過保護な新撰組に愛されて…幕末なう！

幕末日常と食事の章

アレを作ろう！

　翌日、朝御飯を作っていると早速土方さんと平助君が鳥を狩って来てくれた。
かなりの節約になったよね。
でも節約ばかり考えていた私は、大変な事を忘れていた。

「雛妃！雉仕留めて来たぞ！」

平助君が雉の足を持って台所に入って来た。
土方さんも同じく、二人の着物は汚れていたので頑張ってくれたのが見て取れた。

「ひぃちゃんもへーちゃんも有り難う！私雉なんて初めて見たよ！」
雉って桃太郎のお供だよね？

「雛妃、雉捌けるのか？」

「捌く？」
土方さんを見て固まった。
捌くって………これのお腹切ったりするんだよね？
現代の既にお肉になってるパックしか知らない私に出来るわけない…………
雉さんには申し訳ないけど、想像しただけで………うっ！

「出来るわけないよな…………仕方ねえ、平助裏でやるぞ。」

「分かった！雛妃絶対に見るなよ？夢に出るぞ。」
嫌だ、本当に夢に出そうじゃない！
平助君と土方さんは包丁片手に出て行った。
二人が戻るまで私は絶対に台所からは出ないわ。

「雛妃さん、何を作るんですか？」

「それは出来てからのお楽しみです。夕飯は楽しみにしてくださいね！」
島田さんはそれは楽しみだと言ってまた竈に集中した。
それから調度朝御飯が仕上がる頃に、見事に捌かれた雉さんを土方さんと平助君が持ってきてくれた。
本当に捌ける人が居て良かったよ。
現代に居る時は全く想わなかったけど、今日の夜は雉さんに感謝しながら食べようと思った。

それからお昼も過ぎて、私はまた台所に立っていた。

今からおやつを作ろうと思います！
街に出た時に買った葛粉で葛餅を作るの。
力がいるから島田さんにも手伝って貰う事にしたのだ。
大人数だから私じゃきっと混ぜられない。

朝のうちに黒蜜は作っておいたから、さっさと葛餅を作ってしまおう。
お鍋に葛粉とお水を入れて、中火にかける。

「島田さん良く混ぜて下さい。周りが半透明になったら更にかき混ぜて下さい、かなり力がいると思いますけど。」

「力には自信があるので任せて下さい！」
島田さんはマッチョだから大丈夫そうだ。
暫くすると周りがフツフツと沸騰して半透明になってきた。

「もう混ぜていいんですか？」

「はい、焦げない様に全体が半透明になるまでお願いします。」
力強くかき混ぜる島田さんは頼もしい。
私は小さい鍋でも混ぜるのは大変だった。
火が通って粘りけが出ると、思った以上に大変なんだ。
今は大鍋で創ってるから島田さんはほんとうに大変だと思う。

「これは………なかなか大変ですね？雛妃さんじゃ混ぜられない訳です。」
額に汗をかきながら島田さんは一生懸命やってくれた。

「あっ、全体が半透明になったので一度竈から下ろします。そしたらまたかき混ぜて下さい。」

その後は平な器に移して、冷ます。
冷ましたら切り分けて黒蜜をかければ出来上がりだ。

大広間に葛餅を運んで皆を呼びに行った。

「おぉ、葛餅かい？」

「葛粉なんて無かっただろ、雛妃が買ったのか？」

「はい、私達を此処に置いてくれているお礼です。帰れるまでは迷惑をかけると思いますけど、改めて宜しくお願いします。」
近藤さんと土方さんに頭を下げると、二人とも苦笑いした。

「気にしなくても………」

「雛妃！帰る何て言うなよ！」
近藤さんを平助君が遮った。

「平助落ち着きなよ、まだ雛妃達の帰る方法分からないんだからさ。」

「でもさ………」
沖田さんが平助君を宥めた、帰りたくないと言えば嘘になる。
でも皆と離れたくないとも思うんだ。
遅かれ早かれ別れはやってくるんだ、それまでは皆と一緒に居よう。
沢山美味しいご飯を作って、思い出を作ろう。
それに、現代に帰ったら苦手な歴史を克服しようと決めた。
新撰組の事が私の時代にどう伝わっているのか知りたいと強く思った。