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幕末日常と食事の章

買い物騒動④

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「まずは、これを見て。」
平助君は二つのコインを並べた、それには寛永通宝と書かれている。

「これはね、一文銭と四文銭だよ。これでだいたい団子が一串買えるんだ。」
平助君は四文銭を指指した。
あっ、確か大福も四文だった。

「雛妃は一両出したんでしょ?街で買い物をするなら四文銭とかを持ってないと買えないんだ。」

「ねぇ、一両あれば何が出来るの?買える物とか。」

「う~ん、一両とちょっと足せば此所から江戸まで行ける。分かりずらいかな?」
全然分からない………

「一両あれば、米一石が買える。」
おっ?原田さんの説明の方が分かりそうだ。
でも一石って?

「要は、人が一人一年食べていけるだけの米が買えるんだよ。何となく分かるか?」
この時代のお米の価値は分からないけど、一両が凄いって事は分かったわ。
白米はお金持ちしか食べられない事を島田さんに教えてもらった。
庶民は米にひえや麦を混ぜて食べる、私は麦飯好きだから良いけどね。
それでも日本人はお米が主食だもの、一年なんて沢山必要だわ。

「雛妃、巾着を見せて?」
原田さんに来たを渡すと中を確認した。

「ははっ、これじゃちょっとした買い物は難しいね。この後、両替商に両替に行こうか?」

えっ?両替出来るの?
分かりやすく言うと、両替商とはこの時代の銀行的なものらしい。
小判ばかりだと、普段の買い物が出来ないから両替してもらうのだとか。
取り敢えずここまで分かれば、買い物は出来そうね。
あとは実践あるのみだわ!

皆でお団子を食べたあと、両替商に両替してもらってまた買い物をする事になった。
私は良く分からないから両替は原田さんにお願いしたけど、巾着が重いわ。
甕の話をしたらもう、近藤さんが注文したといわれてしまった。
買い物の本命が無くなってしまった。

何か食料を見ようかな?私は台所担当だし。
この時、秘かに私にはどうしても食べたい物があった。
この時代の材料で出来るか分からないけど、絶対に作って見せるわ、私の大好物!
知世ちゃんにもお金を渡して、私達は二手に別れる事になった。
知世ちゃんは裁縫道具が見たいし、私は食料品が見たかったから。
知世ちゃんには沖田さんと平助君が着いて行った。

「雛妃は何が欲しいの?」

「お肉って何が出来るのあるの?」

「肉か?肉は鶏とか兎、ぼたんに紅葉肉かな。」
鶏と兎は分かった、ぼたんに紅葉って何?

「雛妃には分からないか?ぼたんは猪だ、紅葉は鹿だよ。」
鶏はあるのね?でも全員分となると………後で相談しよう。

「分かった、なら今日は片栗粉と葛粉………黒砂糖と後は葱が欲しいな。」

原田さんと斎藤さんに案内してもらって、あっという間に全部揃った。
荷物も二人が持ってくれて、有り難い。
それから、手拭いを買ったりして過ごした。
その後、知世ちゃん達と合流して屋敷に戻った。
屋敷に戻ると直ぐに近藤さんと土方さんにお礼を言いに行った。

「いいんだよ、二人は可愛いのだから綺麗な着物を着て欲しいんだ。」

「俺達と居るんだ、それくらいしないと馬鹿にされちまう。まぁ妖怪の世界でだがな。」

「そう言う事だ、着物ができ上がったらまた見せて欲しいな。」

そうだ!今あれを聞いておこう。

「いっちゃん、誰か鳥をとりに行ける人はいる?」

「鳥?鶏鍋でもするのかい?」

「いや、私の我が儘で………どうしても創りたいものがあって………」

「うむ………歳なら、この前は雛妃が平助を連れて逃亡したから云えなかったが、歳は狼だから狩りは得意だな。」
近藤さんは土方さんを見た。

「正確には、半分狼だ。俺は混血だからな、もう半分は天狗だ。」
妖怪にもハーフって射るのね?
少し土方さんに親近感が湧いたわ。

「狩りをするのは構わねえが、どのくらい狩ってくる?それによっては平助も連れていく。」

「三、四羽くらいかな?皆で食べたいから。」

「なら平助と行ってくる。」

「何を作るか分からないが、楽しみにしてるよ。」
もう一度二人にお礼を言って、知世ちゃんと部屋に戻った。
やったぁ!これでアレが作れるわ!

「雛妃、何を作るのですか?」

「えへへ、私の大好物だよ!」

「まさか、アレはこの時代にはまだ伝わってないのつはないですか?」

「そうなんだけど、どうしても食べたいんだもん。ここの人だけの秘密にしてもらおうよ。」
知世は迷ったが、現代の味が懐かしく強く反対出来なかった。

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