うちの総帝様は最強なのだが如何せん天然で…

凪 冬夜

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人類の存続

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「詠唱は覚えましたね?」

「大丈夫です!バッチリ!」
俺と風帝、着いてくると言ったラファイは帝宮の地下の闘技場に来ていた。
ここなら色々破壊する事は無い。

「では始めて下さい。」
風帝は闘技場の中央に立つと掌を地面に翳し、詠唱に入った。

「クロード、大丈夫なのかよ。」

「無理でしょうね。一番簡単な古代魔法から教えましたが…多分倒れますね。かなり詠唱に時間が掛かっていますし、もう魔力が足りてないので魔力が練れないのでしょう。」
風帝は構えたまま後ろにバタンと倒れた。

「クロードの言った通りだな。」

「俺は規格外なので問題ないですが、あの土帝が一撃必殺だと言っている意味を理解してくれれば良いんですげとね。俺を除いた帝達の中で土帝は長く生きてきた分一番魔力量が多いんですよ。その土帝が一回の発動で倒れる位魔力を必要としますから。」
そう言いながら風帝に魔力を流した。

「古代人はそんなに魔力量を持ってたのかよ?」

「そうみたいですね。込める魔力量も桁違いなのでやはり現代魔法よりも威力も規格外ですから。例えば…古代魔法…悠久の銀世界…」
闘技場が一面銀世界に変化し大きな氷の柱が幾つも聳えたっていた。

「行きますよ?これがラファイの全力位の魔力です。」
クロードは掌に魔力の玉を作ると氷の柱に向けて放った。
氷の柱は少し皹が入っただけだった。

「次は、さっきと同じ魔力量に古代魔法を組み込みます。」
クロードは古代語を短く詠唱した。
掌の玉は真っ黒になり渦巻く。
それを氷の柱に向けて放つと轟音も共に氷の柱は崩れ落ちた。

「これ位の違いがあるんです。」

「すげえな、風帝が古代魔法を使いたい気持ちは分かんな。」

「うーん、これくらいなら頑張ればラファイなら使えると思いますよ?倒れますけどね、最初は。」

「風帝は違うのか?」

「フールは魔力操作が苦手な上、魔力量が他の帝達よりも少ないんです。フールの攻撃は力任せな傾向がありますから。フールが使うウィンドカッターがこれです。」
右手にウィンドカッターを作り出す。

「こっちがしっかり魔力を練り込み鋭く薄いイメージで作ったウィンドカッターです。」
左にクロードのウィンドカッター。
見た目でもう全く違う魔法の様に見えた。
勿論威力もクロードの方があった。
フールが作り出すウィンドカッターは氷柱に当たると氷柱は砕けたが、クロードのウィンドカッターはスッパリと綺麗に氷柱を切った。

「違いが一目瞭然だな?」
いつの間にか目を覚ましたフールは目を見開き固まっていた。
力の違いを見せつけられ歯を食いしばった。

「フール、魔力操作をもっと正確にするんです。そうすればより多くの魔力を練り込む事が出来ますから。」

「僕は魔力が少ないんでしょ?どうにもならないじゃない。」
完全にフールは拗ねた。

「そんな事ありませんよ?フールは帝なのですからやって出来ない事はありません。それにはまず魔力操作が必要なんですよ。」

「クロード、俺にも助言はねえのかよ?フールばっかり狡いじゃねえか?」
クロードはそれならと足をタンっと鳴らし銀世界を消し、また地面に手を翳す。

「植物魔法…深淵の森。」
今度は森が現れた。

「では何時もの感じで…そいですね、ファイアーボールを放ってみて下さい。」
ラファイは無詠唱でファイアーボールを一本の大樹に放った。
樹皮は抉りれ大きく焦げた穴が開いた。

「こんな感じか?」

「はい、じゃあ次は全力のファイアーボールを放って下さい。」
ラファイは分かったと言うと直径3mはある炎の球体を出現させて放った。
轟音と共に森は10m程が焼け焦げた。

「教えることは無いと思いますが?」

「いや、お前もファイアーボール出してみろよ。」

「分からりました…」
クロードはラファイの4倍程の炎の球体を出すと更に魔力を練り込む。
暫くすると球体はグンっグンっと小さくなって行き飴玉程の大きさまで凝縮された。

「ラファイ、これを放てと言うならラファイもフールも結界を張って下さい。」
それに顔を青くしたフールが放たなくて良いと首を振る。
それを見てクロードはファイアーボールを消した。

「クロードのはもうファイアーボールとは呼べねえ代物だな。」

「あんなに違うのか…僕にも出来るかな?」

「出来ますよ、魔法は魔力操作とイメージが一番大事ですからね。毎日頑張って下さい?」

「分かった!」
やるぞー!とフールは拳を上げた。

「それかラヴに修行を頼みますか?地獄ですけどね。」

「クロード様、一応聞くけどどの程度地獄なの?」

「そうですね…フール位ならラウならきっとキラースパイダーの群れのど真ん中に放り投げられますね。群れを倒すまで帰れませんし、食事も無しです。」

「「………。」」
ラファイもフールも何も言えなかった。
キラースパイダーは森のハンター、一匹見掛けたら逃げろが暗黙の了解だ。
幼いクロードはどんな修行をラウにさせられていたのだろうか?
二人はクロードの強さの片鱗を見た気がした。

「ぼ、僕大丈夫!自分で頑張るから!」
全力でフールは断った。

「そうですか?手っ取り早く強くはなれますよ?生きていれば。」

「お前…サラッと恐ろしい事言うんじゃねえよ。」
顔を引き攣らせるラファイを見てクロードは首を傾げた。
この日から帝達の中でラウの修行は受けてはいけないと言う暗黙の了解が生まれたのだった。
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