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勅命
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一連の騒動から1週間が経った。
1週間も経てば体力はほとんど回復していた。
警備は一層強化された代わりに心なしかピリピリしている。異能を使われたとはいえ、軍のプライドが傷付けられたに違いない。
ただ、1週間経っても僕の記憶はほぼ戻らなかったので、クロウ達が改めてこの世界の事を教えてくれた。
まず、天界は天使が住む天国と悪魔が住む魔界国と妖精が住む妖精国の3国に分かれるという。天国と魔界国は現在は停戦条約があるが、一触即発の状態である。そして、妖精国は天国と魔界国との中立的立場にあるらしい。
他には【蒼の会】は元は魔界国の軍隊【紫の園】であったらしい。王の政治に反対派と賛成派が分かれた結果、賛成派である【蒼の会】と反対派である【紅の調べ】という組織に分裂したらしい。どうして、【蒼の会】が自分を狙っているのかわからない。いや……そういえば前にクロウが僕自身ではなくて力を狙っているって言ってたような……。でも、僕にそんな力があるのだろうか?
1週間でしたことと言えばクロウは僕に料理を振る舞ってくれた。彼は、料理は得意なんだと微笑んだ。とても美味しかった。
天使や悪魔は食べても食べなくても生命維持には関係ないらしい。だから下界に住んでいたときもお腹が空くという感覚がなかったのかと聞いて納得した。
天界の人にとっては料理するのも食べるのもただの趣味らしいけど、クロウの場合は前世で色々あったらしい。
前世自体覚えてる人はごく僅からしく、彼は記憶の異能上覚えてるらしい。僕は覚えてないし、シエルも覚えてないらしい。
あと気になったことは……夢だ。僕の記憶なのかそれとも単なる夢なのかはっきりしない夢を見た。
崖で真下は海。そんな場所で怪物に襲われて死んだ夢。僕以外に2人いて、守らなきゃって思って犠牲になった。2人は逃げ切れたかどうかは定かではない。血まみれになって倒れた途端、夢から醒めてしまうから。
3日連続で見たので気になってクロウに言ってみたら少し驚いていた。その後「そうか……」とだけ言って後は結局何も言わなかった。何故驚いたのかはわからない。もしかしたらクロウは知っている事かもしれないが、クロウに尋ねるのも躊躇ってしまう。
結局聞けず、ズルズルと引きずってしまった。更に王からの勅命が出たために余計に聞けなかった。
ある日王から話があると言われ僕とクロウは王の元へ歩く。行きに何だろうね?何だろうなという会話を少しした。
そんな他愛も無い話がずっと続けばいいのにと思った。何だか、もやもやするんだ。何故かわからないけれど。
王の間の扉に着いてしまった。きっといい事に違いないと思うことにした。
扉をノックする。「入れ」と言われたので扉を開く。
「息子よ!元気そうで良かった!!」
王が椅子から立ち上がりやってくる。
「う、うん。元気になったよ」
「いやぁ~~良かった良かった!って、クロウよ。そんなに睨まないでいただけるかな?」
横を見ると早く話を進めてくれとばかりに睨んでいるクロウの姿。
「申し訳ありません。ですが、そろそろ本題に入ってほしいのです」
何か彼は急いでいる事があるのだろうか。少し珍しいというか……
「急いでいるように見えるが何か用事っていうものがあるのか?」
「いや、まぁ個人的なことですが」
「まぁよい。そちらの都合もあろう。本題に入る。2人とも
帰ってきて早々になってしまうが、下界に降りてほしい」
「といいますと?」
「任務は【蒼の会】について調べてほしい。どうやら下界に
動きがあるようだ」
「あの、お言葉ですが王よ。ルシエル様はあの組織に狙われているのは
ご存知でしょう?どうして、危険である下界にわざわざ行く必要があるのでしょう?危険を侵す理由をお聞かせ願います」
「クロウが言いたいことは分かる。我が息子を危険に曝したくはない。しかし今、恥ずかしながら人手不足でな。まだごく一部にしか言っていないが大きなイベント事を国をあげて行おうとしていてな。そのせいで、下界に行くことができる者がいない。でも、組織の動向は気になる。だから頼んでいるのだ。下界に降りたらまず【夢園神社】の神主に会うと良い。色々と手助けしてくれるだろう」
夢園神社……。僕が下界にいた時に住んでいた地域にある神社だ。確か、
天界に来る前に井戸に入っていったけど、この神社の敷地だったような。
しかし、なんだか父の言動に引っかかるような。強制的に行かせようとしているような気がする。どうしてかは全くわからないけど。でも、行かないとクロウが更に反論しそうな勢いである。
「わかりました。クロウと共に下界に行きます」
「でも!」
「イベントがあるんだったら怖い事がないようにしなきゃね!」
「流石我が息子!!ありがとう。地下に下界への扉があるからそこから行きなさい。息子よ、祈りは力となるからそれを忘れてはいけないぞ。クロウよ、ルシエルを頼む」
「わかりました。それでは準備をしてきます」
「あぁ頼む」
何か言いたげなクロウを引き連れて部屋から出た。
「どうして行くっていうんだよ。危険なんだぞ?」
「でも、行かないとクロウがまた反論する気がして」
「はぁ……行くって言ってしまったから行くが……」
「あれ、そういえば何か用事あるんじゃなかったっけ?」
「ある。先に準備していてくれ。ちょっと人と会ってくる」
そう言ってクロウは歩いていった。
あれ?そういえばシエルは?シエルは行かないみたいだけどどうしてだろうか?
「ルシエル様」
後ろからシエルの声が聞こえた。ちょうどタイミングがバッチリである。
「ルシエル様下界に行くのですね。王から聞きました」
「シエルは下界に行かないの?」
「行きたかったですが連絡係としてこの場にいなければならないのです」
「そっか……残念。帰ったらお土産話楽しみにしていて!」
「えぇ楽しみにしていますね」
「じゃあね!準備してくる!」
僕はシエルに手を振りながら自分の部屋に戻って行った。
~同時間・?side~
王と灰色の悪魔が話していた。
「どうして下界に行かせたのですか?あの二人」
「息子はクロウのついでだ。クロウの力はこの世界の理そのものだから」
「といいつつ、息子さんが心配なんでしょう?」
「我が息子だからな。クロウと息子が一緒にいて助かったと思う。戦争から遠ざけるために。しかし、いいのか?お前の国と戦争するなんて言い出すなんて」
「別にあそこが故郷なんて思っていません。寧ろ滅ぼしてほしいとも思っていますよ」
「お前に何の恨みがあるのかわからないが、魔界国の情勢を見る限りいつ襲ってきてもおかしくない。争いに終止符を打たなければ、悪魔の連中が息子を狙い続けてしまう」
「そうですね。それでは準備してきます」
「わかった。息子達が出立し次第、第二フェーズに移行する」
灰色の悪魔は部屋から消えた。消えた悪魔はとある場所に行く。大勢の悪魔がそこに立っている。まるでリーダーを待っているように。
「天国が魔界国との戦争を始めるそうだ。我々も次の段階に進む。我が【救世主】の誕生させるために!」
「救世主!救世主……」
悪魔は【救世主】を求めている。鳴り止まないコールがそれを物語っている。この世の全てを破壊する【救世主】を。破壊した世界で【救世主】による悪魔のための世界を創るために。
1週間も経てば体力はほとんど回復していた。
警備は一層強化された代わりに心なしかピリピリしている。異能を使われたとはいえ、軍のプライドが傷付けられたに違いない。
ただ、1週間経っても僕の記憶はほぼ戻らなかったので、クロウ達が改めてこの世界の事を教えてくれた。
まず、天界は天使が住む天国と悪魔が住む魔界国と妖精が住む妖精国の3国に分かれるという。天国と魔界国は現在は停戦条約があるが、一触即発の状態である。そして、妖精国は天国と魔界国との中立的立場にあるらしい。
他には【蒼の会】は元は魔界国の軍隊【紫の園】であったらしい。王の政治に反対派と賛成派が分かれた結果、賛成派である【蒼の会】と反対派である【紅の調べ】という組織に分裂したらしい。どうして、【蒼の会】が自分を狙っているのかわからない。いや……そういえば前にクロウが僕自身ではなくて力を狙っているって言ってたような……。でも、僕にそんな力があるのだろうか?
1週間でしたことと言えばクロウは僕に料理を振る舞ってくれた。彼は、料理は得意なんだと微笑んだ。とても美味しかった。
天使や悪魔は食べても食べなくても生命維持には関係ないらしい。だから下界に住んでいたときもお腹が空くという感覚がなかったのかと聞いて納得した。
天界の人にとっては料理するのも食べるのもただの趣味らしいけど、クロウの場合は前世で色々あったらしい。
前世自体覚えてる人はごく僅からしく、彼は記憶の異能上覚えてるらしい。僕は覚えてないし、シエルも覚えてないらしい。
あと気になったことは……夢だ。僕の記憶なのかそれとも単なる夢なのかはっきりしない夢を見た。
崖で真下は海。そんな場所で怪物に襲われて死んだ夢。僕以外に2人いて、守らなきゃって思って犠牲になった。2人は逃げ切れたかどうかは定かではない。血まみれになって倒れた途端、夢から醒めてしまうから。
3日連続で見たので気になってクロウに言ってみたら少し驚いていた。その後「そうか……」とだけ言って後は結局何も言わなかった。何故驚いたのかはわからない。もしかしたらクロウは知っている事かもしれないが、クロウに尋ねるのも躊躇ってしまう。
結局聞けず、ズルズルと引きずってしまった。更に王からの勅命が出たために余計に聞けなかった。
ある日王から話があると言われ僕とクロウは王の元へ歩く。行きに何だろうね?何だろうなという会話を少しした。
そんな他愛も無い話がずっと続けばいいのにと思った。何だか、もやもやするんだ。何故かわからないけれど。
王の間の扉に着いてしまった。きっといい事に違いないと思うことにした。
扉をノックする。「入れ」と言われたので扉を開く。
「息子よ!元気そうで良かった!!」
王が椅子から立ち上がりやってくる。
「う、うん。元気になったよ」
「いやぁ~~良かった良かった!って、クロウよ。そんなに睨まないでいただけるかな?」
横を見ると早く話を進めてくれとばかりに睨んでいるクロウの姿。
「申し訳ありません。ですが、そろそろ本題に入ってほしいのです」
何か彼は急いでいる事があるのだろうか。少し珍しいというか……
「急いでいるように見えるが何か用事っていうものがあるのか?」
「いや、まぁ個人的なことですが」
「まぁよい。そちらの都合もあろう。本題に入る。2人とも
帰ってきて早々になってしまうが、下界に降りてほしい」
「といいますと?」
「任務は【蒼の会】について調べてほしい。どうやら下界に
動きがあるようだ」
「あの、お言葉ですが王よ。ルシエル様はあの組織に狙われているのは
ご存知でしょう?どうして、危険である下界にわざわざ行く必要があるのでしょう?危険を侵す理由をお聞かせ願います」
「クロウが言いたいことは分かる。我が息子を危険に曝したくはない。しかし今、恥ずかしながら人手不足でな。まだごく一部にしか言っていないが大きなイベント事を国をあげて行おうとしていてな。そのせいで、下界に行くことができる者がいない。でも、組織の動向は気になる。だから頼んでいるのだ。下界に降りたらまず【夢園神社】の神主に会うと良い。色々と手助けしてくれるだろう」
夢園神社……。僕が下界にいた時に住んでいた地域にある神社だ。確か、
天界に来る前に井戸に入っていったけど、この神社の敷地だったような。
しかし、なんだか父の言動に引っかかるような。強制的に行かせようとしているような気がする。どうしてかは全くわからないけど。でも、行かないとクロウが更に反論しそうな勢いである。
「わかりました。クロウと共に下界に行きます」
「でも!」
「イベントがあるんだったら怖い事がないようにしなきゃね!」
「流石我が息子!!ありがとう。地下に下界への扉があるからそこから行きなさい。息子よ、祈りは力となるからそれを忘れてはいけないぞ。クロウよ、ルシエルを頼む」
「わかりました。それでは準備をしてきます」
「あぁ頼む」
何か言いたげなクロウを引き連れて部屋から出た。
「どうして行くっていうんだよ。危険なんだぞ?」
「でも、行かないとクロウがまた反論する気がして」
「はぁ……行くって言ってしまったから行くが……」
「あれ、そういえば何か用事あるんじゃなかったっけ?」
「ある。先に準備していてくれ。ちょっと人と会ってくる」
そう言ってクロウは歩いていった。
あれ?そういえばシエルは?シエルは行かないみたいだけどどうしてだろうか?
「ルシエル様」
後ろからシエルの声が聞こえた。ちょうどタイミングがバッチリである。
「ルシエル様下界に行くのですね。王から聞きました」
「シエルは下界に行かないの?」
「行きたかったですが連絡係としてこの場にいなければならないのです」
「そっか……残念。帰ったらお土産話楽しみにしていて!」
「えぇ楽しみにしていますね」
「じゃあね!準備してくる!」
僕はシエルに手を振りながら自分の部屋に戻って行った。
~同時間・?side~
王と灰色の悪魔が話していた。
「どうして下界に行かせたのですか?あの二人」
「息子はクロウのついでだ。クロウの力はこの世界の理そのものだから」
「といいつつ、息子さんが心配なんでしょう?」
「我が息子だからな。クロウと息子が一緒にいて助かったと思う。戦争から遠ざけるために。しかし、いいのか?お前の国と戦争するなんて言い出すなんて」
「別にあそこが故郷なんて思っていません。寧ろ滅ぼしてほしいとも思っていますよ」
「お前に何の恨みがあるのかわからないが、魔界国の情勢を見る限りいつ襲ってきてもおかしくない。争いに終止符を打たなければ、悪魔の連中が息子を狙い続けてしまう」
「そうですね。それでは準備してきます」
「わかった。息子達が出立し次第、第二フェーズに移行する」
灰色の悪魔は部屋から消えた。消えた悪魔はとある場所に行く。大勢の悪魔がそこに立っている。まるでリーダーを待っているように。
「天国が魔界国との戦争を始めるそうだ。我々も次の段階に進む。我が【救世主】の誕生させるために!」
「救世主!救世主……」
悪魔は【救世主】を求めている。鳴り止まないコールがそれを物語っている。この世の全てを破壊する【救世主】を。破壊した世界で【救世主】による悪魔のための世界を創るために。
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