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人類の存続
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しおりを挟む翌日、クロードの執務室で闇帝と待ち合わせしていたクロードは早くに執務室に入り闇帝を待っていた。
「失礼します、遅く…なりました。」
クロードは闇帝の姿を見て絶句した。
「あの…カイテル?その大荷物は何ですか?」
逆に闇帝はクロードの余りの軽装に絶句していた。
カイテルの背中には巨大なリュックが背負われており、反対にクロードは鞄一つにローブとかなり軽装だ。
「初めての遠征なので…色々と必要になるかと思って荷造りしたらこの量に…なってしまいました。」
クロードは失念していた。
カイテルは遠征任務は初めてだったのだ。
「カイテル、残念ですがその荷物は置いて行きましょう。俺が持っている物で充分です。それに偵察なので軽装に越したことはありません。それでさ不測の事態になった時素早く動けませんよ?」
昨晩一生懸命荷造りしたであろう荷物をカイテルはショボーンとしながらも床に下ろした。
「今回は何回かに分けて転移します。私から離れないで下さいね。」
「は、はい!」
緊張しているカイテルを連れてまずは森の10km地点まで転移した。
そこはまさに花の楽園だった。
一面に広がる花畑、それに見惚れる闇帝は一つの花に手を伸ばした。
それを寸での所でクロードがカイテルの腕を掴み止めた。
「カイテル、ここの花に不用意に触れてはいけません。この花は見た目はとても美しいですが、触るととんでもない事になりますよ?」
カイテルはこんなに美しい花が信じられないと花を凝視した。
「もし…触ったら…どうなるんですか?」
「顔や身体に水疱が幾つも出来てしまいます。まず人前には出れませんし、治った後も水疱の痕が残ってしまうのです。」
カイテルはなんと恐ろしい花だと顔を青くさせた。
次に転移したのは森の入口から50km地点。
この辺りから魔物の強さがやたらと上がる。
「ここからは気を付けて行きましょう。ここから先は魔物に出会すと面倒です。」
カイテルは頷き闇帝魔法を発動した、クロードは二人の気配を消し去った。
次に転移したのは200km地点、ここでクロードが異変に気付く。
「おかしいです。」
「何がですか?」
カイテルは森を見渡すが、見渡す限り森で何の異変も感じない。
「ここまで来ると魔物の楽園状態なのですよ。希少な魔物がゴロゴロ居るのですが…今は鳥の囀りすら聞こえません。」
カイテルは耳を済ます、確かに静か過ぎる。
森なら動物の鳴き声や魔物の姿が見えても良いはずだ、特にこんな森の奥に滅多に人など来ない。
「何かに警戒…しているのでしょうか?」
「シッ!何か来ます。」
カイテルもクロードが見ている方向を緊張の面持ちで見詰める。
だんだんと地鳴りが聴こえ、ドンドン此方に近付いてくる。
ズシーンズシーンと地面を揺らし時々木をなぎ倒している様なバキバキと音が鳴る。
そこに現れたのは8mはあろう、魔物だった。
頭には不思議な形の角が生え、肌は茶褐色、塗手には大きな斧の様な物を担ぎ、腰にはボロボロの布の様な物を巻いていた。
大きな口からは牙がはみ出し、ギョロっとした目が森を見渡していた。
クロードはすかさず二人の匂いも消した。
気付かれたら不味い、一体なら良いが目視で三体確認出来ていた。
「クロード様、あの方向は…」
「目的は分かりませんが、あっちには王国があります。」
コソコソ話していると魔物達の会話が聞こえてきた。
「人間の国はこげに遠かね?」
「ワイらならあと一日もあれば着くじゃろ?」
「人間を殺しに行くがぁ、三人で大丈夫かえ?」
「人間はこんならちぃっこいらすいぞい?」
魔物は米粒程に指を縮めて仲間に見せた。
「そげんちぃっこいのが生きとるのけ?」
「らしいのぉ。」
とそんな会話が聞こえてきた。
「カイテル、ここは一旦引きましょう。一気に帝宮まで飛びますよ。」
「はい。」
クロードとカイテルはクロードの執務室に転移した。
クロードは直ぐに念話を始めた。
“総帝より伝達です。森の200km地点にて8m級の大型の魔物を確認!真っ直ぐに此方に向かっています!シルベニア王国の民は直ぐにドラスタ王国へ避難、近くにいる帝は誘導をお願いします!大型の魔物到着まで恐らく1日、数は三体!ドラスタ王国森付近の民も王都へ避難させて下さい!避難、誘導完了次第帝はドラスタ王国南入口に集合とします!私も避難の誘導に入ります!出来るだけ早急にお願いします!”
“”“了解!”“”
「カイテル、私は民の避難誘導に向かいます。カイテルはエデンに闇魔法で結界をお願いします!」
「分かりました!」
クロードはまずクロードが生まれた南の村に向かった。
村に着くと直ぐに村人達に囲まれた。
それでも構わずクロードは声を上げる。
「これから皆さんには王都へ避難して頂きます!必要最低限の物を持って私の元へ集まって下さい!もうすぐ森から大型の魔物が襲って来ます!急いで下さい!」
村人達は慌てふためきながらクロードに従った。
そこへ見知った顔が見えた。
父クロスと再婚相手であろう女性だ。
「総帝様!!」
振り向くとそこには義理の弟になるカイルが荷物を持ち、カイルの父親は元母のクロエを気遣いながら此方に向かっていたり
「カイル、荷物はそれだけで良いのですか?」
「俺の事に覚えていてくれたんですね!はい、これだけです。」
クロエがクロードに気付きクロードを抱き締めた。
「あぁ、やっと迎えに来てくれたのね?王都へ行くのでしょ?楽しみだわぁ!」
そんなクロエをクロードは冷たく見下ろした。
それだけでクロエには見向きもせずに、クロードは村人の転移を始める。
「この魔法陣に10人ずつ乗って下さい!転移先は王都のギルドです。そこで皆さんを一時保護します!」
クロードは次々と転移させて行く。
南の村の避難が終わるとラファイがいるであろうシルベニア王国に向かった。
シルベニアではラファイ指揮の元、近衛が民を守り先導しながら徒歩で避難していた。
「これでは間に合わない…」
クロードはラファイを見つけ降り立った。
「焔帝!!」
「総帝様!すみません、俺では他者を転移を出来ないので徒歩です。しかし、このままでは…」
「間に合わない…私が転移さすます。一気に転移させます!」
“我は総帝、今より皆を王都へ転移させます。行先は王都のギルド、そこで保護します。”
クロードら空に両手を翳し何か呟くと金色に光る超巨大な魔法陣がシルベニア上空を覆った。
それからはあっという間だった。
大勢いた民と近衛、城にいた者も全て一瞬で消えた。
「これで避難は完了です。」
“総帝より、避難完了!帝は直ちに南門に集合です!”
「ラファイ行きましょう。」
「あ、あぁ。」
ラファイはクロードが繰り出した転移の規模に圧倒されていた。
こんな芸当クロードにしか出来まい。
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