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一章

処刑ですか?そうですか。

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 私が何をしたと言うのだろう?
私を囲み罵倒し、石を投げる人々……魔女?
私はただの人間、ただちょっと生まれる前のいくつかの記憶があるだけ。
そんな私を魔女と呼び、丸太に括り正に今私は……火炙りに処される所なのだ。
あれだけ国の発展に尽くして来たのに……あぁ、なんて残酷な最後。
神様、私は貴方を恨みます。
私は、この世の全てを恨みます。
次に生まれ変わるなら慎重に目立たずこっそり生きて行こう……。

「執行ーー!!」

さよなら、今世。
来世では幸せになれ、私!
熱い、皮膚を焼かれやがて喉も焼けると呼吸が出来なくなる。
頑張れ私、耐え難い苦しみはやがて感覚を失くす。
ほら、直ぐに痛みは消えて闇に落ちて行く感覚。
私は……また生まれ変わる。

ーさぁ、転生なさい。
     私の愛しい子。

黙れ!神!私はお前を許さない!

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「おぎゃー!!おぎゃ…お?」
眩しい!何度もこれを経験した?
いや違う、いつもと違う?
生まれて少し経つのか目はハッキリとは言わないものの薄らぼんやり見える。
どうやら私は毛布に包まれ籠に入っている?
でも、目の前に見えるのはこれまた眩しい程の晴天…ここは外?
ふむ、この状況を考えれば私は捨て子なのだと直ぐに推測出来た。
しかし困った事になった、私は乳飲み子…どう頑張ったって一人では生きていけない。
良いとこ獣の餌になるだろう。
どのくらいの時間考えたかわからないけど、赤子の体は正直だ。

ーグゥううううううう…

お腹すいた…。
そこに私を覆う様に大きな影が差した。
む?誰だ?

ーひぃぃぃぃぃぃい!
そこには大きな狼?のような生き物が私を覗き込んでいた。

『お主、この世界の者ではないな?』
ん?言葉が分かる!

「おぶ!あぶぶぶい!キャウ!」

『分からん。心で話せ。』
心?こうか?

「あーあー!聞こえますか?」

『うむ、そうだ。お主は何処から来た?』
私はこれまでのことを話して聞かせた。

『そうか、難儀だったな…。』
私は人間の赤子は1人で生きていけない事、このままでは死んでしまう事を必死に話した。

『なるほど…人の子は乳が必要なのだな?』
私はコクリと頷いた。

『我に心当たりがある、少し移動するが我慢せよ。』
そう言うと狼さんは私が入った籠を咥えると凄い速さで森に駆け出した。
余りの速さに私は目を回し、気絶した。

次に目を覚ますと…。

『あらあら~、余程お腹空いてたのね~?』

『お主が居て助かった。』
そう私は必死に誰とも知らないお乳に吸い付いていた。
恐るべし生存本能!

『この子、創世神様の加護を貰ってるわね?不思議な子、ねぇ?私が母親になっても良いかしら?』
何だと?この爆乳…ゴホンッ!美人さんが私のお母さんになるの?

『しかし、オリジン…人の子だ。人の子は人が育てるのが良かろう?』
オリジン?まさかあの…始源の精霊オリジン?

『でもスルト?こんなに可愛いのよ?それにほら、ここを見て?ちゃんと創世神ウィスタルの加護があるわ。私達と暮らしていれば半精霊になるわ。ここにも直ぐ慣れるわよ。』
チョンっと私の額を突っついた。

『しかし…。はぁ~仕方ない但し、この子育った時道を選ぶのはこの子だ。』

『分かって居ますとも。私がママで貴方がパパね?』

『ばっ!我は親になる気は無い!』

『あら~またまた~そんな事言って。放って置けなかったから私の所に連れてきたのでしょう?』

「けふ~!」
何だか色々話していたけど、いや!ゴチでした!アッパレなお乳!

「くわ~…。」

『まぁ、お眠ね?ゆっくり眠りなさい。私の愛しい子。」
私は直ぐに眠りに付いた。
こうして私は何とか命を繋ぐ事が出来た。

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