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幕末妖怪の章
雛妃の本気(マジ)
しおりを挟む屯所を飛び出した雛妃は物凄い速さで樟葉の屋敷に向かっていた。
どうも龍として覚醒してから鼻が効く、雛妃は知世の匂いを追っていた。
「信じられない!!樟葉が知世ちゃんを攫うなんて!!」
雛妃は怒っていた、それはもう瞳が龍化してしまう程に。
斎藤が追って来る気配があるが、今はそんな事を気にしていられない。
雛妃は屋敷が見えると迷わず知世が居る大きな畳の部屋に屋根から突っ込んだ。
着地すると目の前には拘束された知世が横たわっていた。
「知世ちゃん、大丈夫?!」
「雛妃?来てくれたんですか?」
「当たり前じゃない!樟葉!!居るんでしょ?!出て来なさい!!」
「まさか雛妃から来てくれるとは思って無かったよ。その子を間違えて連れてきたのも正解だったのかな?」
「ふあ~、こりゃ本当に龍の姫さんだ!綺麗だなぁ?!」
樟葉の後ろから額から二本の角を生やした青年が顔を出した。
「そこの鬼、煩いわ!!私は樟葉と話してるのよ、黙って貰える?」
「ひぃっ!!」
雛妃の殺気に鬼は悲鳴を上げた。
「そんなに怒らないでよ雛妃、全部雛妃が悪いんじゃない。」
「何の事よ?」
「雛妃は僕を選ばなかった。あの雪男を選んだんでしょ?僕を狂わせたのは雛妃だよ?」
「私は樟葉のものにはならないって言ったわ!」
「だからじゃない。雛妃が僕を選ばないなら無理矢理連れて来るしかないでしょ?」
ニッコリ笑う樟葉は本気でそう思って居るんだろう。
「そんな事をして私を手に入れて樟葉はそれで満足なの?!」
「おかしな事を言うね?満足だよ?だって雛妃は僕の側にいるんだから。」
「本気?!あの時私を助けてくれた優しい樟葉は何処に行っちゃったの?」
「僕はあの時のままだよ?雛妃が僕が変わったと感じるなら…僕を変えたのは雛妃だよ。」
「雛妃!!」
「はぁちゃん!知世ちゃんをお願い!!」
斎藤は迷ったが直ぐに知世を連れ出した。
「頭来たわ、樟葉は友達だと思ってたのに…」
「僕は雛妃の友じゃないよ?番になりたかったんだ。」
「そんなの樟葉の我儘よ!」
「なら僕は我儘なんだね、雛妃に怒られてもやっぱり目の前に雛妃が居ることが嬉しいんだから。」
雛妃は目眩を覚えた。
もう樟葉に何を言っても無駄なんだろう。
「樟葉、私と喧嘩しましょ?」
「嫌だよ、僕は雛妃を愛してるんだから。」
「ならば俺…がっ!!」
「煩い!!」
素早く雛妃が鬼をぶっ飛ばした。
「なら私から行くわ!!」
雛妃は素早く樟葉との距離を詰め、白龍から教わった妖気を圧縮して放つ技を樟葉の腹にめり込ませた。
「グッ!!ゴホッゴホッ!!雛妃…」
「まだまだ行くわよ?こんなんじゃ私の腹の虫が治まらないわ!!」
樟葉も負けじと技を繰り出すが尽く雛妃に交わされてしまっていた。
その間にも何発も雛妃の技を食らってしまった樟葉はもう立つことも出来ない。
「雛妃…僕は…」
「鬼と手を組んで私を狙うのは良いわ。返り討ちにしてやるもの。でもね、私の大切な人達に手を出すのは絶対に許さないわ!!」
雛妃と…と言うより雛妃の一方的な喧嘩によって樟葉の屋敷はほぼ全壊した。
「そんな事をする樟葉も大っ嫌い!!」
樟葉の心も全壊した。
放心する樟葉を放置して斎藤に抱えられた知世の所に雛妃は飛んだ。
「大丈夫知世ちゃん!!何かされなかった?!されたなら私もう一回暴れて…」
「ひ、雛妃!!大丈夫ですわ。私は何もされていません。」
知世はまた屋敷に引き返そうとする雛妃を慌てて止めた。
「本当に?」
「本当ですわ。雛妃助けに来てくれてありがとう。とても嬉しかったですわ。」
知世はこの屋敷の惨状を見て雛妃は怒らせてはいけないと思った。
「そっか!なら良かったよ。」
「雛妃、知世も疲れている。」
「うん!帰ろう。」
雛妃達は無事に知世を奪還し、屯所へ帰って行った。
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