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幕末の章
再会⑥
しおりを挟む少しだけ仮眠を取り、起きると酒屋の若様と一緒に孝之助さんと時さんのお店に行った。
またお団子と餡蜜を頼み、あとお土産も二つお願いしておいた。
二人ともすごく別れを惜しんでくれて、嬉しかった。
離れ難いけど私は知世ちゃんと一緒にいなければ、いつか平成に帰る為に。
その後は呉服屋さんで奈緒さんと若様と過ごした、たわいもない話をしたりするうちにあっという間にお昼になってしまった。
「雛妃‼」
「知世ちゃん‼」
お店に飛び込んで来たのは知世ちゃんだった。
「雛妃、心配しましたわ。」
「私もだよ、でもまた会えて良かった。」
二人で涙を浮かべて再会を喜んだ。
「それにしても、知世ちゃん………お姫様みたい、綺麗!」
「これは………皆さんがどうしてもと………」
「知世ちゃんが優しい人達と一緒で良かったよ。」
「これは驚いたな、雛妃ちゃんの友人までこんなに綺麗な子だったなんて。」
酒屋の若様がマジマジと知世ちゃんを見ていた。
すると知世ちゃんは明らかに嫌な顔をして、若様を睨んだ。
「貴方、匂いますわ!」
「えっ?」若様はクンクンと自分の匂いを嗅ぎだした。
「そうじゃありませんわ、貴方雛妃にただならぬ感情をお持ちでしょう?許しませんわよ!」
知世ちゃんにキッと睨まれた若様は頬を引き吊らせた。
「雛妃ちゃん、何時でも帰っておいで。ここ貴女の家同然なんだから。何かあれば頼っておいで。」
そう言って奈緒さんは私に大きめな巾着を持たせた。
それはズッシリと重くて、中を見ると沢山のお金が入っていた。
今回は金色のお金まで入ってる、これが小判なの?
「奈緒さんこんなに駄目です、受け取れませんよ!」
巾着を突き出すと、また奈緒さんに持たされてしまった。
「雛妃ちゃんがちゃんと働いた分だよ、持って行きな。娘を嫁に出す様なもんなんだ、これくらいさせておくれよ。」
奈緒さんは涙を溜めて、その手は少し震えていた。
奈緒さんの手をギュッと握ると、精一杯の笑顔を見せた。
「有り難うございました。奈緒さんは本当にお母さんみたいでした。また遊びに………いいえ、また帰って来ます!」
そう言うと奈緒さんは笑ってくれた。
「私からもお礼を言わせて下さい。雛妃がお世話になりました、本当に有り難うございます。雛妃が奈緒さんに拾われて良かったですわ。」
知世ちゃんは丁寧に頭を下げた。
私と知世ちゃんは手を繋いで、呉服屋さんを出た。
そこには斎藤さんと平助君が待っていてくれた。
「もう、いいのか?」
「はい、ちゃんとお別れを言えました。でも………また此処に連れて来てくれますか?」
斎藤さんは私の頭を撫でると「あぁ………」と言ってくれた。
奈緒さんまた会いにきますね!
「じゃあ行くか?」
平助君が知世ちゃんに手をのばす、私には斎藤さんが………
「待って‼雛妃ちゃん‼」
振り向くと酒屋の若様がいた。
「私は雛妃ちゃんの事が好きだ!一目惚れだったんだ。でも、私は雛妃ちゃんがまた此処に里帰りしてくれるのを待ってる‼だから……」
「若様………有り難うございます。また絶対に帰ってきます!」
私は手を降ると街に別れを告げた。
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