11 / 12
一章
怒れる母、悲しみの母
しおりを挟むアリスや前王も皇后もオリジンの話を聞いて言葉を失った。
『危ない所をスルトが見付けたから良いものの、あのままならオーリは死んで居ましたわ!それを今更なんですの!!今更探して母だと名乗るのですか?』
アリスはオリジンの言う事にグゥの音も出なかった。
「オリジン様、スルト様大変申し訳ない。全ては儂の愚息が犯した罪。子が犯した罪は親の罪でもある。儂はどんな罰でも受けましょう。しかし、どうかアリスティアを許しては頂け無いだろうか?彼女も愚息の被害者じゃ。」
「私もどんな罰での受けますわ!どうか孫娘に一度でいいのです会わせて下さい!」
皇后は懇願した。
『それはオーリ次第だ。』
『スルト、私は反対だわ!こんな人間にオーリを会わせるなんて!』
『しかし、オーリにはこの人間達に会う権利はある。』
オリジンはムッとしたが黙った。
大人達の話を聞きながらレオンとカノンはオリジンとスルトの見惚れていた。
こんなに美しい人は見た事がなかった。
精霊と言ったが精霊とはこんなに美しいと初めて知った。
そもそも人生で精霊の会えるのは奇跡に近い。
「お願い致します!娘に、一目でいいのです会わせて下さい!謝りたいのです。」
泣きながら懇願するアリスティアにオリジンは立ち上がり見下ろした。
美しい者程怒ると恐ろしい。
『謝るですって?それは自己満足ですわ。貴女が罪から逃れたいだけ。』
そうじゃなくて?と言われて何も返せなかった。
その頃、オーリはその様子をマクスウェルと精霊王と水鏡で見ていた。
「あの人が私のお母しゃんでしゅか?」
『そうみたいだね?あの子供はオーリの兄様見ただし。』
「兄しゃま?」
私には兄が2人もいたらしい。
『オーリ?会うのか?』
う~ん特に会いたいとは思わないのが本音。
でもここで一回会っておかないと面倒な事になりそうな気がする。
「一回なら良いかな~?」
『なら姿を隠してオリジンの所に行こう。』
私はウェル叔母様に抱かれてママの所に一瞬で飛んだ。
そんな私を見てママは目を見開いて驚いていた。
『オリジン諦めろ。』
『ハァ~、仕方ないですわね。オーリちゃん、いらっしゃい。』
私は叔母様から離れるとママにダイブした。
「ママ~!」
空中から急に女の子が現れた。
三歳くらいだろうか?白銀の髪のすごく可愛い女の子だった。
『オーリちゃん来ちゃったの?』
「あい!」
『オーリ?ご挨拶出来るか?』
「あい!」
私はママに床に下ろしてもらうと淑女の礼を取り練習通り挨拶した。
「始源のシェーリェーオリジンと終末のシェーリェースルトの娘オーレリアでしゅ。」
精一杯の笑顔で顔を上げた。
「ああ、ルイーザなのね?」
「私はオーレリアでしゅ。ルイージャじゃありましぇん!」
私の言葉に生みの母親は傷付いた顔をしたけど私には関係ない。
私の家族はママとパパとマクスウェル叔母様とシル叔父様と精霊達だけだもの。
「ママ~。」
私はママに抱っこを強請る。
『あらあら、オーリちゃんは甘えん坊ね。』
「ママ?これ誰?」
私は分からないふりをして聞いた。
『オーリちゃんの生みの親よ?オーリちゃんにはお兄様も居たのよ?』
レオンとカノンは過去形なのに抗議した。
「俺達はルイー…オーリの兄だ!」
「僕はカノン、こっちは兄のレオンだよオーリ。よろしくね?」
こっちはよろしくしたくない。
『そこの子供、誰が我の娘の愛称を呼ぶ事を許した?』
2人はスルトの低い声にビクリと身を竦めた。
「パパ~オーリはいいよ?」
ぎゅっとパパに抱きついた。
それを聞いてホッとする元兄達を見た。
私とは全く似て無い、輝く金髪に快晴の様な真っ青な瞳。
生みの母親は金髪に新緑色の瞳。
やっぱり私の両親はパパとママだ。
『オーリちゃんママのお膝に来なさい。紹介するわ。』
「あい!」
私がママの膝に座ると目の前に座る母が顔を反らした。
『オーリちゃんに自己紹介を許すわ。』
「この機会を感謝する。私はこの国の前国王のライザだ。オーレリアと言ったね?儂は君の祖父に当たる。」
この人がおじいちゃん?しかも王様だったんだ~凄いね?
「私はこちらの前王の妻で皇后のイライザです。貴女の祖母よ。」
この品がある人がおばあちゃんか~。
「私は…私はセリオール公爵の妻アリスティアです。貴女の…母です!」
ん?今ママからブチって聞こえた様な?
振り向いた私は後悔した、美人なママの笑顔が怖い。
ママ大丈夫よ!私のママはママだけだから!
「俺はセリオール公爵家長男レオン。オーレリアの兄だ。」
「僕は次男のカノン、レオンとは双子なんだ。オーレリアに会えて嬉しいよ。」
それは良かったよ。
そっくりだもんね?言われなくても双子ってわかるよ?
「ママ?帰ろ?」
瞬間ママとパパ以外が全員立ち上がった。
0
あなたにおすすめの小説
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
甘そうな話は甘くない
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
「君には失望したよ。ミレイ傷つけるなんて酷いことを! 婚約解消の通知は君の両親にさせて貰うから、もう会うこともないだろうな!」
言い捨てるような突然の婚約解消に、困惑しかないアマリリス・クライド公爵令嬢。
「ミレイ様とは、どなたのことでしょうか? 私(わたくし)には分かりかねますわ」
「とぼけるのも程ほどにしろっ。まったくこれだから気位の高い女は好かんのだ」
先程から散々不満を並べ立てるのが、アマリリスの婚約者のデバン・クラッチ侯爵令息だ。煌めく碧眼と艶々の長い金髪を腰まで伸ばした長身の全身筋肉。
彼の家門は武に長けた者が多く輩出され、彼もそれに漏れないのだが脳筋過ぎた。
だけど顔は普通。
10人に1人くらいは見かける顔である。
そして自分とは真逆の、大人しくか弱い女性が好みなのだ。
前述のアマリリス・クライド公爵令嬢は猫目で菫色、銀糸のサラサラ髪を持つ美しい令嬢だ。祖母似の容姿の為、特に父方の祖父母に溺愛されている。
そんな彼女は言葉が通じない婚約者に、些かの疲労感を覚えた。
「ミレイ様のことは覚えがないのですが、お話は両親に伝えますわ。それでは」
彼女(アマリリス)が淑女の礼の最中に、それを見終えることなく歩き出したデバンの足取りは軽やかだった。
(漸くだ。あいつの有責で、やっと婚約解消が出来る。こちらに非がなければ、父上も同意するだろう)
この婚約はデバン・クラッチの父親、グラナス・クラッチ侯爵からの申し込みであった。クライド公爵家はアマリリスの兄が継ぐので、侯爵家を継ぐデバンは嫁入り先として丁度良いと整ったものだった。
カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる