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第一章 マグメル編 マグメルのダンジョン経営
ダンジョン変動
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マグメルとアプロディーテは神妙な面持ちで大部屋のクリスタルを眺め、『慈悲』の時を待っていた。『慈悲』は日の出と同時に授かることができるのだが、二人はまだ日が昇る前から待ちきれずに起きているのだ。
「──あっ女神様、クリスタルが!」
透明のクリスタルが微かに白く輝き、ゆっくりと明滅し始めた。
「どうやら始まったようね」
クリスタルの明滅の間隔が徐々に短くなっていき、色が紫色に変化していく。マグメルはゴクリと唾をのみこみ、クリスタルを凝視する。
「今回の『慈悲』の結果はすごく重要……緊張するわね」
「はい、心臓がばくばくして飛び出しそうです……」
完全に紫色になったクリスタルは部屋いっぱいに眩ゆい光を放った。目がくらんでしまうほどの強烈な光に二人は目を背ける。
「すごい光! いつもこうなの?」
「いえ、前回の『慈悲』とは色も光の量も違います。こんなに眩しくはなかったと──」
突如、洞窟が地鳴りのような音をたてて揺れだした。天井から次々と小石が落ちてくる。
「地震?」
揺れはさらに大きくなる。二人は立っていられず、地面に手をついた。
「なんて揺れなの」
「地面の下の方で何かが動いてるようです」
大部屋の壁や天井一面に青白い静電気のようなものが生じてバチバチと音をたてている。その静電気のようなものは四方八方に飛び交っていたが、やがて洞窟の出口の方へ向かって流れていった。すると、洞窟の地鳴りと揺れがピタリと止んだのだ。
マグメルはすかさず立ち上がり、クリスタルに触れて洞窟のステータスを確認する。
「これは──」
マグメルは目を大きく見開く。
「女神様、洞窟が大きくなったようです!」
「それって大当たりじゃない!」
アプロディーテはマグメルの首に手を回し、ハグをして喜んだ。マグメルは顔から湯気が出そうなほど真っ赤になる。
「マグメルちゃん、素晴らしいわ! それは『空間』の恩恵よ!」
「女神様、あの……すみません、ちょっと近すぎて、その……」
「あら、ごめんなさい。嬉しくって、つい……」
アプロディーテは残念そうにマグメルの首にからめていた手を離す。マグメルはゴホンと咳払いをすると、もう一度クリスタルを覗き込んだ。
「どうやら、この下にもう一つの階層ができたようです。ここが二階になったと言ったほうがわかりやすいでしょうか」
「下の階層はどうなっているのかしら。マグメルちゃんはそのクリスタルでわかるのでしょ?」
「はい、これでもわかるのですが、直接行って確かめてみましょう。僕らのいる階層も変わっているようです。女神様、こちらへ──」
マグメルはそう言うと、洞窟の入り口の方へ歩き出した。
大部屋を出るとすぐ右手に部屋のような空間ができていた。アプロディーテは〈魔素変換魔法〉の魔法を唱える。アプロディーテのクリスタルには既に魔素が蓄えられているのだ。
細かい光の粒子となった魔素が照らし出した空間──それは洞窟には似つかわしくない大理石でしつらえられた豪華絢爛な部屋だった。
その部屋の四隅には、それぞれ姿の異なる騎士の彫像が立っていた。今にも動き出しそうなほど精巧に模られた屈強な男性と女性の騎士像。四体は部屋の中央に向けて凛々しく剣をかざしていて、その先には大理石の楕円型のテーブル、背もたれの高い椅子が五脚置かれていた。
「ここは新しい部屋のようね。今までの部屋とは違って床や壁が美しい大理石でできているわ。おまけにテーブルや椅子、彫刻まである」
「うわぁほんとだ、これは立派ですね。見てください、この床……隙間がほとんどないぐらいきれいに大理石が敷き詰められていますよ」
二人は嬉しそうに部屋を見て回った。まるで新婚夫婦の家探しのようだ。
「この部屋、女神様の部屋として使ってください。今まで大部屋を使ってらっしゃったので……」
「ええ、そうさせてもらうわ! ありがとう、マグメルちゃん」
二人は大理石の部屋を出て、今度は洞窟の出口の方へ向かった。
「あら、出口がないわ。行き止まり──」
洞窟の出口があるはずの場所が壁になっていた。脇にマグメルの腰の高さぐらいの台座が置かれていて、その上を緑色のクリスタルが浮かんでいる。
「これが下の階層へ降りる装置のようです」
「これはワープクリスタルだわ。直接下へ降りるのではないということね」
「そのようです」
マグメルは緑のクリスタルに触れる。
「ん? これは……そういうことか、なるほど」
マグメルは笑顔を浮かべる。
「どうしたの?」
「女神様、見ていてください」
緑のクリスタルがうっすらと輝いた。すると、二人の目の前にあった壁がすっと消えてしまったのだ。そこには朝日に輝く美しい早朝の森林が広がっていた。アプロディーテは口元を手で覆う。
「この外の風景……今までと同じ、ということは……」
「そうです。ここは今までと同じ洞窟の出口です。ただ壁ができただけです」
「このワープクリスタルで自由に壁を出したり消したりできるのね」
「はい、これは便利ですね。僕と女神様は自由に出入りできるように設定しておきます」
「部外者は入れないわけか。私たちが出入りしているところを見られない限り、外部からは気づかれもしない。確かにこれは便利だわ」
マグメルは誇らしげな顔で頷いた。そんな自信ありげな表情を浮かべているマグメルを見て、アプロディーテは思い出したように「あっ」と声を出した。
「マグメルちゃん、今気づいたのだけど、貴方の寝室にある窓のような穴。あれは外から気づかれないのかしら?」
「あ、あれはもう確認してあります。外からはいくら探してもそれらしきものは見つかりませんでした。外から見ると、ただの岩肌にしか見えません」
「そう、それは良かった。この洞窟の中は異空間ということで間違いなさそうね」
「異空間? つまり別の世界ということですか?」
「そういうこと。今のところ出入口はここだけみたいだけど、下の階層でも調べておく必要があるわね」
「はい、下の階層に行ってみましょう。それにしても女神様、洞窟の入り口での景色を眺めながらの食事、なくならなくてよかったですね!」
「そうね! 外の空気が吸えるところに行かないと、息が詰まっちゃうもの」
アプロディーテは外から吹き込んでくる新鮮な空気を美味しそうに吸った。
「さて、女神様。行きますよ。クリスタルに手を」
二人がワープクリスタルに手を触れると、クリスタルは緑色の光を放って二人を瞬時にかき消した。
「──あっ女神様、クリスタルが!」
透明のクリスタルが微かに白く輝き、ゆっくりと明滅し始めた。
「どうやら始まったようね」
クリスタルの明滅の間隔が徐々に短くなっていき、色が紫色に変化していく。マグメルはゴクリと唾をのみこみ、クリスタルを凝視する。
「今回の『慈悲』の結果はすごく重要……緊張するわね」
「はい、心臓がばくばくして飛び出しそうです……」
完全に紫色になったクリスタルは部屋いっぱいに眩ゆい光を放った。目がくらんでしまうほどの強烈な光に二人は目を背ける。
「すごい光! いつもこうなの?」
「いえ、前回の『慈悲』とは色も光の量も違います。こんなに眩しくはなかったと──」
突如、洞窟が地鳴りのような音をたてて揺れだした。天井から次々と小石が落ちてくる。
「地震?」
揺れはさらに大きくなる。二人は立っていられず、地面に手をついた。
「なんて揺れなの」
「地面の下の方で何かが動いてるようです」
大部屋の壁や天井一面に青白い静電気のようなものが生じてバチバチと音をたてている。その静電気のようなものは四方八方に飛び交っていたが、やがて洞窟の出口の方へ向かって流れていった。すると、洞窟の地鳴りと揺れがピタリと止んだのだ。
マグメルはすかさず立ち上がり、クリスタルに触れて洞窟のステータスを確認する。
「これは──」
マグメルは目を大きく見開く。
「女神様、洞窟が大きくなったようです!」
「それって大当たりじゃない!」
アプロディーテはマグメルの首に手を回し、ハグをして喜んだ。マグメルは顔から湯気が出そうなほど真っ赤になる。
「マグメルちゃん、素晴らしいわ! それは『空間』の恩恵よ!」
「女神様、あの……すみません、ちょっと近すぎて、その……」
「あら、ごめんなさい。嬉しくって、つい……」
アプロディーテは残念そうにマグメルの首にからめていた手を離す。マグメルはゴホンと咳払いをすると、もう一度クリスタルを覗き込んだ。
「どうやら、この下にもう一つの階層ができたようです。ここが二階になったと言ったほうがわかりやすいでしょうか」
「下の階層はどうなっているのかしら。マグメルちゃんはそのクリスタルでわかるのでしょ?」
「はい、これでもわかるのですが、直接行って確かめてみましょう。僕らのいる階層も変わっているようです。女神様、こちらへ──」
マグメルはそう言うと、洞窟の入り口の方へ歩き出した。
大部屋を出るとすぐ右手に部屋のような空間ができていた。アプロディーテは〈魔素変換魔法〉の魔法を唱える。アプロディーテのクリスタルには既に魔素が蓄えられているのだ。
細かい光の粒子となった魔素が照らし出した空間──それは洞窟には似つかわしくない大理石でしつらえられた豪華絢爛な部屋だった。
その部屋の四隅には、それぞれ姿の異なる騎士の彫像が立っていた。今にも動き出しそうなほど精巧に模られた屈強な男性と女性の騎士像。四体は部屋の中央に向けて凛々しく剣をかざしていて、その先には大理石の楕円型のテーブル、背もたれの高い椅子が五脚置かれていた。
「ここは新しい部屋のようね。今までの部屋とは違って床や壁が美しい大理石でできているわ。おまけにテーブルや椅子、彫刻まである」
「うわぁほんとだ、これは立派ですね。見てください、この床……隙間がほとんどないぐらいきれいに大理石が敷き詰められていますよ」
二人は嬉しそうに部屋を見て回った。まるで新婚夫婦の家探しのようだ。
「この部屋、女神様の部屋として使ってください。今まで大部屋を使ってらっしゃったので……」
「ええ、そうさせてもらうわ! ありがとう、マグメルちゃん」
二人は大理石の部屋を出て、今度は洞窟の出口の方へ向かった。
「あら、出口がないわ。行き止まり──」
洞窟の出口があるはずの場所が壁になっていた。脇にマグメルの腰の高さぐらいの台座が置かれていて、その上を緑色のクリスタルが浮かんでいる。
「これが下の階層へ降りる装置のようです」
「これはワープクリスタルだわ。直接下へ降りるのではないということね」
「そのようです」
マグメルは緑のクリスタルに触れる。
「ん? これは……そういうことか、なるほど」
マグメルは笑顔を浮かべる。
「どうしたの?」
「女神様、見ていてください」
緑のクリスタルがうっすらと輝いた。すると、二人の目の前にあった壁がすっと消えてしまったのだ。そこには朝日に輝く美しい早朝の森林が広がっていた。アプロディーテは口元を手で覆う。
「この外の風景……今までと同じ、ということは……」
「そうです。ここは今までと同じ洞窟の出口です。ただ壁ができただけです」
「このワープクリスタルで自由に壁を出したり消したりできるのね」
「はい、これは便利ですね。僕と女神様は自由に出入りできるように設定しておきます」
「部外者は入れないわけか。私たちが出入りしているところを見られない限り、外部からは気づかれもしない。確かにこれは便利だわ」
マグメルは誇らしげな顔で頷いた。そんな自信ありげな表情を浮かべているマグメルを見て、アプロディーテは思い出したように「あっ」と声を出した。
「マグメルちゃん、今気づいたのだけど、貴方の寝室にある窓のような穴。あれは外から気づかれないのかしら?」
「あ、あれはもう確認してあります。外からはいくら探してもそれらしきものは見つかりませんでした。外から見ると、ただの岩肌にしか見えません」
「そう、それは良かった。この洞窟の中は異空間ということで間違いなさそうね」
「異空間? つまり別の世界ということですか?」
「そういうこと。今のところ出入口はここだけみたいだけど、下の階層でも調べておく必要があるわね」
「はい、下の階層に行ってみましょう。それにしても女神様、洞窟の入り口での景色を眺めながらの食事、なくならなくてよかったですね!」
「そうね! 外の空気が吸えるところに行かないと、息が詰まっちゃうもの」
アプロディーテは外から吹き込んでくる新鮮な空気を美味しそうに吸った。
「さて、女神様。行きますよ。クリスタルに手を」
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