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惑星エルリス

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迎えた夜会当日…朝から屋敷はバタバタしていた。
俺はラファイとアリアを連れて散歩に出掛けた。

「お兄様!魔法見せて!!」

「うーん、仕方ないですね。ラファイ。」

「分かった。」

「行きますよ?」
俺は光の玉を作り高く上げて行く、そこにラファイが作った炎で作られた鳳凰が光の玉に突っ込んで弾けさせるとキラキラと花火の様に飛び散った。

「わぁぁぁあ!!キレーーーー!!」

「ふふ、父さんや母さんには内緒ですよ?」
口に指を当てて言えば、アリアはクスクスと笑って同じく口に指を当てた。

「ラファイ兄様もありがとう!!」

「あぁ、構わない。」
心無しかラファイの耳が赤い。
実はラファイ、アリアが可愛くて仕方ないのを隠している…つもりです。

「私も兄様の誕生日でたいな。」

「アリアにはまだ早い。」

「ラファイの言う通りです。何時かはアリアも夜会や舞踏会に出なければならない日が来ますから。それからアリアが夜会や舞踏会に出る時は必ず兄様に言うのです。絶対に付いて行きますからね?」

「俺もついて行く。」

「うーん、よく分からないけど分かった!」
クロードもラファイも嫌いな夜会でもアリアの護衛なら行くつもりだ。
可愛いアリアに変な虫が付いたらたまったものではない。
午前中はアリアと遊び、昼食を食べて俺とラファイは夜会の準備に取り掛かった。
帝達も予定の時間よりも早く屋敷に来る事になっている。
クロードは何時もはくせっ毛の髪を無造作と言うよりほっといていたのを、今は後ろに流している。
ルナは別室で準備中だ、女性は準備にかなり時間がかかるらしい。
俺とラファイが準備を終えた頃、帝達男性陣が屋敷に現れた。

「総帝様、主役がそんな顔してちゃ駄目だよ!」

「これ、風帝今はクロード様じゃ!」

「あっ!そうだった!危ない危ない!土帝はガライルだよね?総帝様がクロード様で、焔帝がラファイ、闇帝がカイテルで、えーと…水帝が…」

「リナリアじゃ。」

「そうそう、リナリア!光帝がマキナ!忘れないようにしないと…」
風帝はブツブツと名前を復唱している。

「カイテルもいつもと雰囲気が全然違いますね?」
闇帝カイテルも前髪を後ろに流し綺麗な顔が露になっている。

「風帝…フールが…」
風帝の名前はフール、成程風帝の力作ですね?
グッジョブです風帝!

「女性陣はまだ時間が掛かるそうじゃよ。」

「はい、ルナもまだ掛かりそうです。それまで別室を用意していますから、私達はそこで待機していましょう。チャールズ、水帝と光帝が来たら案内して下さい。」

「畏まりました。」
俺達は別室で紅茶を飲みながら女性陣を待った。
土帝ガライルは既に酒を飲んでいる。
空が茜色になり始めた頃、女性陣が部屋に案内されて来た。

「遅くなりましたわ。」

「構いませんよ、ルナなんてまだですし。二人とも綺麗ですね。」
水帝リナリアと光帝マキナは顔を真っ赤にした。
男性陣は思った、クロードは天然の女殺しだと。

「光帝…いや、マキナさんそのドレスとても似合っています。マキナさんだからその色が映えるんですね。」
光帝マキナはもう倒れそうだ。
クロードに手を持たれている為辛うじて立っていた。

「リナリアさんも素敵です。」
水帝リナリアも顔を真っ赤にして目を回した。

「ちょ、ちょっとクロード様!その位にしないと…あっ!」

ーバタンっ!!

「うわぁぁぁ光帝!!」
風帝フールが光帝マキナを支えた。
水帝リナリアはボーッとして心ここに在らずだ。

「クロード、一応聞くがそれを教えたのは誰だ?」

「ラファイ?父さんですけど…それがどうしたんですか?」

「ウィリアムさんからどうに聞いた?」

「えっ?ドレスで着飾った女性は褒めるものだと。違うんですか?」
キョトンとするクロード、きっと何故光帝が倒れたのかも分かってないだろう。

「クロード様は何じゃ…褒めたらいかんな。」

「駄目なんですか?光帝も水帝も本当に綺麗だったから褒めたのですが…私の褒め方は駄目だったのですね?」
自分の褒め方が悪かったのだと思ったクロードは肩を落とした。

「いや、そうじゃねえ。褒め方は完璧だった。ただお前だから駄目なんだ。」
クロードはさっぱり意味が分からない。
そこにルナが準備を終えて合流した。
クロードはルナにも近付いて手を取った。

「ルナ、綺麗です。ルナには俺の瞳の色のドレスが似合っていますね。」
ルナは固まりボンッと頭から湯気を出し真っ赤になった数秒後…倒れた。
倒れたルナを支えながらクロードは泣きそうな顔をしている。

「何故私が褒めると皆倒れてしまうんですか…倒れる程失礼な事を言ってしまったのでしょうか?」
倒れたルナをソファーに運ぶクロードを見ながら土帝ガライルがラファイに呟いた。

「こりゃ夜会は荒れそうじゃな?」

「止めてくれ、俺は既に頭が痛い。」
ラファイは頭を抱えた。

「天然のタラシって僕初めてみたよ。」
と風帝フール。
闇帝カイテルはクロードの遣り取りを見て顔を赤く染めて俯いていた。
クロードにやられた光帝マキナは復活までには時間が掛かり、水帝リナリアはボーッとしたまま暫く座っていた。
ルナはいち早く復活し、クロードに詰め寄った。

「クロード!!貴方あんな殺し文句何処で覚えて来たのよ?!」

「えっ?正直に褒めただけですよ!」

「夜会で他の女にあんな殺し文句行ってご覧なさい!!その女決してやるわ!!」
クロードはルナの気迫に押され無言でコクコクと頷いた。
もう誰も褒めるまいとクロードは思った。
次第にオズワルド公爵家の庭も騒がしくなって来た。
沢山の馬車が列を作り出している。
こうして波乱間違いなしの不安な夜会が幕を開けるのだった。
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