うちの総帝様は最強なのだが如何せん天然で…

凪 冬夜

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領土奪還

3-10

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クロードの手当てをし、包帯を巻き終えると背後に気配を感じた。
彼女は振り返ると真っ直ぐにその気配の主を見た。

「マスター。」

「クロウ!!何処まで…死者を愚弄するのですか!!楓は…」

「ふふふ…私が殺しましたね。あれは傑作でした。」
クスクス笑うクロウにクロードは今にも飛び掛りそうだった。

「また殺すのか?」

「いや、思いがけずコレには感情も心も宿った様だ。私は人形を作ったつもりだったのでね。私の命令に従わない人形等要らぬのだよ。生かすも殺すも好きにするが良い。少なからず楽しませて貰った。」
クスクス笑うクロウが薄くなって行く。

「待て!!クロウ!!」

「さて、次はどうやって楽しませて貰おうか?期待していますよクロード。」

「待て!!」
クロウはクロードを無視して消えてしまった。
残された彼女は呟いた。

「私はもう存在意味は無いのですね。」
クロードは何も言えなかった。

『クロード!クロードが殺れないなら私が殺るわよ?!』

「待って下さい!ルナ!」

『クロード!この女は楓じゃないのよ?!』

「分かってます!分かっていますよ!でも…それじゃ彼女は何の為に生まれて来たのか分からないじゃないですか?!」

「良いのです、クロード。私は私の存在を見い出せない。楓では無いし、かと言って誰なのかも分からないのです。どうか一思いに…。」

『ほら!本人もこう言ってるじゃない?』

「ぐっ、駄目です。貴女にはちゃんと赤い血が流れ感情も心もある。貴女は人間です。」

「私が…人間…。」

「そうです、人間です。私は総帝です。貴女が人間なら貴女も守る存在です。殺す訳には行きません。存在意義が必要なら与えましょう。」

『もう!!存在意義なんてどうやって与えるのよ~。』

「まずは名前が必要ですね?」

「名前?私に?」

「はい、私が付けても良いですか?」
彼女が頷くとクロードは考え始めた。
ルナはラウも他の帝達が知ったらとこの後の事を心配していた。
まずラウは認めないだろう。

「木蓮…」

「モクレン?」

「そうです、木蓮。こう書きます。」

「木蓮…私の名前。」

「楓の故郷の花の名です。」

「ありがとう…大切にします。」

『もうクロード!私は知らないわよ~!!』

「ルナ、分かってます。ラウや皆にはちゃんと説明して分かって貰います。」
ルナは分かってないわよ…と呟いた。
木蓮に当分の生活費を渡し、エデンに戻り木蓮について説明した。
勿論ラウは大反対で直ぐにでも殺す事を提案したが、帝達も楓そっくりな木蓮に思う所があるのかクロードと共に様子を見る事に賛成したのだった。

「クロード様、木蓮を楓様に会わせてみたら~?」

「ふむ、確かに何か感じるやもしれんな。」
フールの意見にガライルも賛同した。

「木蓮を楓にですか?」

「木蓮に楓様の欠片があれば…」
そこにカイテルが呟いた。

「カイテルどう言う事ですか?」

「古い文献を調べ直したんです。ホムンクルスは人の部分を代用して作られる人造人間です。成功しても心も無い人形。しかし、クロード様の話だと木蓮には心も感情もある様です。最も古い文献には代用する人間の思いの強さによっては木蓮の様なホムンクルスが出来る場合があると…しかし成功した者は居ないので何とも言えませんが、木蓮の中に楓様の強い思いがあれば…」

「楓が戻るのですか?」

「それは…分かりません。」

「楓ちゃんのアップルパイがまた食べたいのぉ。」
ガライルの呟きに他の帝も頷いた。

「それは、木蓮に聞いて見ないと。私の一存では決められません。今度聞いてみます。」
時間が空いたら木蓮の所に行くと決めて解散となった。
ラウはと言うと納得が行かない様でこの後2週間程森から帰らなかったのだった。


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