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幕末日常と食事の章
文明の理を取り入れたい!②
しおりを挟む翌日…………
「雛妃!材木貰って来たぞ!」
「うわっ!こんなに貰えたんの?」
原田さんと永倉さんが大量の材木を担いで現れた。
こんなにどうやって貰って来たの?
とても廃材には見えない綺麗な木材だし。
「仕事手伝ったら大工の棟梁が給金代わりにきれたんだよ。」
「えっ?だから今日は二人とも朝早く出て行ったの?」
「そうそう、力仕事だからな俺たちにピッタリだろ?」
「じゃあ俺達は雛妃に頼まれた箱を作るから、多分昼までには出来るよ。」
「ありがとう、お昼はうんと美味しいご飯作るからね!」
二人はそりゃ楽しみだと言って台所の方へ消えて行った。
「よしっ!お昼はボリュームのある物にしよう。」
何が良いだろう?やっぱり肉かな?
「おぉ、雛妃さん!」
お昼は何にしようか悩んでいると大きな木箱を抱えた島田さんが歩いて来た。
「島田さん、重そうですね?手伝いましょうか?」
「いや、重いので私が運びますよ。それより見てくださいこれ。」
島田さんに箱を差し出され中を覗くと沢山のじゃが芋が入っていた。
「凄い!どうしたんですかこれ?」
「貰ったんすよ、売り物にならないとかで。」
確かに箱の中のじゃが芋は傷が付いていたり小ぶりだったりしている。
それにしてもこの量は……
「つい貰ってしまったのですが、使えますか?」
うーん……じゃが芋か、肉じゃがとか?
でもな、私としてはコロッケが食べたい。
でも問題があるわ、コロッケにはパン粉が必須なのよ。
「試したい事があるんですけど、手伝って貰えますか?」
「良いですよ、では参りましょうか。」
思い立ったが吉日、絶対にコロッケを作って見せるわ!
台所に向かうと台所の外で原田さんと永倉さんが作業をしていた。
「すぅちゃん、少し台所使いたいんだけど平気?」
「あぁ、大丈夫だよ。まだ暫くは外でやるから。」
ならばと台所に入り島田さんに竃の用意を頼んで、私はじゃが芋を持って井戸へと向かった。
大量のじゃが芋を洗っているとそこに平助君がやって来た。
「雛妃何してんだ?俺も手伝うぞ?」
「ありがとうへーちゃん、じゃあお願いしようかな。」
「それにしてもすげえ量だな?昼飯に使うのか?」
「うん、コロッケを作ろうと思って。」
「ころけ?なんだそれ?」
そうなるよね、平助君にコロッケを説明すると目を輝かせた。
「また雛妃の時代の不思議な食い物か?楽しみだなぁ!」
じゃが芋を洗い終えて台所に戻る途中、中庭で鉢植えを眺めながらニヤニヤしている近藤さんに気づいた。
不思議に思って声を掛けた。
「いっちゃん、何をそんなに嬉しそうに見てるの?」
「おぉ、雛妃!これを見てくれ、やっと手に入れたんだ!」
鉢植えを自慢げに見せてくる近藤さん、鉢植えには赤い実がなっていて……
「えっ?トマト?」
「とまと?これは唐なすびと言うんだ。雛妃の時代でなとまとと言うのか?」
唐なすび?トマトじゃないの?
「うん、美味しいんだよ。」
そう言うと近藤さんは驚いて固まった。
「唐なすびは食べる物なのか?」
「えっ?違うの?」
驚いた事にトマトは観賞用だと言う。
そうか食べるのか…とブツブツ言いだした近藤さんを放置して私は台所に戻った。
台所に戻ると島田さんはバッチリお湯を沸かしておいてくれた。
鍋にじゃが芋を入れて煮ていく、その間私はコロッケにかけるソースを悩んでいた。
勿論江戸時代にソースなんて物は無い、うーん……どうしたものか。
「雛妃さん、煮えましたよ。次はどうすれば良いですか?」
「はい、次は皮をむいでじゃが芋を潰します。」
「雛妃、頼まれたもん持って来たぞ。」
そこに鳥肉を持って土方さんが入って来た。
「ありがとう、そこに置いておいて。」
冷蔵庫が出来るならと、昨日土方さんに鳥をお願いしておいたの。
今では捌いてから持って来てくれる様になった。
コロッケには本当は挽き肉を入れたいけど、今回は鳥肉を解して入れる。
「皮を剥いたらじゃが芋を潰します、潰したら解した鳥肉を入れて塩と胡椒で濃いめに味付けをします。」
「ほぅ、平らな俵型にするんですね?」
「はい、そうしたら全部に片栗粉をまぶして下さい。」
前に料理下手なパパが急にコロッケを作り出した事があったの、味は絶望的だったけどなんとパパは衣にパン粉じゃなくて片栗粉を使ったら……味は兎も角ちゃんと見た目はコロッケになってたのを思い出した。
大量のコロッケにやっと片栗粉をまぶし終わると成功するか分からないから取り敢えず味見用に四つだけ揚げてみる。
「成功するかちょっと不安なんで味見してみましょう。」
狐色に揚がったコロッケを笊に上げて切り分ける。
うん、見た目はコロッケだわ。
後は味ね。
「では、頂きます。」
島田さんは菜箸でコロッケを掴むと躊躇する事なくパクリと食べてしまった。
何時も思っていたけど島田さんは度胸があるわ、私なら知らない料理を食べるのはちょっと不安だもの。
それを迷い無く食べる島田さんは凄いわ。
「美味い!これは周りがサクサクしていて、中の芋はホクホクで堪らんですな!」
「本当ですか?じゃあ私も……あっ、ちゃんとコロッケだ!」
うん、これなら皆に出しても大丈夫そうだわ。
「島田さん少し揚げるのをお願いしても良いですか?」
「構いませんよ。」
「ありがとうございます、原田さん達にもコロッケ渡して来ます。」
島田さんにももう一つコロッケを渡して残りの二つを持って外に出るともうほぼ大きな箱が完成していた。
「凄い!もうこんなに出来たの?」
「あぁ、雛妃こんなもんでどうだ?」
永倉さんが自慢げにバンバンと箱を叩くけど……ちょっと大きくない?
「少し大き過ぎたかな?」
少し眉を下げる原田さんはやっぱり普通の感覚の持ち主だわ。
「ま、まぁ大は小を兼ねると言うしね。」
作ってもらったのに文句は言えないわ。
「それで雛妃はどうしたの?もう台所はいいの?」
「あっ、そうだった。これどうぞ、お昼ご飯の味見。」
「おっ!悪いな!」
「またこれは珍しい料理だね?」
そう言って二人はペロリとコロッケを食べてしまった。
永倉さんに関しては二口で終わってしまった。
また二人に箱を任せ、私は残りのコロッケを揚げる事に専念した。
箱が完成して台所に設置する頃には丁度お昼になり、本格的な作業はお昼の後にする事になった。
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