上 下
81 / 93
幕末妖怪の章

母親

しおりを挟む


翌日、私と知世ちゃんは斎藤さんと珍しく土方さんと共に街に出ていた。
知世ちゃんにどうしたのか聞くと常に一緒にいる私と斎藤さんが羨ましいらしい。
近藤さんに仕事を押し付けて無理矢理着いてきたのだとか。
土方さんも普段はあまり分からないけどかなり知世ちゃんを大事にしてるのが分かった。

「では私達は反物を見て来ます。買い物が終わったらあそこの甘味屋さんで待ち合わせしましょう。」

「うん、分かった。じゃあ後でね!」
私達は別れた。

「雛妃は何処から見る?」

「うーん…どうしようかなぁ?先ずは八百屋さんかなぁ。」

「分かった、行こう。」
斎藤さんは私の肩を抱くとドンドン進んで行った。
私は街を見ながら歩く、やっぱり慣れない…街の娘達は斎藤さんに釘付けだ。
娘達は斎藤さんをウットリと見つめた後、必ず私を見ると睨むのだ。
居た堪れない…。
斎藤さんを見上げると優しい笑顔を返してくれる。
うん、イケメンだ。
今の笑顔で何人か娘達が倒れた。

「はぁ~…」

「どうした雛妃。」

「街の女の子皆はぁちゃんを見てるのよ、私居た堪れない。」
プクッと頬を膨らませるとはぁちゃんは私を街中で堂々と抱き締めた。

「大丈夫だ、俺は雛妃しか見ていない。」
そう言う問題じゃないのよ。
そこへヒラヒラと青白い物が飛んで来た。

「はぁちゃん何これ?」
斎藤さんをまた見上げると微妙な顔をしていた。
その物体を手に乗せると私を連れて裏路地に入った。
私は訳が分からず斎藤さんを見ていると顔を歪めていた。

「母親からだ。」

「へっ?お母さん?はぁちゃんの?」

「あぁ…」

「雛妃の事が母親の耳に入ったらしい。今度会いに来るそうだ。」
えぇぇぇー!!

「は、はぁちゃんのお母さんってどんな人なの?」
これは嫁姑問題に発展するかもしれない大事な対面よ。

「母は…」
斎藤さんはそこで考える様に黙ってしまった。
うわっ、超不安なんですけど…。

「母は少し…変わっている。」

「えっ?」
斎藤さんを見上げると眉間に深い皺が寄っていた。

「いつ来るの?」

「恐らく…」

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

「きゃぁぁあ!!雪夜元気だったぁ?!貴方全然連絡くれないのだもの…そしたら貴方が嫁を決めたって言うじゃない?!もう母さんビックリしちゃって、飛んできたわよ!!」
私達が町から帰ると斎藤さんに突撃してマシンガンの様に喋るこの人が斎藤さんのお母さんらしい。
私は呆気に取られて動けないでいた。

「それで?!どの子なの?!母さんにも紹介してよー!!」
斎藤さんのお母さんは斎藤さんのお母さんだけあって凄く綺麗な人だった。
それに凄く若く見えるけど、本当にお母さんなの?

「雛妃…」
斎藤さんに呼ばれて顔を上げると斎藤さんのお母さんが私を凝視していた。

「は、初めまして。米原雛き…ぐえっ!」

「やだぁぁぁあ!!可愛いじゃない!!貴女本当に雪夜なんかで良い?!雪男なんて面倒なだけよ?!」
凄い勢いで斎藤さんのお母さんに抱き締められた私は豊満な胸に挟まれ息が出来ないでいた。
く、苦し…酸素!胸もここまで来ると凶器になるのね!!

「母さん、雛妃が死ぬ。」
私は斎藤さんに助けられた。

「ぷはっ!死ぬかと思った…」

「あら、ごめんなさい。あんまりに可愛らしいから…私は雪夜の母の粉雪よ。あぁ、早くお義母さんって呼ばれたいわぁ~。そうだわ!!私の事はもうお義母さんって呼んで頂戴?!」

「は、はい…えっと…」

「雛妃が困っている、止めろ。」

「いやぁん!雪夜冷たい!!でもそんな雪夜に凍らされるのも母さん萌えるわぁ~!!」
クネクネとし始める斎藤さんのお母さん。

「はぁ~…」
斎藤さんは頭を抱えて溜息を吐いた。
確かに変わった…ゴホンっ元気なお母さんだ。
うちのママと仲良くなれそうなタイプだわ。

「雛妃ちゃん、何時祝言をあげるのかしら?」

「えっ?あの…私の父がまだ早いと、番としては認めてくれたんですけど。」

「あら、そうなの?雛妃ちゃんの種族は?出来ればお父さんの名前も教えて欲しいわぁ。」

「龍族です、父は白龍と言います。」
私がそう言うと斎藤さんのお母さんは真っ青になった。
私が首を傾げていると斎藤さんのお母さんは斎藤さんに詰め寄った。

「雪夜!!貴方龍族の姫を嫁にする気なの?!正気?!しかもあの白龍の娘よ?!」

「あぁ…それに雛妃は虹龍だ。」

「虹龍?」
粉雪は眉を顰めた。

「龍族にしか伝わって居ない。白龍も伝承でしか知らないと言っていた。雛妃、翼を。」

「えっ?う、うん。」
わたしはバサッと翼を出した。
粉雪は目を見開いたまま固まってしまった。

「虹色の翼…」

「雛妃は伝説の龍の姫だ。」
粉雪は倒れた。
事の成り行きを見守っていた沖田や平助が粉雪を別室に運んで行った。

「は、はぁちゃん…大丈夫なの?」

「心配無い。少し驚いただけだろう。」
そうなの?母親が倒れたのに超クールな斎藤さんだった。
流石雪男?なのかな?

しおりを挟む

処理中です...