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幕末の章

知世と浅葱………

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 知世が目を覚ますとそこは知らない和室だった。

「此処は何処でしょうか?」
部屋には小さな箪笥が一つだけ置いてある、六畳程の部屋だ。
いつの間にか浴衣に着替えさせられていて、着ていた制服は枕元に丁寧に畳んで置いてあった。

立ち上がろうとすると足首に激痛が走った。

「私、足首を捻挫してしまったのですわ。」
少し腫れた足首には包帯が巻かれていた。

私の事はどうでもいいのです、雛妃が心配で仕方ありませんわ。
神社に居た筈なのに、何故か山の中にいて………それから………覚えてませんわ。
どうしましょう。


「あっ!起きたか?」急に襖が開いて男の人が入ってきた。

「あ………あの………」

「あんた大変だったんだぜ?もう少し遅かったら喰われてた。」

「くっ………‼」

「斎藤さんと土方さんがあんたを見つけて助けたんだ。良かったな?」
ほらっと湯飲みに入った水を差し出した。

「ありがとうございます。」喉が渇いていたので有り難く頂いた。

「俺は平助、藤堂平助だ!あんたは?」

「私は知世です、槇原知世です。」

「知世か、宜しくな!それにしてもあんた何処から来たんだよ?妙な着物着てたし、何であんな山奥に一人で居たんだ?」

そうだ!雛妃は?

「あの、私友人を探していて………私と同じ格好で背丈も同じくらいの女の子を見掛けませんでしたか?」

「あんな山奥で友人を探してたのか?ここらには居ないな、あんな妙な格好してれば嫌でも目につくし。」

「そうですか………」
握り締めた湯飲みにポチャンッと滴が落ちる。

「おおおおおい!泣くな!どうすればいいんだ?ちょっと待ってろ、土方さん達呼んでくるからな!」
藤堂さんは慌てて部屋を出て行った。


雛妃を守ると決めたのに………雛妃は可愛いから今頃怖い思いをしているかもしれません。
雛妃を思うと涙が止まらなくなってしまいます。
雛妃は自分がどれだけの容姿か分かっていないから本当に危なっかしいのに………はぁ………

暫くすると複数の足音が近付いて来るのが聞こえました。

「気付いたのか?足は大丈夫か?」

紫の着物を着た男性と濃紺の着物を着た男性と藤堂さんがズカズカと部屋に入って来ました。

「はい、助けて頂いて有難うございます。」

布団の横に三人共座り、難しい顔をしています。

「俺は土方だ、こっちは斎藤。あんたには色々聞かなきゃならねぇ事がある。」

土方さんは漆黒の髪を後ろで緩く結っていて、少しつり目の方です。
藤堂さんもそうですが、皆さん凄く綺麗な顔をしてるんですね?
まぁ、雛妃には敵いませんが………

斎藤さんは着物も濃紺なら髪も瞳の色も濃紺なんですね。
喋らないところを見ると、無口な方なんでしょうか?
斎藤さんも髪で顔が少し隠れているものの、綺麗な顔なのは分かります。

「知世は友人を探してるらしいんだ、手伝ってやれないか?」

「藤堂さん………」

藤堂さんは優しいんですね?

「藤堂さんなんてくすぐったい、平助でいいよ。」

「はい。」

「手伝うのはいいがな、まずあんたの事を聞かせてくれ。あんたが着てた妙な着物といい、あんな山奥に女一人で何処に何してたんだ?」

「その前に一つ聞いていいでしょうか?」

「なんだ?」

気になっていたんですが、藤堂さんも皆様着物に腰にある刀が気になります。
私の思い過ごしならいいんですが。

「此処は何処で、今は何年ですか?」

あら、三人共怪訝な顔になってしまいました。


「今は文久三年、此処は京だ。」

「文久………そんな………」
待って下さい、文久三年………京都、土方………
歴史は詳しい方ではないですが、流石に私でも知っています。

「何故そんなに驚く?」

「土方さん、私の話を信じて頂けますか?」

私はこれまでの事を全て土方さん達に話しました。











「成る程………あんたは未来から来たって事か?証拠は?」

「証拠と言われましても、私が着ていた制服くらいしかありませんわ。」

土方さんは私の制服を手に取り入念に調べ始めた。
斎藤さんに至っては目を瞑り腕を組んで黙っている。
藤堂さんは目を見開いたまま固まってしまっています。

「確かに見たことない着物だが………どうする斎藤?」

「助けたのは俺達だ、その友人とやらを見つければ自ずと真実が見えて来るだろ。」

「じゃあ協力してやるんだな?良かったな、知世!」

「はい、本当に有難うございます。私だけでは雛妃を見つけられません。」

「そのひなきってぇのを見付ければいいんだな?特徴は?」

「はい、雛妃は背丈はわたしと変わりません。髪の毛は薄い栗色て、長さは腰まであります。あとは………瞳の色はグリーンです。」

「グリンって何だ?」藤堂さんが首を捻っています。

「ええっと………緑色です。雛妃が居れば目立つので直ぐに分かると思うのですが、人混みだと小さいので埋もれてしまうかもしれません。」

「また面妖な容姿だな?そいつ人なのか?」

「人ですよ?」
土方さんは何を言っているのでしょうか、人以外が居るのでしょうか?

「兎に角、雛妃は美しいので早く見つけないと………」

「確かにそれだけ珍しい容姿なら、変なのに狙われる可能性が高いな。斎藤、平助此処は頼む。俺は近藤さんと話してくる。」

土方さんが居なくなると、平助さんがくちを開きました。

「なぁ知世、その雛妃って知世より綺麗なのか?」

「はい、私等足元にも及びませんわ。」

「知世でもすげぇ綺麗なのにな。知世より綺麗なんて会うのが楽しみだな?」

「雛妃に手を出したら平助さんでも許しませんわよ?」

そんな会話をしていると、斎藤さんの視線に気が付いた。
完全に私を探っているますね。
そうですよね、未来から来たなんて本当なら信じてもらえる様な話ではありませんもんね。
私だって幕末に居る事自体未だに信じられません。
どんなに疑われても雛妃さえ見つかれば………
私は少しだけどこの人達の未来を知っている、歴史を変えない様に注意しなければ。

あぁ、こんな事ならもっと歴史を勉強しておくべきでしたわ!


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