PatchyX-パッチークロス-

磯部ショーヤ

文字の大きさ
22 / 27
【第5世:綾小路照光の行方】

赤木黒一の苦手なもの(チリ毛視点)

しおりを挟む
 「…危機一髪といったところでしょうか…」



 マルジェラが爆破された自分らの知っている面影のなくなった会社を見上げながらポツリと呟いた。
 その隣で社長はマルジェラに手を引かれて、自分の会社から目を逸らしている。きっと悲しかったり、怖かったり、いろいろな感情に苛まれているのだろう。



 「…早くブラッド博士の所に行きましょう。赤木さん、案内をお願いします」



 今からマルジェラと社長と俺たち三人は、ブラッド博士の所に行かなければいけない。

 本来なら、あんな所に………いや、正確にはあの人に会いたくないのだが、こうなってしまった以上、頼らざるを得ない。



 「ブラッド博士って誰なの?」



 道中、社長が俺たち二人の顔を見つめながら聞いてくる。
 その質問に俺は答えたくなくて、グッと言葉に詰まった。

 その俺の反応を見たマルジェラは、やれやれと肩をすくめて、俺の代わりに説明を始めた。



 「ブラッド・ウッド博士といって、僕たちがの医療と科学を担当していた 人です。とても切れ者で、頭が良すぎて、良く言えば天才、悪く言えばぶっ飛んだ人ですね…」



 「ぶっ飛んだ………」



 その言葉に耐えかねた俺は、ついに口を挟んでしまった。



 「ぶっ飛んだどころか、あの人は狂ってるよ。あれが父親なんて、恥ずかしくて言えたもんじゃないよ」



 「そっか、ブラッド博士はチリ毛のお父さんなんだね」



 社長にそう言われて、流れで父親だと喋ってしまったことに気づいてハッと口を塞ぐも、マルジェラにはまた肩をすくめられ、俺は顔を赤らめてしまった。

 そして、マルジェラは肩をすくめたまま、そのまま言葉を紡いだ。



 「しかしまあ、ブラッド・ウッドなんてダサイ名前つけたもんですよね。ブラッドは血、血は赤い。そして、ウッドは木…………、つまり、ブラッドウッドでですもんね。ね?そうでしたよね、ご子息の赤木黒一くん?」



 「こっちを見るな」



 そんな恥ずかしいネーミングセンスの男に今から会いに行く、…しかも助けを求めに行くと思うと、あの変人がニヤニヤと笑いながら、俺たちの失態を罵る姿が手に取るようにわかって、向かう足取りも重くなる。



 「最悪だよ。こんな事態にさえならなければ、あんなキチガイに二度と会うつもりもなかったのに」



 『お父様にそんな酷いこと言うもんじゃないよ~、ブラックワン~』



 ブラックワン。



 突然聞こえたその呼び名と声は、俺が二度と聞きたくないと思っていた声で、その声は社長の右手首から聞こえてきた。

 もしやと思い、社長の右袖をまくると、社長の右手首にはめられた黒いブレスレットからその声は聞こえていたのだった。



 ただのお飾りのブレスレットではないそれは、社長の両手首にブレスレット、両足にアンクレット、そして首にチョーカーとして5ヶ所に付いている。
 そのブレスレットはひとつひとつ機械仕掛けになっていて、スピーカー用の小さく空いた穴から俺の聞きたくない声が聞こえてきたのだった。



 「まさかこのに通信機能があったとはね…」



 その『』という単語に社長は少し反応して眉間を寄せたのが俺の視界の済で確認できた。
 その反応で俺は自分の失言に気づいたが、あえて気付かないふりをしてこの場をやりすごそうとしたが、もちろん失言に気づいていたマルジェラが社長の後ろからものすごい圧で俺を威圧してくる。

 後で社長のいないときに小言を言われるに違いない…。



 「それにしても『黒一』をブラックワンなんて気持ち悪い呼び方しないてくれよ、



 その通信機の声の主は、俺の苦手な父親の声で、こいつが先程の話でブラック博士と呼ばれていた男だ。



 『いいじゃないか、コードネームみたいで♪』



 「嫌だよ。…それより、なんでこのブレスレットに通信機能なんてあるのさ。今まで知らなかったよ」



 『いやいや、社長がつけてるその五個の機械は、通信機能だけじゃないんだよ?他にもGPSや天気予報、時間、万歩計、さらに社長のBPMや体脂肪率、社長のいろんな体調の変化がわかるようになっていて………』



 「健康器具かよ…」



 『そんなことより、君たちは時間が一分でも惜しいんじゃないのかい?聞かせてもらったよ、ブレスレット越しにね。………五等爵が来たんだろ?』



 そう親父に言われて、俺とマルジェラはお互い顔を見合わせ、我に帰ったように勢い良く社長の手首を掴んで自分の口元に寄せた。



 「そうなんだよね!社長は殺されかけるわ、会社は爆破されるわ、綾小路は俺たちを庇って………!」



 そこまで発すると、続きの言葉は口ごもるしかなかった。



 「『とにかく話は屋敷で聞くから付いてきなさい』」




 その親父の声は、ブレスレットからと俺たちの真後ろの両方から聞こえた。

 振り向くと、髪を真ん中から白と黒で分け、白の部分だけを長く伸ばした奇抜な髪型をした丸眼鏡の男がいた。

 男は俺と目が合うなりニヤニヤと笑いだして、その笑みがまた俺の背中を逆撫でしてくる感覚に襲わせる。



 俺はやっぱりこの男が、親父が、苦手だ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。 目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。 「あなたは、どなたですか?」 その一言に、彼の瞳は壊れた。 けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。 セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。 優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。 ――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。 一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。 記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。 これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

私たちの離婚幸福論

桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

処理中です...