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第一章 マグメル編 マグメルのダンジョン経営
女神の憂慮
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アプロディーテは寝室を後にし、クリスタルのある大部屋の方へ歩いていく。マグメルがまた後ろからついていく格好だ。
「できるだけ多くの魔素を集めなさい」
足早に歩きながらアプロディーテはマグメルに命令口調で言った。
「この洞窟は一日だいたい二十個の魔素を生成してくれます。『福音』で必要な魔素は最低五個だから、差し引き……」
「当面はちまちまとした『福音』は中止よ」
「中止?」
「そう、中止。今の貴方のやり方では埒があかないわ」
そう言ったきりアプロディーテは黙ってしまった。マグメルはつかつかと自分の前を歩くアプロディーテの足元の異変に目を止める。
アプロディーテの足元には色とりどりの美しい薔薇が咲いていたのだ。アプロディーテの足が地面に触れるたび、そこから次々と新しい薔薇が咲き、足が離れると萎れて消えていく。
「女神様、足元に薔薇が──」
「ああ……私としたことが魔素のコントロールを……」
アプロディーテの足元に咲いていた薔薇がふっと消えた。
「行きましょ」
マグメルは首を傾げながらアプロディーテの後を追いかけた。
大部屋に到着したアプロディーテは左手を前にかざし、手のひらから赤く透き通ったクリスタルを出した。
「貴方も出せるでしょ?」
マグメルは黙って頷き、クリスタルを手のひらに出した。マグメルが出したのは一点の曇りもない無色透明のクリスタルだった。
「貴方のクリスタルには色がないのね。それだけ純粋ということ……そして危うい」
アプロディーテはマグメルの顔を慈悲深い表情で見つめた。
「私を召喚した貴方はすでに私を感じ、私と繋がっているはず。貴方のクリスタルを覗いてみて」
マグメルは手のひらの上に浮かぶクリスタルを覗きこんだ。
クリスタルの中にはアプロディーテの映像のようなものが映っていた。アプロディーテの映像の上にはいくつかの数字が並んでいる。
「これが……召喚した『仲間』ってこのように見えるのか。今まではダンジョンクリスタルに頼っていて、自分のクリスタルを出すことはほとんどありませんでした。へぇ、すごいなぁ」
無邪気な子供のように瞳をキラキラさせながらクリスタルを見つめるマグメル。
「どう、私の維持コストが見えない?」
「維持コストって、この数字ですか? えっと……」
表示されている驚異の維持コストにマグメルの顔はみるみる青ざめていく。
「一日五万個の魔素だなんて……次元が違い過ぎます」
「そう、残念だけど貴方の今の力では私を維持することができない」
「い、維持できないとどうなるのでしょうか?」
アプロディーテは少し間をおいて答えた。
「消滅してしまうの」
「女神様が……そんな……」
マグメルは泣きそうな顔になった。アプロディーテはそんなマグメルの頰をプニプニと指でつつきながら言った。
「でも大丈夫。この洞窟にさえいれば、私は消滅しないみたい」
「え! それは本当ですか?」
「ええ」
笑顔で答えるプロディーテに、マグメルは安堵の表情を浮かべる。
「この大部屋にあるダンジョンクリスタルのおかげ。この恩恵は創造神からダンジョンを持つ者へのご褒美でしょう。ダンジョン所有者はそれだけ有利ということよ。貴方は恵まれているわ」
ダンジョンクリスタル、マグメルのクリスタル、アプロディーテのクリスタルが共鳴し合って、明るく光っている。
「──ただし、私は洞窟の外には一歩も出られない。だからマグメルちゃん、貴方が外に出て魔素を集めて。そしてこの洞窟を強化して強化して強化しまくるのよ、そうすれば絶対に負けないわ!」
マグメルはわなわなと肩を震わせながらアプロディーテの手を取る。
「女神様、僕は絶対に女神様を消滅させたりはしない! せっかく僕のところに来てくれたんだ。神様から授かった大切な『仲間』なんだ、絶対に失うものか! 絶対!」
「うふふ。その力強い男の瞳、さっきまでの僕ちゃんはどこに行ったのかしら」
アプロディーテはマグメルの頰を優しく撫でた。
「そしていつか──私を外へ連れだせるようになって」
「はい、必ず!!」
マグメルは顔を真っ赤にしながらも、一人の男としての毅然とした力強い眼差しをアプロディーテに向け続ける。
「あ、でも一つ約束ね。この洞窟汚いから、いつか死ぬほどきれいにするのよ!」
「……はい」
マグメルはカクンと下を向くのであった。そんなマグメルの額にアプロディーテは優しくキスをした。
「私をこの世界へ導いた貴方を全力で愛し、護りぬくことを誓います」
マグメルは額に手を当てると、そのまま硬直してしまった。
「さてとっ、戦の前のなんちゃらよ」
アプロディーテはフワフワと浮いていた魔素を見つけると優しく両手で包み込み、石鹸の泡を吹くかの様に優しく息を吹きかけた。
「〈永遠の湧き水〉」
「〈泡沫の遊宴〉」
「〈薔薇の花弁の精霊召喚〉」
アプロディーテが続けざまに魔法を唱えると、大部屋のクリスタルを中心に透き通った美しい泉が現れ、その水面をクリーム状の白くて細やかな泡が覆いだした。
そして泉の上に赤い風が渦巻くと、そこから赤と白の薔薇の花弁を重ねたドレスを着た女性の精霊が現れた。部屋が一気に心地よい薔薇の香りに包まれる。
花弁の精霊は宙に浮いて楽しそうに舞い踊る。色とりどりの薔薇の花弁がヒラヒラと天井から舞い落ちてくる。
殺風景な洞窟に突如現れた美しいパラダイスにマグメルは目を輝かせる。
アプロディーテは泉に向かって歩きながら、纏っていた細長い帯の様な着衣をスルスルと脱ぎはじめた。
綺麗な形の胸や尻、美しくしなやかな肢体が露わになっていく。マグメルは慌てて後ろを向いた。
「マグメルちゃんも一緒にどう?」
「い、い、いえ、結構ですっ!」
マグメルはそのまま外へ走り去ってしまった。アプロディーテは小首を傾げながら靴を脱ぐ。
「恥ずかしがることないのに」
何も纏わない美の女神はするりと花弁と泡の泉へダイブするのであった。
「できるだけ多くの魔素を集めなさい」
足早に歩きながらアプロディーテはマグメルに命令口調で言った。
「この洞窟は一日だいたい二十個の魔素を生成してくれます。『福音』で必要な魔素は最低五個だから、差し引き……」
「当面はちまちまとした『福音』は中止よ」
「中止?」
「そう、中止。今の貴方のやり方では埒があかないわ」
そう言ったきりアプロディーテは黙ってしまった。マグメルはつかつかと自分の前を歩くアプロディーテの足元の異変に目を止める。
アプロディーテの足元には色とりどりの美しい薔薇が咲いていたのだ。アプロディーテの足が地面に触れるたび、そこから次々と新しい薔薇が咲き、足が離れると萎れて消えていく。
「女神様、足元に薔薇が──」
「ああ……私としたことが魔素のコントロールを……」
アプロディーテの足元に咲いていた薔薇がふっと消えた。
「行きましょ」
マグメルは首を傾げながらアプロディーテの後を追いかけた。
大部屋に到着したアプロディーテは左手を前にかざし、手のひらから赤く透き通ったクリスタルを出した。
「貴方も出せるでしょ?」
マグメルは黙って頷き、クリスタルを手のひらに出した。マグメルが出したのは一点の曇りもない無色透明のクリスタルだった。
「貴方のクリスタルには色がないのね。それだけ純粋ということ……そして危うい」
アプロディーテはマグメルの顔を慈悲深い表情で見つめた。
「私を召喚した貴方はすでに私を感じ、私と繋がっているはず。貴方のクリスタルを覗いてみて」
マグメルは手のひらの上に浮かぶクリスタルを覗きこんだ。
クリスタルの中にはアプロディーテの映像のようなものが映っていた。アプロディーテの映像の上にはいくつかの数字が並んでいる。
「これが……召喚した『仲間』ってこのように見えるのか。今まではダンジョンクリスタルに頼っていて、自分のクリスタルを出すことはほとんどありませんでした。へぇ、すごいなぁ」
無邪気な子供のように瞳をキラキラさせながらクリスタルを見つめるマグメル。
「どう、私の維持コストが見えない?」
「維持コストって、この数字ですか? えっと……」
表示されている驚異の維持コストにマグメルの顔はみるみる青ざめていく。
「一日五万個の魔素だなんて……次元が違い過ぎます」
「そう、残念だけど貴方の今の力では私を維持することができない」
「い、維持できないとどうなるのでしょうか?」
アプロディーテは少し間をおいて答えた。
「消滅してしまうの」
「女神様が……そんな……」
マグメルは泣きそうな顔になった。アプロディーテはそんなマグメルの頰をプニプニと指でつつきながら言った。
「でも大丈夫。この洞窟にさえいれば、私は消滅しないみたい」
「え! それは本当ですか?」
「ええ」
笑顔で答えるプロディーテに、マグメルは安堵の表情を浮かべる。
「この大部屋にあるダンジョンクリスタルのおかげ。この恩恵は創造神からダンジョンを持つ者へのご褒美でしょう。ダンジョン所有者はそれだけ有利ということよ。貴方は恵まれているわ」
ダンジョンクリスタル、マグメルのクリスタル、アプロディーテのクリスタルが共鳴し合って、明るく光っている。
「──ただし、私は洞窟の外には一歩も出られない。だからマグメルちゃん、貴方が外に出て魔素を集めて。そしてこの洞窟を強化して強化して強化しまくるのよ、そうすれば絶対に負けないわ!」
マグメルはわなわなと肩を震わせながらアプロディーテの手を取る。
「女神様、僕は絶対に女神様を消滅させたりはしない! せっかく僕のところに来てくれたんだ。神様から授かった大切な『仲間』なんだ、絶対に失うものか! 絶対!」
「うふふ。その力強い男の瞳、さっきまでの僕ちゃんはどこに行ったのかしら」
アプロディーテはマグメルの頰を優しく撫でた。
「そしていつか──私を外へ連れだせるようになって」
「はい、必ず!!」
マグメルは顔を真っ赤にしながらも、一人の男としての毅然とした力強い眼差しをアプロディーテに向け続ける。
「あ、でも一つ約束ね。この洞窟汚いから、いつか死ぬほどきれいにするのよ!」
「……はい」
マグメルはカクンと下を向くのであった。そんなマグメルの額にアプロディーテは優しくキスをした。
「私をこの世界へ導いた貴方を全力で愛し、護りぬくことを誓います」
マグメルは額に手を当てると、そのまま硬直してしまった。
「さてとっ、戦の前のなんちゃらよ」
アプロディーテはフワフワと浮いていた魔素を見つけると優しく両手で包み込み、石鹸の泡を吹くかの様に優しく息を吹きかけた。
「〈永遠の湧き水〉」
「〈泡沫の遊宴〉」
「〈薔薇の花弁の精霊召喚〉」
アプロディーテが続けざまに魔法を唱えると、大部屋のクリスタルを中心に透き通った美しい泉が現れ、その水面をクリーム状の白くて細やかな泡が覆いだした。
そして泉の上に赤い風が渦巻くと、そこから赤と白の薔薇の花弁を重ねたドレスを着た女性の精霊が現れた。部屋が一気に心地よい薔薇の香りに包まれる。
花弁の精霊は宙に浮いて楽しそうに舞い踊る。色とりどりの薔薇の花弁がヒラヒラと天井から舞い落ちてくる。
殺風景な洞窟に突如現れた美しいパラダイスにマグメルは目を輝かせる。
アプロディーテは泉に向かって歩きながら、纏っていた細長い帯の様な着衣をスルスルと脱ぎはじめた。
綺麗な形の胸や尻、美しくしなやかな肢体が露わになっていく。マグメルは慌てて後ろを向いた。
「マグメルちゃんも一緒にどう?」
「い、い、いえ、結構ですっ!」
マグメルはそのまま外へ走り去ってしまった。アプロディーテは小首を傾げながら靴を脱ぐ。
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