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幕末妖怪の章

鴉天狗と鬼族

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 数日後、粉雪と吹雪は雪ん子を鴉天狗と鬼の密会場所に飛ばし雪の粒子にして忍び込ませた。
そして分かった事は、やはり雛妃の事で接触していた事。
もう一つは鴉天狗側は1度雛妃に会いに来た樟葉が筆頭となっている事。
鬼が樟葉に協力するのは雛妃を手に入れた後、雛妃の血を少し分ける事だった。
まだ計画の実行は確定しおらず未定の様だが、警戒しなければならない。

「兎に角、雛妃ちゃんは狙われています。どうしますか?」
吹雪は息子の花嫁が狙われている事を凄く心配していた。
それは粉雪も同じだった。

「雛妃ちゃんは雪夜のお嫁さんになるのよ?何かあったら一番怖いのは雪夜の暴走よ?」
粉雪は眉を下げた。

「斎藤君の暴走…ですか?」
近藤は首を傾げた。

「はい、雪男も雪女もそうですが…愛する人に何かあった時我を忘れて暴走する者が殆どです。その時は僕も粉雪も止めますが、治まる保証はありませんから。」
近藤はそうですか、と俯いた。
翌日、近藤は白龍に会いに行った。
勿論、鴉天狗達の報告の為だ。

「楼刃よ、何も言うでない。分かって居る。」

「ならば我らはどうすれば良いのですか?!雛妃を守りたいのは皆同じ、しかし鴉天狗と鬼を一気に相手に出来るかはやって見なければ分からない状態です。増して、奇襲など掛けられれば我らとて負けるやもしれません。」
近藤は俯き拳を握った。
新撰組の上層が幾ら妖怪の精鋭揃いと言っても奇襲や数で来られたら結果は分からない。

「楼刃、忘れて居らぬか?雛妃は儂の娘、更に気が強いときておる。母親に似たんじゃな。雛妃の強さと持ち前のあの性格じゃ、今回は心配ないじゃろう。」

「今回は…ですか?」
ならばまだ次がある事を白龍は示唆していた。

「うむ、今回は…じゃ。」

「今回は事の成り行きに任せるが良いじゃろう。しかし、あの雪男は注意せにゃならんかもしれんのぉ?雪男は激情型じゃ。粉雪と吹雪にしっかり頼んでおくのじゃ。雛妃が吹雪を元に戻したのじゃろ?」

「はい、しかし…二人にも斎藤を止められる保証は無いと言っていました。」

「大丈夫じゃ、雛妃が止めるじゃろう。」

「雛妃が?」
白龍はそれ以上口を開く事は無かった。
近藤は色々考えながら屯所へ帰ったが、白龍の言った事は分からなかった。
それが分かるのはこの日から数週間後の事だった。


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「契約は守れよ?」

「はい、雛妃さえ手に入れば。雪男何かに雛妃は渡さない。」

「ふんっ!鴉天狗の倅は物好きだな?手に入れたとて龍の姫は短命だと聞くぞ?」

「それは今までの番が姫を守れなかっただけの話でしょう?」

「ほう…お前は守れると?」

「僕が雛妃を手に入れたら誰の目にもつかない所に隠して僕にしか合わせない様にする。そうすれば雛妃はずっと僕の者だ。」
ニッコリと笑う樟葉を見て鬼族の若、流鬼りゅうきはコイツは狂ってると思った。
樟葉に捕まった龍の姫に同情の念さえ覚えた。
きっと樟葉に捕まった龍の姫は一生日の目を見る事は叶わないのだろう。

「俺達は姫の血さえ貰えりゃ良い。」
鬼族にも事情があった。
鬼族の長が病に倒れているのだ、このままなら命も危ぶまれる。
流鬼が長になるにはまだ若すぎたのだ、まだ父親である長には長生きしてもらわなければならない。

「実行は…」


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