うちの総帝様は最強なのだが如何せん天然で…

凪 冬夜

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人類の存続

2-34

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クロードは新郎の控え室でソワソワ落ち着きなくウロウロしていた。
そんなクロードを見てウィリアムは笑う。

「俺にも身に覚えがあるな。クロード、楓ちゃんのウェディングドレス姿を見て鼻血吹くなよ?」

「父さん…吹いたんですね?」
ウィリアムは気まずそうに頬をかいた。
一方、新婦控え室では楓の両親が感動の余り泣き出していた。

「楓…綺麗だ!嫁いでもお前は私の娘に変わりないのだからな!」

「お父様、泣かないで下さい。まだ式も始まっていませんわ。」

「そうよ貴方、娘は何時か嫁ぐものなのよ。今でこれでは式が始まったらどうなってしまうのかしら。こんなに立派な式をして頂けるのだからシャンとなさって下さいな。」
それから暫くバジルはわんわんと泣いた。
二人の控え室には取っかえ引っ変え帝達が祝いにやって来て、それだけでもう式の始まる時間になってしまった。

クロードは真っ白なタキシードに身を包み、聖堂の中で緊張した面持ちで立っていた。
立派なパイプオルガンがなり始めると聖堂の大きな扉が開いた。
そこには真っ白なウェディングドレスにベールを被った楓が父のバジルと腕を組んで俯きがちに立っていた。
クロードは父のウィリアムの気持ちが分かった。
鼻血が出そうな程、今日の楓は綺麗だ。
ゆっくりと楓をエスコートするバジルは必死に涙を堪えていた。
それでも娘を渡す時はやって来る。

「お父様、今まで育てて頂いてありがとうございます。私、幸せになります。」

「あぁ…行っておいで。クロード君が待っているよ。」

「はい、お父様。」
バジルは楓の手をクロードに引き渡す。

「必ず楓をしあわせにします。」

「あぁ…グズッ楓を頼む。」

「はい。」
それから式は滞りなく進み夫婦の誓をたてる。
お互いに指輪を交換し、キスをすると割れんばかりの拍手と花弁が舞った。
ルナとラウが運んで来たらしい。
二人は幸せを噛み締めながら笑い合った。



「幸せそうですわね、クロード様。」

「こんな結婚式憧れちゃいます!」

「マキナ、私達も遅れは取れませんわよ!」

「はい!リナリアさん!」
二人は結婚への闘志を燃やした。

「もう行き遅れとるのぅ。」

「何ですって?!私達は寿命など無いに等しいのです行き遅れも何もありませんわ!!」

「僕は結婚とか興味無いなぁ。」

「お主の嫁になる様な奇特な女はそうは居らんだろう?しかしな…笑って居るがクロード様も葛藤しとるぞ?」

「何を?幸せの絶頂じゃないか?」

「儂らは寿命が無いに等しいと言ったじゃろう?クロード様はどう足掻いても楓ちゃんを看取らねばならんのじゃよ。耐え難い事じゃ、それがもう結婚する前から確定しとるんじゃからな。」
帝達は微妙な顔をした。
明日は我が身だ。
聖堂から出ると大きな馬車に乗り民衆にも祝福されながら公爵家まで帰ってきた。
楓の両親は数日公爵家で過ごす、新婚だがクロードは執務がある為エデンに戻る。

「楓は御両親と過ごして下さい。俺は執務が終わり次第帰りますから。」

「分かりました、待っています。」

「それとすっかり式の後になってしまったのですが…」
と言ってクロードが取り出したのは金塊の山だった。

「結納がまだでした、そちらの星の習慣は分かりませんが受け取って下さい。」
バジルと椿は顔を見合わせた。
これ程の金塊、バジルの星で言ったら死ぬまでには使い切れない程の価値があった。

「クロード君!こんなに貰う訳にはいかない!」

「そ、そうよ!私達に渡す位なら楓との生活に役立てて頂戴!」
焦り出すバジルと椿を楓は苦笑いで見ていた。

「お父様、お母様受け取ってあげて下さい。」

「しかし、楓…」

「この星では男の方の甲斐性を示す為に結納を行うそうです。クロードにはこの程度はお小遣いと言った所です。」
バジルと椿は驚きながらそうなのかとクロードに視線を向ける。

「はい、これでも甲斐性はあるつもりですので。楓には苦労はかけません金銭的には…ですが。総帝としては楓には心労を掛けてしまう事があるでしょうが、楓は絶対に守ります。」
クロードの甲斐性にも驚かされた。
これが小遣いとは一体どれだけ稼いでいるのかとバジルは思ったと同時に何故か敗北を感じた。

「では俺はエデンに戻ります。」

「クロード、行ってらっしゃい!」

「はい、行ってきます。」
クロードはシュンっと消えた。

「全く結婚式の日にまで仕事なんてね、総帝なんて厄介だわ。楓ちゃんごめんなさいね。」

「大丈夫です義母様、それを覚悟でクロードと結婚したんですから。」

「うちの嫁は出来た嫁ね。」
そう言ってナディアはアリアの部屋の方向を見た。
アリアはクロードの結婚が認められずに部屋に引き篭っていたのだ。
結婚式にも出ずに。

「アリアちゃんはまだ私を受け入れてはくれていないんですね?」
楓も結婚式にアリアが居ない事に気付いていた。
クラディスには会いに行っているが、アリアには部屋に行っても門前払いされてしまっていた。

「あの子はクロードが大好きだから、それにまだ子供なのよ。そのうち少しずつ受け入れてくれるわ。」

「だと良いのですけど。」
楓もアリアの部屋の方向を見た。
今日は公爵家の結婚式に相応しい快晴、それとは真逆にクロードは蝕まれていた。
夜は結婚祝賀の夜会がある、それまでにはクロードも戻って来るだろう。

_____________________________________

※次ページ挿絵あります。
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