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幕末妖怪の章
雛妃の危機
しおりを挟む私は畳のいい匂いと朝の日差しで目が覚めた。
「ん…」
うーん、まだ眠い…もうちょっと。
そう思い寝返りを打つと凄く綺麗な顔とご対面した。
「ひっ!き、きゃ…うぐっ!!」
「シっ!雛妃、僕だよ。樟葉。」
私はコクコクと頷いた。
樟葉に口を手で塞がれてる私、まず何故樟葉が私の布団に居るのか?
「雛妃、忘れちゃったの?昨夜あんなに乱れたのに。」
途端に私は昨夜の事を思い出し顔に熱が集まるのが分かった。
いやでも…セーフよね?
しちゃってないもんね!
雛妃は貞操の危機を感じた。
「ねえ、気持ち良かった?」
そう言いながら私の敏感な蕾を撫でる。
「んん~!!」
手を離して!!
樟葉の手を引き剥がそうとしてもビクともしない。
「ほら、もうこんなになってる。」
「ん!!んん~んん~!!」
グチュッと樟葉の長い指が私の中に侵入して来る。
いやー!止めて!!お嫁に行けなくなっちゃうじゃない!!
必死に抵抗するものの、樟葉は流石男と言うべきか全く動じない。
後ろの樟葉から色っぽい吐息が私の耳にかかる。
ひぃぃぃい!!私まだ大人の階段登る気は無いのよ!!
「雛妃、僕は雛妃を帰したくないんだ。」
えっ?
その間にも胸の頂点を攻められ私は仰け反った。
「このまま僕のものにならない?」
私は全力で首を横に振った。
「そう…僕は雛妃に嫌われたくないんだ。少しは僕を見て?初めてなんだ、こんな気持ちになるのは。」
樟葉は雛妃をギュッと抱き締めた。
パニックになった雛妃は全力で兎に角腕を上に突き上げた。
「ぐはっ!!」
雛妃の拳は見事に樟葉の顎を捉え、樟葉は吹っ飛んだ。
「ご、こめんなさーーーーーーい!!」
雛妃は乱れた浴衣のまま屋敷を飛び出した。
真っ赤な顔を両手で隠し兎に角飛んだ。
「いやぁぁぁぁあ!!もうお嫁に行けないーーーー!!ぶっ!」
前を全く見ていなかった雛妃は何かに当たりフワッと包まれた。
「何故嫁に行けない?」
ひぃぃぃい!!この声ははぁちゃん!!
「ひ、雛妃!!お前なんて格好してんだよ!!」
これはへーちゃんね!
どうしよう…はぁちゃんから凄い冷気が…。
恐ろしくて顔を上げられないでいると私の身体に何かが巻き付いた。
「雛妃、嫁入り前の娘がこんな格好で外を彷徨いちゃ駄目だよ?」
「すぅちゃん?」
一反木綿のすぅちゃんが私の身体を隠してくれていた。
へーちゃんを見ると何故か鼻をスンスンと動かしていた。
「ひひひひ雛妃!!雛妃から知らない男の匂いがする!!」
大袈裟に指をさして狼狽えるへーちゃん、更に温度を下げるはぁちゃんに溜息を吐くすぅちゃん。
もう!何なのよ!!
「雛妃、誰と居た?」
「えっ?」
斎藤さんを見上げると私ではなく真っ直ぐ前を睨んでいた。
「雛妃を離して。」
「えっ?樟葉?」
振り向こうとしたら斎藤さんに更に抱き締められて阻止されてしまった。
「お前は…」
「僕は樟葉、鴉天狗の長の息子だよ。雛妃を離して、雛妃は僕のだ。」
「何だと?」
「ふ~ん、雪男に妖狐に一反木綿か。僕には分が悪いね。今日の所は雛妃を譲ってあげる。雛妃、また迎えに行くからね。」
「ちょっ樟葉!!」
樟葉は大きな翼をはためかせ飛んで行ってしまった。
「雛妃…」
振り向いた事を後悔した。
見た事も無いくらい無表情の斎藤さんが私を射抜く様に見ていた。
「ひぃぃぃい!!」
「匂いが付く様な事…何をしていた?」
私は樟葉との事を思い出しボンッと真っ赤になった。
「だぁぁぁぁあ!!雛妃が大人の階段登っちまった!!」
私は思わずへーちゃんを殴った。
「ぐえっ!!」
「信じられない!!へーちゃん変な事言わないでよ!!」
「でも雛妃、妖怪が自分の匂いを付けるにはそれなりの理由と行為があるんだよ?」
「えっ?理由と行為?」
私は私に巻き付くすぅちゃんを見下ろした。
「求愛だったり、独占欲だったり。で?どうなの?しちゃった訳じゃないんでしょ?」
「うっ!…し、してないよ!み、未遂って言うか…その…」
モジモジする私に斎藤さんが真面目な顔で言った。
「あいつ消すか?」
「はぁちゃん!物騒な事言わないでよ!!樟葉とは何も無いし、助けて貰ったの!」
私はそのまま屯所に強制送還され、近藤さんからは謝られ土方さんからは小言を頂いた。
そして今、私は何故か斎藤さんの部屋で正座をしている。
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