ち込んだ。核が砕け、影が崩れ落ちる。「これで終わりか?」息を整えながら確認すると、玉座の奥から光が溢れ、石板が浮かんだ。遺跡と同じ声が響く。「魔王を倒したか。見事だ。お前はこの世界の救い手だ。新たな力を与えよう」光が再び俺に流れ込み、体の感覚がさらに鋭くなった。魔王を倒した報酬らしい。レンが疲れ切った顔で笑った。「お前、化け物だな。本当に終わったのか?」「終わったさ。帰ろう」洞窟を出ると、霧が晴れていた。山脈が静寂に包まれ、遠くに村の灯りが見えた。

村に戻ると、住民たちが歓声を上げて迎えた。魔物の脅威が消え、平穏が戻ったのだ。村長が深々と頭を下げた。「ありがとう、佐藤。お前のおかげで村は救われた。何か望みがあれば言ってくれ」「弾薬と食料を補充してくれれば十分だ。あと、この世界のことをもっと知りたい」その夜、村で再び宴が開かれた。俺は酒を飲みながら、これからのことを考えた。魔王は倒したが、この世界にはまだ未知のことが多い。元の世界に戻る方法も分からない。だが、生き延びる術はある。特殊部隊員としてのスキルと、この世界で得た力があれば、どこでもやっていける。翌朝、レンが見送りに来た。「これからどうするんだ?」「しばらく旅だ。この世界を見て回る。何か用があれば呼んでくれ」レンは笑って手を振った。俺は馬車に乗り、北へ向かった。次なる戦いが待っていようと、俺は生き抜く。それが俺の生き方だ。
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