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幕末妖怪の章
父親との一時
しおりを挟む覚醒して以来私はお父さんの白龍と過ごしている。
知世ちゃんにはひーちゃんが何とか誤魔化してくれたらしい。
私は今お父さんから龍の歴史や現状、龍族に伝わる術などを教えて貰っている。
「雛妃や、こんな父親を許しておくれ。お前に過酷な人生を歩ませる事になってしまった。」
「私は幸せだったわ。あっちの世でも家族に大切にされていたし、過保護な程に。私を助けてくれたお父さんとお母さんには感謝しかないわ。」
本心だった、私は平成の世でも幸せだったしこっちに来ても色々あったけど新選組の皆が居てくれた。
予想外だったのは私が半妖だった事と、本当の両親が別にいた事だ。
私が覚醒して一週間、何人かの龍族が挨拶に来た。
私でも分かる程挨拶とは名ばかりのものだった。
お父さんが言うには如何に早く私の番を決めるか争っているらしい。
龍の雌も例外なく一途なんだとお父さんが教えてくれた。
だから番は慎重に選ばなくてはならないのだと。
ただお父さんは私が決めた相手なら誰であろうと反対はしないと言ってくれた。
自分の決めた相手と番うのが龍にとって一番の幸せだからと。
「大体の術はもう覚えたのう。」
「うん、大丈夫だと思う。後は…知世ちゃんになんて説明していいか…。」
私が半妖だと知っても知世ちゃんは私と友達でいてくれるだろうか?
「そのままを伝えれば良い。雛妃の言葉でしっかり伝えるのじゃ。さすれば分かってくれるじゃろう。」
「そうだと良いな。」
知世ちゃんなら分かってくれると思う反面、気絶されてさしまったらどうしようと言う不安が拭えないでいた。
未だに前の姿に化ける事が出来ない、この姿を見て知世ちゃんは私だと気づいてくれるかな?
「さぁ、明日は屋敷に戻るのじゃろう?今日は早く寝ておくのじゃよ。」
「はい。」
雛妃は明日からは父親と離れる寂しさと屋敷に戻れる嬉しさと相反する気持ちと共に眠りについた。
翌日の早朝、知世を覗いた面々全員で雛妃の迎えに来た。
「先見の龍、雛妃の迎えに参りました。」
「おぉ、来たか。しかし、お主等全員で来る事も無かろう?」
白龍も全員の姿を見て呆れていた。
「しかし、何かあってからでは…」
「そうだよ龍のじっちゃん!俺達は雛妃が心配なだけだ!!」
平助はひごろから白龍を龍のじっちゃんと呼んでいた。
「儂の娘は愛されておるのぉ。嬉しい事じゃ。しかし…」
白龍は斎藤と山崎を見た。
「まだ嫁にはやらん!!」
これには斎藤は眉を顰め、山崎は真っ赤になって狼狽えた。
当の雛妃はポカーンと白龍を見上げていた。
「嫌だ、まだ相手も居ないのに気が早いよ。」
もう~と無邪気に笑う雛妃を見て全員が斎藤と山崎に同情した。
「儂の娘はかなり鈍いからのぉ、精進せい。」
ホッホッホと白龍は軽快に笑った。
雛妃は白龍にちょくちょく遊びに来ると約束をして、守られる様に帰って行った。
雛妃を囲む様に歩く近藤達は雛妃の妖気に酔ってしまわないように格闘していた。
「雛妃、龍は妖気の制御は教えてくれなかったのかい?」
少し辛そうに近藤が聞いた。
「うん、全開で良いって。その方が逆に安心らしいよ?」
「そ、そうか…」
確かに雛妃の妖気を全開で食らったら下手に動けない。
賢いがこれでは近藤達が参ってしまいそうだった。
屋敷に着くなり平助と永倉が前傾姿勢でトイレへ走って行った。
「あの二人どうしたの?」
「あ?男の事情だ。」
「男の事情って…」
「雛妃は知らなくていい。」
直ぐに斎藤に遮られてしまった。
雛妃は恐る恐る知世が待つ部屋へ向かった。
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