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【第5世:綾小路照光の行方】
俺様タイプ(社長視点)
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「我が家だと思ってゆっくりしてね、社長くん」
ブラッド博士の屋敷に来た私を『社長くん』と呼びながらテーブルに人数分の紅茶を運んできたこの丸眼鏡の白衣の男はチリ毛の父親らしい。
チリ毛とは程遠いストレートな髪質で、横にいるチリ毛と見比べても、チリ毛はあまり父親とは似ていないらしい。
「社長、あまり俺をじろじろ見ないでくれるかな?俺は母親似なの」
私の思っていることを見透かされたのか、それともバレバレだったのか、やれやれと肩をすくめながら話すチリ毛から、私は申し訳なくなってしまってあからさまに目を逸らした。
その私の反応にチリ毛の父親、ブラッド博士は面白かったのか、私のことをニヤニヤと笑いながらなめ回すように全身を見つめてくる。
「その反応といい、その身体といい、……うん、うん、いいね~いいね~…」
ブラッド博士は見るだけでは飽き足らず、今度は近づいてきて私の身体にベタベタと触れてきた。
今後、この人が私たちを助けてくれるのかもしれないけれど、…この人、ちょっと気持ち悪い…。そう感じてしまった。
「ちょっと!社長にベタベタ触るんじゃないよ!」
「いいじゃないか、久々に会ったんだ。何年ぶりかな?いやぁ、変わったもんだねぇ~」
あまりに大胆に触ってくるブラッド博士をチリ毛が静止してくれたが、懲りずに私に手を伸ばしてくるブラッド博士から、私は今すぐ走って逃げたい衝動に駆られる。
「久しぶりも何も、私は貴方を知らない!だから、近寄らないでほしい!」
耐えかねた私がブラッド博士にそう言うと、博士は一瞬キョトンとした顔になって、すぐ状況を把握したように手のひらに拳を当てて「あーー、そうだった、そうだったねぇ」と自分だけ納得していた。
「君たちは社長には秘密にしていたんだっけ?社長の記憶のこと」
「ちょ、ちょっと…、ブラッド博士!」
あまりにボロボロと_饒舌に話すブラッド博士にモチーフが止めに入ったが、ブラッド博士はお構いなく話し続ける。
「いやいや、もう遅いでしょ。五等爵にまで社長の存在がバレて、あのバイカウント…ビスコとも対峙してるんだ。社長に隠して事を収めるのはもう無理があるよ」
「そうかも知れませんが、公爵の許可無しにこの話は…!公爵が何て言うか………」
「公爵ぅ?……あぁ、あの初代公爵くん?僕ぅ、あの糸目小僧は好きじゃないんだよね。何考えてるかわかんないっていうかさぁ~。この子の記憶を消すのだって、最初僕は反対だっ……」
「誰が糸目小僧やて?」
ブラッド博士の言葉に重ねてきたのは、この数年ずっと聞いてきた飄々とした京都弁。
ブラッド博士の後ろにいつの間にか屋敷に入ってきた鈴木と大チャンが立っていた。
鈴木は何故か息が荒れていて、飄々と話す大チャンは笑顔を貼り付けてはいるが怖い顔をしていた。
「……………誰の許可得て、その話してるん?Dr.ブラッド」
「…これはこれは、申し訳ありません。元公爵。そして、侯爵様もご一緒でしたか」
ブラッド博士は両手を上げるなり降参のポーズをした後、空いている席に鈴木と大チャンを案内した。
そこに二人が座ると、ブラッド博士は追加で紅茶を持ってきてテーブルに置いた。その紅茶は大チャンの紅茶にだけレモンが二枚浮かんでいる。
ブラッド博士の大チャンへの言葉遣いや好みを把握していることから、ブラッド博士と大チャンの上下関係がハッキリとわかった瞬間だった。
「ブラッド博士より大チャンが偉いんだね」
「せやで~。ボクは公爵やからな。…元、やけど」
「偉い」という言葉に気持ちを良くしたのか、椅子にふんぞり返りながら大チャンは胸を張った。
大チャンをおだてると調子に乗るのはこの数年でわかったことのひとつ。
飄々とした態度とやんわりとした京都弁からそうはあまり見えないが、実は大チャンは典型的な『俺様タイプ』。
自分が何もかも主導権を握りたいし、仕切りたい。思い通りにならないことを嫌う。
しかし、おだてると調子に乗ってドジをするようなよくある俺様タイプと違うところは、ものすごく頭が切れるというところだ。元から頭が良いのもあるが、機転が利いて、判断力がずば抜けている。指導者向きのタイプだ。
このブラッド博士と大チャンの上下関係も、その大チャンの特徴が産んだものだろう。
「ずっと気になってたんだ。その公爵って何なの?五等爵って何者?」
「五等爵ってのは、ボクらの父が建てた会社であるアビリティ・コーポレーション、通称アビコって組織がある。危なくても、すごいことでも、いろ~んな能力や特技を活かせる場所や。五等爵はその幹部五名の総称や。公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の五階級ある」
ブラッド博士の話を自分で止めたわりに、あっさりと私の質問に答えてくれる大チャンはやはり俺様タイプ。きっと他人が話すより自分から話したいのだろう。
これを機に色々聞いておかないとまたいつ気まぐれではぐらかされるかわかったもんじゃない。
だから、今のうちに聞いておこうと思った。
…それを後々後悔することになるとは知らずに。
「さっき会社に来たモチーフにそっくりな人は誰?」
「あれはモチーフの双子の弟で、バイカウントって言うんやで。名前が長いからビスコって略して呼ぶやつもおる。地位は五等爵の第四位で子爵や」
「大チャンも五等爵なの?」
「ボクは初代五等爵。ビスコは二代目。ボクが第一位・公爵。一哉が第二位・侯爵。モチーフィナルが第四位・子爵。黒一が第五位・男爵やったんや」
「?………今、第三位がいなかったけど。えっと、伯爵…だっけ?」
「…当時、伯爵の有力候補は照光やったんや。アビコのみんなが伯爵の座は照光やろうと誰もが思っとった。そこにや…………」
「そこに?」
「世間を騒がせた連続殺人鬼、切り裂きジャックが現れたんや」
「切り裂きジャックって、古い新聞で読んだことある。女性ばかりを狙った連続殺人鬼…だよね」
「…そう。どんな能力でも活かせるのがアビコや。そこに切り裂きジャックが現れた…、五等爵になりたいって言ってな。その後、伯爵の空席を賭けて戦いがあったけど、誰も切り裂きジャックには勝てなかった…。そいつはアビマーやったんや」
「アビマー?」
「アビリティ・マスターのことや。プルチックの感情を極めし者や。基本感情の八つのどれかひとつを極めると、その属性を自分の能力に付与できるんや。…まあ、ゲームで言ったら、武器や防具に魔法をエンチャント(追加)するようなもんやな。……見たほうがわかりやすいやろ。一哉、見せてあげり」
大チャンがそう言って鈴木の方を見ると、鈴木は「仕方ない」と吐いて深呼吸をした。
すると、次第に周りは冷たい冷気に包まれて、ピキピキと歯切れのいい音とともに鈴木の片脚は凍りついて、刃のようなアイススケート用の靴の形に凍りついた。
初めて見る魔法のような現実離れした光景に、私は口が開いてしまうも、私以外は誰も驚いていないところから、このアビマーとやらは彼らにとって何も珍しいものではないらしい。
「切り裂きジャックも鈴木みたいなアビマーだったんだ…。だから、誰も勝てなかったんだね」
「そうや。アビコは精鋭揃いやけど、アビマーは滅多にいない。アビマーってことは、それほど強い感情…つまり、信念や目標、気持ちを抱いてはるんやからな……。その切り裂きジャックは『憎悪』のアビマーやった。…連続殺人鬼が『憎悪』なんかを極めてはるなんてな」
「連続殺人鬼が『憎悪』のアビマーだなんて…。想像しただけでも怖すぎるよ…」
「それから、切り裂きジャックが伯爵の座についたことによって全てが狂いだしたんや」
「すべて?」
「すべてや。……ボクが公爵として築いてきたものすべてや。それが、切り裂きジャックと、そして………ひとりの女のせいで」
「女?」
「早希って名前の女や」
「早希……」
初めて聞いたはずなのに、大チャンからその名前を聞いた瞬間、じんわりと自分の胸が熱くなったような気がした。
切ないような、悲しいような、寂しいような、愛おしいような…。
憎いような……………。
ブラッド博士の屋敷に来た私を『社長くん』と呼びながらテーブルに人数分の紅茶を運んできたこの丸眼鏡の白衣の男はチリ毛の父親らしい。
チリ毛とは程遠いストレートな髪質で、横にいるチリ毛と見比べても、チリ毛はあまり父親とは似ていないらしい。
「社長、あまり俺をじろじろ見ないでくれるかな?俺は母親似なの」
私の思っていることを見透かされたのか、それともバレバレだったのか、やれやれと肩をすくめながら話すチリ毛から、私は申し訳なくなってしまってあからさまに目を逸らした。
その私の反応にチリ毛の父親、ブラッド博士は面白かったのか、私のことをニヤニヤと笑いながらなめ回すように全身を見つめてくる。
「その反応といい、その身体といい、……うん、うん、いいね~いいね~…」
ブラッド博士は見るだけでは飽き足らず、今度は近づいてきて私の身体にベタベタと触れてきた。
今後、この人が私たちを助けてくれるのかもしれないけれど、…この人、ちょっと気持ち悪い…。そう感じてしまった。
「ちょっと!社長にベタベタ触るんじゃないよ!」
「いいじゃないか、久々に会ったんだ。何年ぶりかな?いやぁ、変わったもんだねぇ~」
あまりに大胆に触ってくるブラッド博士をチリ毛が静止してくれたが、懲りずに私に手を伸ばしてくるブラッド博士から、私は今すぐ走って逃げたい衝動に駆られる。
「久しぶりも何も、私は貴方を知らない!だから、近寄らないでほしい!」
耐えかねた私がブラッド博士にそう言うと、博士は一瞬キョトンとした顔になって、すぐ状況を把握したように手のひらに拳を当てて「あーー、そうだった、そうだったねぇ」と自分だけ納得していた。
「君たちは社長には秘密にしていたんだっけ?社長の記憶のこと」
「ちょ、ちょっと…、ブラッド博士!」
あまりにボロボロと_饒舌に話すブラッド博士にモチーフが止めに入ったが、ブラッド博士はお構いなく話し続ける。
「いやいや、もう遅いでしょ。五等爵にまで社長の存在がバレて、あのバイカウント…ビスコとも対峙してるんだ。社長に隠して事を収めるのはもう無理があるよ」
「そうかも知れませんが、公爵の許可無しにこの話は…!公爵が何て言うか………」
「公爵ぅ?……あぁ、あの初代公爵くん?僕ぅ、あの糸目小僧は好きじゃないんだよね。何考えてるかわかんないっていうかさぁ~。この子の記憶を消すのだって、最初僕は反対だっ……」
「誰が糸目小僧やて?」
ブラッド博士の言葉に重ねてきたのは、この数年ずっと聞いてきた飄々とした京都弁。
ブラッド博士の後ろにいつの間にか屋敷に入ってきた鈴木と大チャンが立っていた。
鈴木は何故か息が荒れていて、飄々と話す大チャンは笑顔を貼り付けてはいるが怖い顔をしていた。
「……………誰の許可得て、その話してるん?Dr.ブラッド」
「…これはこれは、申し訳ありません。元公爵。そして、侯爵様もご一緒でしたか」
ブラッド博士は両手を上げるなり降参のポーズをした後、空いている席に鈴木と大チャンを案内した。
そこに二人が座ると、ブラッド博士は追加で紅茶を持ってきてテーブルに置いた。その紅茶は大チャンの紅茶にだけレモンが二枚浮かんでいる。
ブラッド博士の大チャンへの言葉遣いや好みを把握していることから、ブラッド博士と大チャンの上下関係がハッキリとわかった瞬間だった。
「ブラッド博士より大チャンが偉いんだね」
「せやで~。ボクは公爵やからな。…元、やけど」
「偉い」という言葉に気持ちを良くしたのか、椅子にふんぞり返りながら大チャンは胸を張った。
大チャンをおだてると調子に乗るのはこの数年でわかったことのひとつ。
飄々とした態度とやんわりとした京都弁からそうはあまり見えないが、実は大チャンは典型的な『俺様タイプ』。
自分が何もかも主導権を握りたいし、仕切りたい。思い通りにならないことを嫌う。
しかし、おだてると調子に乗ってドジをするようなよくある俺様タイプと違うところは、ものすごく頭が切れるというところだ。元から頭が良いのもあるが、機転が利いて、判断力がずば抜けている。指導者向きのタイプだ。
このブラッド博士と大チャンの上下関係も、その大チャンの特徴が産んだものだろう。
「ずっと気になってたんだ。その公爵って何なの?五等爵って何者?」
「五等爵ってのは、ボクらの父が建てた会社であるアビリティ・コーポレーション、通称アビコって組織がある。危なくても、すごいことでも、いろ~んな能力や特技を活かせる場所や。五等爵はその幹部五名の総称や。公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の五階級ある」
ブラッド博士の話を自分で止めたわりに、あっさりと私の質問に答えてくれる大チャンはやはり俺様タイプ。きっと他人が話すより自分から話したいのだろう。
これを機に色々聞いておかないとまたいつ気まぐれではぐらかされるかわかったもんじゃない。
だから、今のうちに聞いておこうと思った。
…それを後々後悔することになるとは知らずに。
「さっき会社に来たモチーフにそっくりな人は誰?」
「あれはモチーフの双子の弟で、バイカウントって言うんやで。名前が長いからビスコって略して呼ぶやつもおる。地位は五等爵の第四位で子爵や」
「大チャンも五等爵なの?」
「ボクは初代五等爵。ビスコは二代目。ボクが第一位・公爵。一哉が第二位・侯爵。モチーフィナルが第四位・子爵。黒一が第五位・男爵やったんや」
「?………今、第三位がいなかったけど。えっと、伯爵…だっけ?」
「…当時、伯爵の有力候補は照光やったんや。アビコのみんなが伯爵の座は照光やろうと誰もが思っとった。そこにや…………」
「そこに?」
「世間を騒がせた連続殺人鬼、切り裂きジャックが現れたんや」
「切り裂きジャックって、古い新聞で読んだことある。女性ばかりを狙った連続殺人鬼…だよね」
「…そう。どんな能力でも活かせるのがアビコや。そこに切り裂きジャックが現れた…、五等爵になりたいって言ってな。その後、伯爵の空席を賭けて戦いがあったけど、誰も切り裂きジャックには勝てなかった…。そいつはアビマーやったんや」
「アビマー?」
「アビリティ・マスターのことや。プルチックの感情を極めし者や。基本感情の八つのどれかひとつを極めると、その属性を自分の能力に付与できるんや。…まあ、ゲームで言ったら、武器や防具に魔法をエンチャント(追加)するようなもんやな。……見たほうがわかりやすいやろ。一哉、見せてあげり」
大チャンがそう言って鈴木の方を見ると、鈴木は「仕方ない」と吐いて深呼吸をした。
すると、次第に周りは冷たい冷気に包まれて、ピキピキと歯切れのいい音とともに鈴木の片脚は凍りついて、刃のようなアイススケート用の靴の形に凍りついた。
初めて見る魔法のような現実離れした光景に、私は口が開いてしまうも、私以外は誰も驚いていないところから、このアビマーとやらは彼らにとって何も珍しいものではないらしい。
「切り裂きジャックも鈴木みたいなアビマーだったんだ…。だから、誰も勝てなかったんだね」
「そうや。アビコは精鋭揃いやけど、アビマーは滅多にいない。アビマーってことは、それほど強い感情…つまり、信念や目標、気持ちを抱いてはるんやからな……。その切り裂きジャックは『憎悪』のアビマーやった。…連続殺人鬼が『憎悪』なんかを極めてはるなんてな」
「連続殺人鬼が『憎悪』のアビマーだなんて…。想像しただけでも怖すぎるよ…」
「それから、切り裂きジャックが伯爵の座についたことによって全てが狂いだしたんや」
「すべて?」
「すべてや。……ボクが公爵として築いてきたものすべてや。それが、切り裂きジャックと、そして………ひとりの女のせいで」
「女?」
「早希って名前の女や」
「早希……」
初めて聞いたはずなのに、大チャンからその名前を聞いた瞬間、じんわりと自分の胸が熱くなったような気がした。
切ないような、悲しいような、寂しいような、愛おしいような…。
憎いような……………。
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