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幕末妖怪の章
知世と雛妃
しおりを挟む私は緊張しながら知世ちゃんが待つ部屋の前で襖を開けるのを躊躇していた。
未だにどう知世ちゃんに話をしていいか分からないでいた。
でもこの今の姿を見たら知世ちゃんなら何か直ぐに察してしまうのだろう。
「ふぅ~…知世ちゃん、入るよ。」
「雛妃ですか?どうぞ。」
私は意を決して襖に手を掛け、一思いに開けた。
知世ちゃんは繕い物をしていたのか私に背を向けて座っていた。
「雛妃、今までどうしていたんですか?心配したんです…」
振り向きざまに知世ちゃんは固まった。
「た、ただいま知世ちゃん。」
「ひ、雛妃なんですの?!」
「うん、私だよ。」
「まぁぁぁぁあ!!何故またこんな美少女になってしまいましたの?!これでは余計に変な虫が寄ってくるでなないですか!!」
私は脱力した…そうだ、知世ちゃんはこうだった。
「知世ちゃん、驚かないの?私人間じゃ無かったんだよ?半妖だったの…」
「あら、私の彼氏も人間じゃありませんわよ?ただ親友も人間では無かっただけの話ですわ。大した問題じゃありませんわよ?」
ケロッと言う知世ちゃんに私は抱き着いた。
「まぁまさか雛妃私が雛妃が人間じゃなかったら友達をやめてしまうとか考えてましたの?!甘く見て貰っては困りますわ、私の雛妃愛はそんなに軽い物ではありませんわ。」
「ありがとう…知世ちゃん。」
「それにしても…かなり見た目が分かりましたわね?前の雛妃も素敵でしたけど、こちらの雛妃もいいですわ~。美少女大好物ですわ!」
ほう~と頬を染める知世ちゃん…私の心配は杞憂に終わった。
それから知世ちゃんにお父さんから聞いた龍の話や私の存在についての話をした。
「虹龍ですか…雛妃大変な事になりましたわね?」
「うん…でもね私がもっと成長すれば知世ちゃんを現世に帰してあげられるかもしれないの!」
「そうですか…」
知世ちゃんは微妙な顔をした。
きっと土方さんの事を考えているんだろう。
「雛妃はどうしますの?」
「私は…こっち側だから。でも現世の両親もお兄ちゃんも大切な家族なの。育ての家族だもん。勿論こっちのお父さんとお母さんも大切な家族だよ?私は欲張りなんだ、現世の家族にも会いたい。」
「それでこそ雛妃ですわ!これからは私にも遠慮無く言ってくださいね。私はただの人間ですから出来ることは凄く少ないと思いますけど、雛妃の力になりたいのですわ。」
「ありがとう知世ちゃん、これからは隠さずにちゃんと話すよ。約束する!」
私と知世ちゃんは小指を絡めて笑い合った。
「奈緒さんにも久しぶりに会いたいけど…この姿じゃ会えないよね。」
「元の雛妃の姿にはなれませんの?」
「それが…」
雛妃は攻撃特化、変化の術などはからっきしだったのだ。
これには白龍も頭を抱えていた。
「そうですか、雛妃らしいですわね。でも、奈緒さんならどんな雛妃でも受け入れて貰えると私は思いますわ。」
「そうかなあ?今度皆に奈緒さんに会いに行っていいか聞いてみるよ。」
「それがいいですわ、奈緒さんも喜ばれますよきっと。」
私は夕食の時にでも聞いてみようと決めた。
夕食を作る為に厨房に現れた私を見て島田さんが腰を抜かす程驚いたのは言うまでもない。
近藤さん達が島田さんに上手く言ってくれていた様で追求などはされなかった。
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