PatchyX-パッチークロス-

磯部ショーヤ

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【第3世:もうひとりの自分】

ドッペルゲンガー(社長視点)

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    気がつくと時間が経っている。なんてことを体験したことはないだろうか。

    ふと時間を確認したときにはもうこんなに時間が経っていたんだと、驚いてしまうあの感覚だ。



 あれからどれぐらいの時間が、月日が、年月が経ったのか。
 
 あの社長室で目が覚めてから幾日、この五人と毎日仕事をして、時には遊びに行ったり、毎日がとても早く感じて時間なんて忘れてしまうぐらい。

 大チャンと一緒に仕事をサボって鈴木に蹴り飛ばされた。

    モチーフに誕生日ケーキをサプライズでプレゼントされて、ケーキの奪い合いで鈴木に蹴り飛ばされた。

    チリ毛と掃除道具を買い出しに行ったきり、寄り道したゲーセンでハマって帰りが遅くなって鈴木に蹴り飛ばされた。

   ポチと一緒に大チャンの私室に潜り込んで、それがバレて鈴木に蹴り飛ばされた。



 ハチャメチャでめちゃくちゃだけど、楽しくて、面白くて、とても、幸せだった。



 時間なんて、



 「これっぽっちも気にならないな」



 毎日が充実していて、毎日がとても楽しくて、毎日が幸せだった。

    そんな気持ちに浸りながら、私はひとり社長室で大好きなス●バのフラペチーノを飲んだ。

 鈴木は私用で会社にいない。
    鬼の居ぬ間になんとやらで、社長である私の目の前にも構わず、来客用のテーブルに脚を上げてぐったり爆睡している大チャン。

 モチーフも食材の買い出しで会社を離れているし、チリ毛はこの建物のどこかで掃除しているだろう。



    こんなに会社が静かなのは久しぶりかもしれない。



 「お、神一郎の寝顔♪盗撮チャーンス」



 そこへ社長室にやってきた居候のポチが寝ている大チャンに気づいて自分のスマホを向ける。
    カシャリという撮影音に大チャンが起きてしまってぶん殴られればまた面白い展開なのにと、ちょっと期待したのだがそれでも大チャンは起きなかった。

 ポチは撮った画像を見ながら満足そうに白目を向いた。
    その笑いながら白目を向く癖は本当に現行犯逮捕ものの気持ち悪さだと毎度思う。こんな気持ち悪いホモに狙われてしまった大チャンは本当に御愁傷様です。



 「……見れば見るほど、鏡のようだねぇ」



 「鏡?」



 私は盗撮した画像を見ながらぽつりと呟いた聞こえるか聞こえないぐらいのポチの言葉が気になり、ちょうど飲み終えたフラペチーノのストローを噛みながらポチに問いかけてみた。

 すると、ポチは撮った画像を私に見せた。そこには高画質で撮られた先程の大チャンの寝顔画像があった。



 「これの何が鏡なの?」



 「これ、髪色が同じなら一哉かずやと瓜二つだろう?」



 「まぁ、双子だからね」



 「第三者から見たらそれだけで済むけど、神一郎本人から見た一哉は鏡のようだと思わない?」



 「鏡、ねぇ…」



 顔も背格好も瓜二つの存在。それは確かに鏡のようかもしれない。

 でも鏡とは違ってその瓜二つの存在は自分の意とは関係なく自我を持って動いている。



 「でも、鏡っていうより…」



 「もうひとりの自分ドッペルゲンガー、とでも言うつもりかい?」



 「ド、ドッペルゲンガーだなんて…!」



 「本当は双子じゃなくて神一郎と一哉はもうひとりの自分ドッペルゲンガー。……そうだったらすごいね」



 「ドッペルゲンガーに会うと死ぬって噂だね。あれは迷信なのかな?」



 「どうして死ぬんだと思う?」



 「え?」



 今、そんなことを聞かれるまでドッペルゲンガーに会うと死ぬ理由なんて考えたことなかった。それはドッペルゲンガーが本当にいるとは思っていないからだ。



 ドッペルゲンガーに会うと死んでしまう理由…。



 言われてみるとどうして死んでしまうんだろう。

 もうひとりの自分に会って驚いて心臓が停まってしまうとか、俺が本物だ!みたいに二人で本物争いをして殺し合うとか…、…色々考えてしまうけどどれもこれも現実味がない。



 「ポチは…どうしてだと思う?」



 「ボク?ボクは~…ひとつになるんだと思う」



 「ひとつに…?」



 「うん。ドッペルゲンガーって性格から頭脳も運動能力も、DNAまで同じ全くの瓜二つの"もうひとりの自分"なんだよ?てことはだよ、神一郎を狙う男がふたりってことでしょ?」



 「たとえ自分相手でも恋敵は嫌?」



 「うん、邪魔だね~。…でも、考えてみて。自分と同じなんだから殺すにしても完全にボクの心は読まれてるし、戦っても能力が同じだから勝敗はつかない。…そこらへんの恋敵なんかより一番厄介な存在だよ」



 「確かに…言われてみると」



 「だから、逆に考えてみようと思ってね」



 「え?」



 「勝敗がつかないから離すことも、捨てることも、殺すこともできない。ならば、その逆にすればいいと思わない?」



 「近づけて、拾って、生かす?」



 「そう、要は『手に入れる』んだ。もうひとりの自分を。ふたりでひとつになるんだよ」



 「ふたりでひとつって…。ちょっと、それはなんか…気味が悪い…」



 「ひとつになるから能力は二人分で二倍。その代わり片方はいなくなる。つまり、片方は"死ぬ"ということ。だから、ドッペルゲンガーに会うと死ぬなんて噂があるんじゃないかい?」



 そう活き々と語るポチの目はなんだか気持ち悪くて、…いや、ポチはいつも気持ち悪いんだけど、そのいつもの愛嬌のある気持ち悪さではなく、



    …そう、さっき言ったみたいな『気味が悪い』感じで…。



 「長々とお喋りしすぎたね社長。…そろそろ聞いてもいいかな?」



 「何を?」
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