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人類の存続
2-47
しおりを挟む翌日、騎士団長は宰相に呼ばれ南の穴に来ていた。
勿論騎士団長の影にはしっかり闇帝カイテルが潜んでいる。
「おお、やっと来たか。遅いぞキャスパー。」
「す、すみません!」
「まぁ良い、事は良い方に進んで居るからな?」
宰相はキッチリとオールバックにした灰色の髪を撫でながらニヤリと笑った。
「次の集落の連中も運べ。良いな?何の役にも立たん貧しい奴等だ、精々私の役に立って貰おう。」
「わ、私はもう出来ません!!」
「何だと?!私の言う事が聞けないと言うのか?」
「ならば!ならば理由をお聞かせ下さい!!私は今まで何も知らないまま貴方の言われるままにここに人を運びました。しかし、もうこれ以上は理由をお聞かせ願えない限り出来ません!!」
宰相は一瞬顔を顰めたが直ぐにニヤリと笑った。
「良いだろう、聞かせてやろう。私とクロウ様の壮大な計画を!!」
クロウの名が出た瞬間危なくカイテルが影から出てしまいそうになった。
「クロウ様の下僕となった私は、クロウ様と共に理想郷を築くのだよ!!人間を排除、奴隷としこの世界はクロウ様を筆頭に魔族が治めるのだ!!私はそれなりの役職がクロウ様より約束されて居る、お前も協力すれば悪い様にはしないぞ?」
騎士団長は青ざめた、理想郷を語り酔いしれる宰相の顔は最早人とは思えなかった。
「分かりました。」
「そうか、お前も分かるのだな理想郷が…」
「違います!!協力は出来ないと言う事です!!」
「な、何だと?!貴様騎士団長の分際で命が惜しく無いのか?!」
宰相は腰の剣を抜き騎士団長に切りかかろうと腕を振り上げた。
「そこまでだ…」
すかさずカイテルが宰相の背後を取り宰相の首に真っ黒なナイフを宛がった。
「ひぃっ!!貴様!私に刃を向けて生きて行けると思うなよ?!私はこの国の宰相なのだぞ?!」
「ならば僕はこの世界の闇帝ですよ。逆に僕にそんな口聞いて生きて居られると思うんですか?」
「へっ?!ひぃっ!!闇帝様?!」
「宰相様、他の帝様達も来ていらっしゃいます。もう宰相様の事も知れています。観念して下さい!」
「クックック…アッハッハッハッハッ!!ここまで来て諦める筈無かろう!!後少しなのだ、後少しの生贄で私の大願は成就されるのだ!!」
ードゴゴゴゴゴゴゴ…
宰相の叫びで穴の奥からジャイアントキラーアントの群れがワラワラと湧いてきた。
「生贄に帝様とはこれなら貧しい者を生贄にしなくとも足るだろう!!」
「そうは行きませんよ?闇帝を生贄にしたら後継者が居ないじゃないですか。それは非常に困ります。鉱石魔法…鋼の檻…からの雷魔法…雷神の雷!!」
雷を通しやすい鋼の檻に閉じ込められたジャイアントキラーアント達は忽ち真っ黒焦げになって息絶えた。
「総帝様、闇帝の後継者では無く闇帝自身を心配されては?闇帝がひっそり凹んでますよ?」
ラファイに言われカイテルを見ると宰相にナイフを当てながらも凹んでいるのが分かった。
「闇帝!!違うんですよ?!闇帝の事を心配して言ったんです!!実際貴方が居なくなったら後継者も居ないのも事実ですし!!」
「総帝様…そりゃフォローになっとらん。」
「でもさ~、実際誰が欠けても代わりが今は居ないのは本当じゃない?」
ふあ~と欠伸をしながら風帝フールがゆっくりと歩いて来る。
「総帝様、手紙が来てたんだ渡すの忘れてたよ~。」
「風帝何故今なんじゃ…少しは空気を読まんかい。」
「だって結構前に来た奴だし早く渡そうと思って。」
口を尖らせるフールにガライルは溜息を吐いた。
手紙を受け取ったクロードは直ぐに手紙に目を通すと目を輝かせ飛び跳ねた。
そして直ぐに真面目な顔になり手紙を大事そうに懐にしまった。
「早く帰らねばならない事情が出来ました。で?誰が悪いのです?宰相を始末して国王を始末すれば良いですか?」
「ちょっと待って!!いや、待って下さい!状況はそこまで簡単では無いんですよ?」
ラファイは慌ててクロードを止めた。
「ねえ~総帝様、何でそんなに早く帰りたいの?手紙読んだからだよね?」
フールの質問にクロードは少し顔を赤らめた。
「…しんしたんです。」
「「「「えっ?」」」」
「楓が妊娠したんです!!私パパになるんですよ!!」
これにはラファイ達も驚いた。
しかし、まだこの国でやらなくてはならない事が沢山ある。
直ぐに帰るのは到底無理な話、しかし今のクロードなら無理矢理解決して帰ろうとするかもしれないとラファイは内心焦っていた。
「では、やっちゃいますか?手っ取り早く!」
「総帝様落ち着くのじゃ!気持ちは分かるがまだ帰れん。」
「これが落ち着いて居られますか?!私が傍に居なくて楓が不安に思って居るかもしれないんですよ?そうすればお腹の赤ちゃんにも悪い影響が出たらどうするんですか?!」
話は脱線して行き、それを唖然として見ている騎士団長とどうして良いのか分からないカイテルは取り敢えず宰相を気絶させた。
「話が脱線し過ぎてるよ~?総帝様早く帰りたいならサッサっと問題解決しちゃおうよ?宰相はまぁ死ぬまでヘルで良いんじゃない?後は王に話聞いてさ、クロウの事は後で宰相を闇帝に預ければ直ぐに分かるんじゃない?」
「そうですね!うん、国王の所に行きましょう!!」
全員で穴を出て王城に向うと立っていられない程の地響きが突然襲ってきた。
「うわぁぁあ!!何コレどうしたの?!」
「地震でな無さそうじゃな?」
「索敵にガイバーオーガが掛かりました!!全部で五体、それに…アレはクロウ?」
索敵で感じた気配にクロードは我を疑った。
間違う筈が無い気配、この世で一番愛しいと思った人の気配を間違う筈が無い。
しかし、今回だけは間違いであって欲しい。
何故ならその気配はクロウともう一つ大きな魔力を有した魔物と一緒だったからだ。
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