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一章
西の森
しおりを挟む西の森に着いた夫人達はチャールズに言われた場所に来ていた。
そこは殆ど人などこない崖の上、そこには何にもなく我が子が此処に捨てられた形跡も無かった。
「ここに…私の娘が…。」
ガクッと膝を付く母にレオンとカノンは駆け寄った。
「母様しっかりして下さい!」
「そうです母様、まだ死んだとは確定してません!」
「貴方達…。」
2人の息子は諦めていない、母である自分が信じなくてどうするのかと自分を奮い立たせた。
「でもどうすれば…。」
「母様、お祖父様に頼みましょう!」
「お義父様に⁈」
「そうです、お祖父様なら追跡魔法が使えます!」
2人が言う事が最善なんだろうが夫人は躊躇した。
義父という事は前国王だ、それに今までの嘘がバレてしまう。
「母様、父様と母様が嘘を付いていた事は知っています。僕たちも一緒に謝ります。」
「そうです!罰も受けます!」
「そうね…でも旦那様がなんて言うか…。」
「父様は関係ないです!母様も俺たちもクリスの事は良く思わなくても仕方なく受け入れてはいました。もう義理は果たしました。母様が行かないなら僕とレオンだけでも行きます。」
子供達は覚悟を決めている、私も覚悟を決めなければ。
「分かりました、一度帰って前触れを出しましょう。返事が来次第向かいます。」
「「はい!」」
前国王夫妻は今は王城に居ない、東の離宮で過ごしていた。
前王に前触れを出し、返答が来るまでそうは時間が掛からなかった。
その間、夫である公爵とも顔を合わせていない。
今回はレオンとカノンを孫を会わせると言う名目での離宮訪問となった。
「「お祖父様!お婆様!」」
「おお、レオンとカノン息災だったか?」
「まあまあ元気だこと。お婆様に元気な顔を見せて頂戴。」
2人は3人の訪問を歓迎した。
「「お祖父様、お婆様!お久しぶりです!」」
「アリスティアも久しいのぉ。今日はダンリールはどうした?」
ダンリールとは公爵の名である。
「本日はお願いがありまして参りました。」
「ほぅ?アリスが願いとは珍しい。申してみよ。」
「はい…あの…。」
アリスは冷や汗が背中を伝っていた。
「母様、俺達から言うよ!」
「レオン…。」
「お祖父様、俺とカノンからのお願いです。」
「ふむ、可愛い孫の願いだ儂に出来る事ならなんでもしよう。」
「ありがとうございます!お祖父様の追跡魔法を使って探して欲しい人が居ます。」
「探し人か?して誰じゃ?詳細が分からねば探しようが無い。」
「それは…僕達の本当の妹です!」
「何じゃと!」
「まあ!」
前国王夫妻はあまりの衝撃に固まった。
「アリス?どう言う事じゃ?レオン達の妹はクリスであろう?」
「ならクリスは誰の子だと言うのです?」
「申し訳ありません!クリスは旦那様の愛妾の子、私の子ではありません。陛下を欺いた罪はどんな罰でも受ける覚悟でございます。」
「何ですって?」
皇后の顔が怒りに染まった。
「訳がありそうじゃな、場所を移そう。人払いをして聞こうじゃないか。」
応接室に移り再度話をする事になった。
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