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人類の存続
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しおりを挟む帝様はエデンに着くなり、オズワルド公爵家と楓の両親に詰め寄られ説明と報告に追われた。
楓の両親は泣き崩れ、ウィリアムとナディアは茫然自失といったようだった。
ただ希望は一つだけあった。
「楓の赤ちゃんは…無事なのですね?」
楓の母椿が嗚咽を耐えながら聞いた。
「はい、ギリギリでクロードが古代魔法で助け出しました。しかしルナ様の話ではクロード様と生命の揺籃は離してはならないそうです。それに…」
カイテルは言葉を詰まらせた。
「それに何なの?!」
ナディアが捲し立てる。
「赤ちゃんが余りにまだ小さいので…クロード様の魔法でもうまく育つか分からないとルナ様が言っていました。」
楓の中から取り出した子供は余りにも小さかった。
まだ米粒程の小さな命、クロードも眠りについてしまった今ちゃんと育つ保証も無い。
しかし、生命の揺籃から出してしまえば赤ちゃんは死んでしまう。
「一抹の望みに賭けるしかないだろう。私達の孫なのだからきっと強く生きてくれる事だろう。」
ウィリアムが言うと皆頷いた。
それからクロードと生命の揺籃は総帝の部屋に運ばれ、楓の両親の願いで楓のクリスタルも一緒の部屋に運ばれた。
その後、500年人間と魔物の戦争が始まった。
この500年でガイバーオーガ達により人間の国はかなり奪われていった。
帝様達も尽力したが総帝でも苦戦するガイバーオーガだ、倒す事より住民の避難に力を入れるしか無かった。
これによりイリス達もかなり命を落とした。
そして、この戦いで光帝が命を落とした。
人間の生活領域はガリル、ドラスタ、ルチル、アスタナ、シルベニア王国の5ヶ国からなっていたのが最初はアスタナが落とされ、次にシルベニア、ルチル、ガリルと魔物の大群に攻め込まれ今ではエデンがあるドラスタ王国のみとなってしまっていた。
人口も激減し、イリスですら稀な存在となってしまった。
光帝は空席となり、雷帝には双子のアルトとソルトが就いた。
クロードと楓の子供は生命の揺籃で無事に育ちオズワルド公爵家でスクスクと育った。
勿論、楓の両親のバジルと椿ともまめに会い可愛がられた。
名はアジュール、元気な男の子だった。
アジュールは時折ウィリアム達に連れられてエデンにいるクロードと楓に会いに行っていた。
母親の楓は亡くなってしまったが、父親のクロードは生きているのだと聞かされていたがクリスタルの中の父親は子供から見たら生きている様にはとても見えなかった。
しかし、周りの愛情に恵まれたアジュールは真っ直ぐに育ち大人になると立派にオズワルド公爵家の当主を務めあげた。
しかし、ずっと待ち続けた父親はアジュールが寿命を全うするまでに目覚める事は無かった。
今でもアジュールの父親と母親は仲良く並んで眠っている。
とても美しい二人から生まれたアジュールも勿論かなりの美形だった。
どちらかと言えば楓に似ているかもしれない。
オズワルド公爵家がアジュールから五代当主が変わった頃、また人間の運命は動き出す。
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※次章領土奪還へ続く
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