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記憶と契約
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~少し前・クロウside~
俺様はエルが目覚めたことを王に伝えるため
王の部屋へ向かっていた。
あの頃を思い出す。
エルが天界から消えたいや、消した時を。
あの時は死にたくなるのほどの絶望と緊張感が
エルを襲っていた。
エルの許婚であるヴァニラが蒼の会のせいで
死ぬか助けるかの駆け引きが行われていた。
蒼の会の目的はもちろんエルの力。
天魔である力。
天使であり悪魔でもある彼は両方の側面を持ち合わせていた。
正直何が起こるかわからない。
今は契約関係ではなくとも【友達】としてエルを
守らないといけない。
それが今俺様がやるべき事だから。
王の部屋にたどり着いた。
空気感が重い。
ノックをしてドアを開けた。
「クロウか」
低い声で王が言った。
「えぇ。ルシエル様が目覚めました」
気持ち悪い。毎回毎回エルに対して様をつけるのが
違和感でしかない。
「おぉ!!ルシエルが目覚めたのか!!
報告ご苦労。あと、連れ戻すまで大変であっただろう。
感謝する」
「ありがたきお言葉。それでは私は会議がありますので
失礼します」
さっさとこの部屋を出よう。
ありがたきお言葉なんて言ったが重荷しかない。
感謝されてはならないのだから。
何故なら記憶を隠して天界から消したのは紛れもなく
俺様自身なのだから。
ヴァニラが死んで、エルは絶望の果てに
悪魔に堕る寸前だった。
だから俺様は記憶を隠した。
隠すことで何故絶望したのか忘れる。
更に天界から一時的に逃げる事ができる。
思い出してほしくない。
たとえエルにこの力を使って思い出させて欲しいと
言われたとしても。
~現在・ルシエルside~
「再度に使い魔契約してほしいのです。クロウと」
シエルは面と向かって言った。
「どうして?」
「自動的に消えている契約の影響でクロウの力が
十分に使えないのです。だからあなたを守るために
もう一度契約してほしいのです」
「…クロウはそれを望んでいるの?」
使い魔契約は主から縛られることと同じ。
主の言うことを聞かねばならない運命。
そして周りからも見下される。
力がなくてもそこまでする必要はないと思う。
でも彼に意思があるならば尊重しなければならない。
「クロウはエル様が目覚める前に言いましたよ。
『友として使い魔としてエルを守りたい。そうじゃないと
俺様自身が許せねぇ』と。それと『俺様の我儘だから
無理強いはしないがな』とも言っていました。
まぁ望んでいるようでしたから、話を持ちかけたのですけどね。」
俺様自身が許せねぇか…。何かあったんだろうか過去に。
だけどそれを知るすべはないし、過去を模索するのも
申し訳ない気持ちになるからやめておくけど……
「そう…。わかった。クロウが望むなら。
で、どうやって契約するの?」
「2種類あります。口頭で行う契約と血を使った契約」
「なんだか契約が口頭って弱くない?血は強そうだけど」
「言霊ってご存知ですか?口から出た言葉は
天界にとっては束縛するのに有効である場合があります」
言霊が束縛するのに有効か……
「たかが口約束、されど口約束ってことかな…?」
「そういうことですね。特徴としては口頭契約は1回目の契約や
2回目以降でも同じ人と契約するときに行います。
血の契約は2回目以降違う人と契約する場合。血に関しては
やはり口頭より束縛が強い状態ですね。」
「ということは…クロウと契約する方法は2回目だけど
今回も僕だから口頭ってことでいいのかな?」
「そうです。」
「でも…口頭ってどうするの?全く知らないけど」
「忘れていてもその時なったら自ずとわかると思いますよ。
そんなものです。契約って」
「はぁ……」
自ずと……か。不安しかない。
内なるものが……なんて起こるのかな?
そんなこと考えていると突如廊下がざわつき始めた。
「どうしたのでしょうかね」
そう言ってシエルはドアを少し開けて周りを見渡す。
すると1人の兵士がやってきてシエルに何か話してから
慌ててどこかに走っていった。
「悪魔、おそらく蒼の会がこの城に侵入したようです。
早く逃げましょう!」
シエルは僕の腕をつかんで急いで部屋の外に飛び出す。
「え!?蒼の会が城に!?」
僕のせいなのか…?
蒼の会が来たのは僕が目的だろうから。
僕を殺そうとしているのかそれ以外なのか……
そうなるとクロウは…?
僕だけでなくクロウも危ないのではないだろうか。
そう思ってからいたってもいられずシエルの手を振りほどいた。
「ごめん!クロウが!!」
僕は反対側に駆け出す。
待ってくださいというシエルを無視して走る。
多分会議はまだ終わってない。
確かに僕は狙われている。
だからといって他人を捨て去って良い訳がないのだ。
会議室は何となく覚えているようで兵士の目を
かいくぐるって近くまでたどり着いた。
僕がいても悪魔相手に勝てるかと言われればおそらく無理。
足手まといかもしれないけど……
怖いのだ。失うことが。
近くまで来ると何か異質な気配と大きな物音がする。
悪魔がここにいるのかもしれない。
すると急に会議室のドアと共に何人かが吹き飛ばされる。
「あーあ!クロウが蹴り飛ばすからドア壊れた!」
「お前もだろうが!」
クロウともう一人…赤いツンツン髪の青年が入り口で
言い合いしていた。
あれ…??思ったより大丈夫そう…?
「2人とも何しているのですか!!」
今度は水色の髪の女の人が出てきて2人を叱りだす。
僕は安堵したのか気が緩んだのか力が抜けて膝をついてしまった。
病み上がり…ではないけど1週間まるごと寝た上に
走ったから疲れたのか。
「あ!!エル!!休んどけって言っただろ!!」
クロウに見つかり駆け寄る。
「だって…ね」
と無理やり笑顔を作った。
「悪魔がこの城に来てるんだ。どうして来れたのか
分からねぇ。だが嫌な予感がするから逃げろ。」
「わかってる。でも僕のせいで蒼の会は来てるんだよね?」
「まぁ……だが厳密に言うとお前自身じゃない。力だ。
少なくとも『僕が引きつけるからー』なんて言うなよ?
ただでさえ、お前寝起きだからな?」
ぐぅも言えなかった。
確かに一瞬だけ僕が消えたらいいんじゃないかっていう
考えはあった。
王子という立場を置いといてという話だが。
だけどそれはよく考えてみたら僕が消えることで
クロウも危険な目に合わせることになる。
「だが…もう遅い。」
男の低い声が響き渡る。
「誰だ!!」
クロウは振り返る。
廊下の向こうの方におじいさんがトコトコと歩いてくる。
「また悪魔かよ!しかもジジイ。」
赤髪の青年がやれやれとしている。
「若者、老人を労れと習わなかったか。」
「悪魔に労る必要なし!」
「そうかい。我が名はヤン。蒼の会第7位である。
老人を大切にしない愚か者はこうじゃ」
ヤンは手を伸ばす。
すると女の人と赤髪の青年は急に頭を抑え苦しみだした。
「エル。絶対に俺様のそばにいろ。離れるな。」
クロウはヤンを見ながら言った。
クロウの背中を見ていると頼もしく感じる。
しかし、それは守られているということであり
少し悔しく歯がゆい気持ちになった。
「お前たち王子をお連れしてこい」
ヤンは言い放つ。
すると赤髪の青年と女の人がぼんやりしたあと
こちらに攻撃し始めた。
2人の攻撃をクロウは必死に受け止める。
「おいおいどういうことだ?やめろ!」
「無駄じゃ無駄。にしても金髪は術がかからないのか。」
これは……洗脳なのかな。
クロウはなぜかからないのかわからないけど……。
「2人とも洗脳されているかも」
「だろうな。その言い方じゃ。余計に離れるなよ。
一瞬でも離れたらやつの人形になってると思え」
クロウの近くにいるからヤンの言う術にかからないのか。
クロウはヤンに銃口を向ける。
「いいのか?銃口向けて。こいつら盾になって死ぬぞ?」
ヤンは言い放った。
「チッ。」
これじゃ……退ける事ができない。
しかもこんなに派手に暴れた割に兵士が来ない。
兵士が洗脳されていることもあり得るのか……。
だからギリギリまで気が付かなかった。
そうだ…。
もしかしたらこの状況を打開する方法を思いついた。
「そうだ契約だ……。クロウ!契約しよう!!」
契約することで力を取り戻したらもしかしたら
この状況を打開できるかもしれない。
「は!?!?良いのかよ!?」
「僕の意志だよ。無理やりなんかじゃない。早く!」
「わかった。」
僕は目を閉じる。内なる声に耳を傾ける。
「汝、我に従い我が血肉となれ」
唱えた途端、周りの音は聞こえなくなった。
窓から吹く風もピタリと止んだ。
「我、汝の血肉となり汝の道を阻む者、この身を以て
槍となろう」
クロウが僕のあとに唱える。
「「今ここに契を交わさん!」」
少し胸のあたりが温かくなる。
契約完了したのか正直わからない。
漫画のように光るのかと思ったけど何もなかった。
周りのざわめく音と風は再び戻った。
一方クロウは頭を少しだけ押さえていた。
「大丈夫!?」
「あぁ。何ともねぇよ。さて、契約出来たんだ。来いよお前ら!」
クロウは3人を挑発する。
「挑発して大丈夫!?」
「まぁ見てろって。ただ俺様のそばに居とけよ」
「わ、わかった」
クロウは自信有りげにニヤッとする。
その挑発に乗った女の人と赤髪の青年がこちらに襲いかかる。
「自分の存在【思い出せ】」
女の人には腕を掴み、逆の手で赤髪の青年を下から殴った。
器用というか……赤髪の青年可哀想というか……。
物理的じゃん……。
女の人はハッと思い出したようで術が解けた。
「ひでぇ……」
赤髪の青年の殴られた所がとても痛々しい。
「操られるからだろ」
「もっと何かあるだろ!!」
「もう!それどころではないでしょ!?」
緊張感無い……。
でもこれでクロウは力を完全に取り戻したということになるはず……。
「さて……どうするよジジイ。術かけようとしても無駄だが。」
「くっ……いやまだだ!!まだ帰れない!」
ヤンはまだ何かしようとしていた。
しかし……
「燃る籠の中、羽ばたけぬ鳥のように
孤独で朽ち果てろ【灼熱籠】」
赤髪の青年が叫ぶ。
するとヤンの周りが突如発火し、鳥籠のように取り囲んだ。
「も、燃えてる!?」
「安心してくれ…じゃなくて、してください!
火傷しないように加減してます!!」
赤髪の青年は恐らく慣れていないだろう敬語を使う。
本当かな……?
「ヴァンの言う通りただの火の鳥籠だ。火の柵に触らなければ
術にかかることは無い」
クロウは僕の耳のそばで小声で言った。
あの赤髪の青年はヴァンと言うのか。
いかにも火を操ったりツンツン髪からして
ヴァンという名前にぴったりである。
「どうするよジジイ。逃げ場はないっ!!」
「わ、わかったから。降参する」
「だってよクロウ」
「俺様に聞くな。だが罪を裁かれる信用ならねぇな。
逃げ出すやつらなんて多いし」
「だな」
そう言ってヴァンはヤンを連れてどこかに行った。
多分牢屋なのかもしれない……。
使い魔契約してから即終わった一連の騒動。
契約し力を取り戻したからであるが
それとともに異能を持つが故に人々から畏怖される存在で
あることを改めて思った。
ふと、クロウがなぜヤンの精神攻撃が効かなかったのか
疑問に思ったので聞いた。
すると「【自分】という記憶を持っているから」と言った。
何となく屁理屈っぽいなと思ったけどそういうものなんだなと
思うことにした。
下界で住んでいたときに見た漫画やアニメのような
異能を使うものも含めて【理】がそういうものであるから
この天界でもそういう【理】なのであろう。
そもそも異能はどこから来ているのかわからないし。
「エル様!!大丈夫でしたか!?」
シエルが駆け寄る。
「シエル遅い!!!エルを見とけよ……」
「すいません」
「エルも!ただでさえ狙われてるから逃げろよ。
どうせ放っとけなかったとか僕のせいでって言うだろ?
俺様は大丈夫だ。自分を大切にしろ」
「うん……ごめん」
見透かされていた。
まぁ一緒にいたから見透かされるだろう。
「俺様達はここ片付けるから、部屋で今度こそ休んどけよ」
「あ、はい」
手伝うって言おうとしたけど、話を聞いていた女の人も
にっこり笑っていて威圧感を感じたので
大人しく自分の部屋に戻った。
俺様はエルが目覚めたことを王に伝えるため
王の部屋へ向かっていた。
あの頃を思い出す。
エルが天界から消えたいや、消した時を。
あの時は死にたくなるのほどの絶望と緊張感が
エルを襲っていた。
エルの許婚であるヴァニラが蒼の会のせいで
死ぬか助けるかの駆け引きが行われていた。
蒼の会の目的はもちろんエルの力。
天魔である力。
天使であり悪魔でもある彼は両方の側面を持ち合わせていた。
正直何が起こるかわからない。
今は契約関係ではなくとも【友達】としてエルを
守らないといけない。
それが今俺様がやるべき事だから。
王の部屋にたどり着いた。
空気感が重い。
ノックをしてドアを開けた。
「クロウか」
低い声で王が言った。
「えぇ。ルシエル様が目覚めました」
気持ち悪い。毎回毎回エルに対して様をつけるのが
違和感でしかない。
「おぉ!!ルシエルが目覚めたのか!!
報告ご苦労。あと、連れ戻すまで大変であっただろう。
感謝する」
「ありがたきお言葉。それでは私は会議がありますので
失礼します」
さっさとこの部屋を出よう。
ありがたきお言葉なんて言ったが重荷しかない。
感謝されてはならないのだから。
何故なら記憶を隠して天界から消したのは紛れもなく
俺様自身なのだから。
ヴァニラが死んで、エルは絶望の果てに
悪魔に堕る寸前だった。
だから俺様は記憶を隠した。
隠すことで何故絶望したのか忘れる。
更に天界から一時的に逃げる事ができる。
思い出してほしくない。
たとえエルにこの力を使って思い出させて欲しいと
言われたとしても。
~現在・ルシエルside~
「再度に使い魔契約してほしいのです。クロウと」
シエルは面と向かって言った。
「どうして?」
「自動的に消えている契約の影響でクロウの力が
十分に使えないのです。だからあなたを守るために
もう一度契約してほしいのです」
「…クロウはそれを望んでいるの?」
使い魔契約は主から縛られることと同じ。
主の言うことを聞かねばならない運命。
そして周りからも見下される。
力がなくてもそこまでする必要はないと思う。
でも彼に意思があるならば尊重しなければならない。
「クロウはエル様が目覚める前に言いましたよ。
『友として使い魔としてエルを守りたい。そうじゃないと
俺様自身が許せねぇ』と。それと『俺様の我儘だから
無理強いはしないがな』とも言っていました。
まぁ望んでいるようでしたから、話を持ちかけたのですけどね。」
俺様自身が許せねぇか…。何かあったんだろうか過去に。
だけどそれを知るすべはないし、過去を模索するのも
申し訳ない気持ちになるからやめておくけど……
「そう…。わかった。クロウが望むなら。
で、どうやって契約するの?」
「2種類あります。口頭で行う契約と血を使った契約」
「なんだか契約が口頭って弱くない?血は強そうだけど」
「言霊ってご存知ですか?口から出た言葉は
天界にとっては束縛するのに有効である場合があります」
言霊が束縛するのに有効か……
「たかが口約束、されど口約束ってことかな…?」
「そういうことですね。特徴としては口頭契約は1回目の契約や
2回目以降でも同じ人と契約するときに行います。
血の契約は2回目以降違う人と契約する場合。血に関しては
やはり口頭より束縛が強い状態ですね。」
「ということは…クロウと契約する方法は2回目だけど
今回も僕だから口頭ってことでいいのかな?」
「そうです。」
「でも…口頭ってどうするの?全く知らないけど」
「忘れていてもその時なったら自ずとわかると思いますよ。
そんなものです。契約って」
「はぁ……」
自ずと……か。不安しかない。
内なるものが……なんて起こるのかな?
そんなこと考えていると突如廊下がざわつき始めた。
「どうしたのでしょうかね」
そう言ってシエルはドアを少し開けて周りを見渡す。
すると1人の兵士がやってきてシエルに何か話してから
慌ててどこかに走っていった。
「悪魔、おそらく蒼の会がこの城に侵入したようです。
早く逃げましょう!」
シエルは僕の腕をつかんで急いで部屋の外に飛び出す。
「え!?蒼の会が城に!?」
僕のせいなのか…?
蒼の会が来たのは僕が目的だろうから。
僕を殺そうとしているのかそれ以外なのか……
そうなるとクロウは…?
僕だけでなくクロウも危ないのではないだろうか。
そう思ってからいたってもいられずシエルの手を振りほどいた。
「ごめん!クロウが!!」
僕は反対側に駆け出す。
待ってくださいというシエルを無視して走る。
多分会議はまだ終わってない。
確かに僕は狙われている。
だからといって他人を捨て去って良い訳がないのだ。
会議室は何となく覚えているようで兵士の目を
かいくぐるって近くまでたどり着いた。
僕がいても悪魔相手に勝てるかと言われればおそらく無理。
足手まといかもしれないけど……
怖いのだ。失うことが。
近くまで来ると何か異質な気配と大きな物音がする。
悪魔がここにいるのかもしれない。
すると急に会議室のドアと共に何人かが吹き飛ばされる。
「あーあ!クロウが蹴り飛ばすからドア壊れた!」
「お前もだろうが!」
クロウともう一人…赤いツンツン髪の青年が入り口で
言い合いしていた。
あれ…??思ったより大丈夫そう…?
「2人とも何しているのですか!!」
今度は水色の髪の女の人が出てきて2人を叱りだす。
僕は安堵したのか気が緩んだのか力が抜けて膝をついてしまった。
病み上がり…ではないけど1週間まるごと寝た上に
走ったから疲れたのか。
「あ!!エル!!休んどけって言っただろ!!」
クロウに見つかり駆け寄る。
「だって…ね」
と無理やり笑顔を作った。
「悪魔がこの城に来てるんだ。どうして来れたのか
分からねぇ。だが嫌な予感がするから逃げろ。」
「わかってる。でも僕のせいで蒼の会は来てるんだよね?」
「まぁ……だが厳密に言うとお前自身じゃない。力だ。
少なくとも『僕が引きつけるからー』なんて言うなよ?
ただでさえ、お前寝起きだからな?」
ぐぅも言えなかった。
確かに一瞬だけ僕が消えたらいいんじゃないかっていう
考えはあった。
王子という立場を置いといてという話だが。
だけどそれはよく考えてみたら僕が消えることで
クロウも危険な目に合わせることになる。
「だが…もう遅い。」
男の低い声が響き渡る。
「誰だ!!」
クロウは振り返る。
廊下の向こうの方におじいさんがトコトコと歩いてくる。
「また悪魔かよ!しかもジジイ。」
赤髪の青年がやれやれとしている。
「若者、老人を労れと習わなかったか。」
「悪魔に労る必要なし!」
「そうかい。我が名はヤン。蒼の会第7位である。
老人を大切にしない愚か者はこうじゃ」
ヤンは手を伸ばす。
すると女の人と赤髪の青年は急に頭を抑え苦しみだした。
「エル。絶対に俺様のそばにいろ。離れるな。」
クロウはヤンを見ながら言った。
クロウの背中を見ていると頼もしく感じる。
しかし、それは守られているということであり
少し悔しく歯がゆい気持ちになった。
「お前たち王子をお連れしてこい」
ヤンは言い放つ。
すると赤髪の青年と女の人がぼんやりしたあと
こちらに攻撃し始めた。
2人の攻撃をクロウは必死に受け止める。
「おいおいどういうことだ?やめろ!」
「無駄じゃ無駄。にしても金髪は術がかからないのか。」
これは……洗脳なのかな。
クロウはなぜかからないのかわからないけど……。
「2人とも洗脳されているかも」
「だろうな。その言い方じゃ。余計に離れるなよ。
一瞬でも離れたらやつの人形になってると思え」
クロウの近くにいるからヤンの言う術にかからないのか。
クロウはヤンに銃口を向ける。
「いいのか?銃口向けて。こいつら盾になって死ぬぞ?」
ヤンは言い放った。
「チッ。」
これじゃ……退ける事ができない。
しかもこんなに派手に暴れた割に兵士が来ない。
兵士が洗脳されていることもあり得るのか……。
だからギリギリまで気が付かなかった。
そうだ…。
もしかしたらこの状況を打開する方法を思いついた。
「そうだ契約だ……。クロウ!契約しよう!!」
契約することで力を取り戻したらもしかしたら
この状況を打開できるかもしれない。
「は!?!?良いのかよ!?」
「僕の意志だよ。無理やりなんかじゃない。早く!」
「わかった。」
僕は目を閉じる。内なる声に耳を傾ける。
「汝、我に従い我が血肉となれ」
唱えた途端、周りの音は聞こえなくなった。
窓から吹く風もピタリと止んだ。
「我、汝の血肉となり汝の道を阻む者、この身を以て
槍となろう」
クロウが僕のあとに唱える。
「「今ここに契を交わさん!」」
少し胸のあたりが温かくなる。
契約完了したのか正直わからない。
漫画のように光るのかと思ったけど何もなかった。
周りのざわめく音と風は再び戻った。
一方クロウは頭を少しだけ押さえていた。
「大丈夫!?」
「あぁ。何ともねぇよ。さて、契約出来たんだ。来いよお前ら!」
クロウは3人を挑発する。
「挑発して大丈夫!?」
「まぁ見てろって。ただ俺様のそばに居とけよ」
「わ、わかった」
クロウは自信有りげにニヤッとする。
その挑発に乗った女の人と赤髪の青年がこちらに襲いかかる。
「自分の存在【思い出せ】」
女の人には腕を掴み、逆の手で赤髪の青年を下から殴った。
器用というか……赤髪の青年可哀想というか……。
物理的じゃん……。
女の人はハッと思い出したようで術が解けた。
「ひでぇ……」
赤髪の青年の殴られた所がとても痛々しい。
「操られるからだろ」
「もっと何かあるだろ!!」
「もう!それどころではないでしょ!?」
緊張感無い……。
でもこれでクロウは力を完全に取り戻したということになるはず……。
「さて……どうするよジジイ。術かけようとしても無駄だが。」
「くっ……いやまだだ!!まだ帰れない!」
ヤンはまだ何かしようとしていた。
しかし……
「燃る籠の中、羽ばたけぬ鳥のように
孤独で朽ち果てろ【灼熱籠】」
赤髪の青年が叫ぶ。
するとヤンの周りが突如発火し、鳥籠のように取り囲んだ。
「も、燃えてる!?」
「安心してくれ…じゃなくて、してください!
火傷しないように加減してます!!」
赤髪の青年は恐らく慣れていないだろう敬語を使う。
本当かな……?
「ヴァンの言う通りただの火の鳥籠だ。火の柵に触らなければ
術にかかることは無い」
クロウは僕の耳のそばで小声で言った。
あの赤髪の青年はヴァンと言うのか。
いかにも火を操ったりツンツン髪からして
ヴァンという名前にぴったりである。
「どうするよジジイ。逃げ場はないっ!!」
「わ、わかったから。降参する」
「だってよクロウ」
「俺様に聞くな。だが罪を裁かれる信用ならねぇな。
逃げ出すやつらなんて多いし」
「だな」
そう言ってヴァンはヤンを連れてどこかに行った。
多分牢屋なのかもしれない……。
使い魔契約してから即終わった一連の騒動。
契約し力を取り戻したからであるが
それとともに異能を持つが故に人々から畏怖される存在で
あることを改めて思った。
ふと、クロウがなぜヤンの精神攻撃が効かなかったのか
疑問に思ったので聞いた。
すると「【自分】という記憶を持っているから」と言った。
何となく屁理屈っぽいなと思ったけどそういうものなんだなと
思うことにした。
下界で住んでいたときに見た漫画やアニメのような
異能を使うものも含めて【理】がそういうものであるから
この天界でもそういう【理】なのであろう。
そもそも異能はどこから来ているのかわからないし。
「エル様!!大丈夫でしたか!?」
シエルが駆け寄る。
「シエル遅い!!!エルを見とけよ……」
「すいません」
「エルも!ただでさえ狙われてるから逃げろよ。
どうせ放っとけなかったとか僕のせいでって言うだろ?
俺様は大丈夫だ。自分を大切にしろ」
「うん……ごめん」
見透かされていた。
まぁ一緒にいたから見透かされるだろう。
「俺様達はここ片付けるから、部屋で今度こそ休んどけよ」
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