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領土奪還
3-8
しおりを挟むクロード達が去った後、彼女は残った紅茶を飲み干すと窓際にあるベットに飛び込んだ。
「クロード…マスターの敵…。何故なの?彼を見ると懐かしい…。」
彼女の独り言はベットの横に飾られた花しか知らない。
エデンに戻ったクロードはルナに頼んで彼女の監視をお願いし、エデンから護衛をあの家に送った。
「良いけれど、私は行かないわよ?下級の眷属に行かせるわ。嫌な感じがするのよ、私はクロードから離れないわ。」
「それで良いです。宜しくお願いしますルナ、逐一報告を。」
「分かったわ。」
ルナはフワリと消えた。
彼女が現れてからルナとラウは出来るだけクロードから離れようとしなかった。
ラウも同じく何か感じているのか、執務室ではクロードの足元で丸くなって眠る様になったのでクロードはラウ用のフカフカのクッションを用意したのだった。
「ラウ、彼女どう思いますか?」
クロードは羽根ペンを起き寝ているラウに声を掛けた。
ラウは気だるそうに片目を開けると大きな欠伸をした。
気持ちよさそうに伸びをするとクロードの隣にお座りした。
「うむ、あ奴は楓では無い。まずあ奴はからは人の匂いがしない。」
「人の匂いがしない?」
クロードは眉間に皺を寄せると考え込んだ。
「ラウ、どう言う事ですか?」
「人の匂いがしない、つまりあ奴は人では無い。簡単な事だ。かと言って魔物の類でもない。」
「人でも無く、魔物でも無い…。」
クロードは混乱した、そんな存在が本当に居るのだろうか?
「クロードー!!」
そこへルナが飛び込んで来た。
「ルナ、どうしたんですか?そんなに急いで。」
「そりゃ急ぐわよ!あの女…あの女は!」
息を切らしながら捲し立てるルナの報告を聞くクロードの顔色はどんどん悪くなって行った。
「つまり、彼女の狙いは俺だと?」
「そうよ!クロードを狙ってるの!あの女、クロウの手下よ!しかも楓の髪の毛から生まれたらしいわ!」
「楓の?」
クロードから殺気が溢れた、その瞬間クロードは楓の墓に転移し注意深く楓のクリスタルを探った。
「んっ?」
入念に触って行くと少しだが手に引っ掛かる部分がある。
「穴…ですかね…。」
目には見えずらい位のちいさな穴が楓の髪の毛まで伸びていた。
「やられましたね、まさか楓の髪の毛から彼女を作ったんですか?」
似ている筈だ、楓の髪の毛から作ったのなら彼女は楓そのものなのだから。
「楓、すみません。俺は楓の分身を恐らく殺さなければならない。許して下さい。」
楓のクリスタルに額を付けると少し温かい気がした。
それからクロードは帝会議を開き事実を伝え対策を考える事になった。
「総帝様は大丈夫かのぉ?」
ガライルが心配そうにクロードを見た。
他の帝達も同じ気持ちでクロードを見ていた。
クロードはそんな帝達の心配を余所に涼しい顔をしていた。
「あれは楓じゃありませんから、私は容赦無く殺りますよ?」
ニコニコと答えるクロードに帝達は寒気を覚えた。
クロードの目は全く笑っていなかったからだ。
最愛の人を愚弄された怒りがヒシヒシと伝わって来る。
流石にクロードの殺気に雷帝の双子も目を覚ました。
「クロウの思惑が分かりません。私が楓の偽物如きで動揺すると思ったのか?はたまたそれ以外の何か狙いがあるのか?どう思いますか?」
「楓様を使うならやはり総帝様が狙いなんじゃないかしら?」
「ふむ、儂もそう思うが…あの女は何の行動もしとらんじゃろ?」
「様子見で良いんじゃねえか?」
「あの~…」
そこに気まずそうに闇帝カイテルが手を挙げた。
「どうしました闇帝?」
「あの、彼女は恐らく楓様の髪から作られたホムンクルスだと思うんです。」
「ホムンクルス?」
「はい、古い文献でしか読んだ事は無いのですが…遠い昔に忘れ去られた術です。失敗すればそれは人の形すら取らないと、成功しても恐らくは楓様に似ているだけで記憶までは無いと思います。」
「ふむ、クロウなら使えそうじゃの。」
帝達は今後あの楓擬きを監視し、様子を見る事にした。
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