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訓練
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''救世主''と呼ばれている俺達は、無駄に広く、豪華な食堂で何処ぞの高級ホテルだと皆が目を輝かせるような朝食を取った。
異世界であるこの国と、地球の食事がどのように違うかまた、口に合うか等と不安はあったものの、不思議なことに食材などの物は地球と全く同じであった為安心できた。
こんな時にでも、思考の余地を設ける食事は、人間にとってどれほど大事なものなのか改めて実感出来る。
「さて、皆様には今日から訓練を行ってもらいたい」
そう言うのはこの国の国王だ。
どういう訳だが朝、突然現れて自己紹介をして以来、訓練の為に来た訓練所にまで着いてきているのだ。
「訓練って、私達は戦いなんてしたことありません! 」
委員長がそう言う。
「分かっておる。その辺の事はこいつに任せろ」
そう言って後ろに控えていた1人の男を示す。
王国の紋章だろうか、獅子を象った金色のそれが胸の辺りにひとつついている。
剣を腰に携え、体格のいい大男だ。
だが、年齢は若くない。顎に生えた綺麗にとは言えないがある程度整えられた髭と顔の所々にシワが現れている事から容易に推測ができる。
「俺は、この国の騎士団長を務めているラングラスだ。陛下から、貴殿らの指導の命を請け負った。よろしく頼む」
「と、言う事だ。今後は彼に指導して貰ってくれ。では私はもう行く」
国王は、幾分かの兵士と騎士団長を残してその場を立ち去った。
「では、早速訓練を始めたいと思う。だが、貴殿らは戦闘以前に基礎体力を付けてもらう。とりあえず、この訓練所を50周してからだ」
(は、50周? )
俺はその無駄に広い訓練所を見渡す。
その訓練所は、ソウが通っていた高校よりも広い。そんなにグランウドが広い高校では無いものの、それよりも断然広いこの訓練所を50となると、気が遠くなる。
「お、俺達が何故こんな訓練を! 」
「そうだ、俺達がする必要は無い! 」
「私……ムキムキになんてなりたくないわ!」
明らかに1人だけ違う趣旨の批判があるが、殆どのものがこの訓練を受けたくはないようだ。
みな、思い思いに批判の言葉を投げている。
「五月蝿い! 貴様らはこの宮殿で養われている。現に泊まる場所も食事も最高峰を与えたでは無いか! 」
そう言われると返す言葉がないようだ。
現に、最高峰のもてなしを受けているのだから。
だが、かと言ってこの訓練は俺も嫌だ。
ソウは、普段めったに開かない口を開いた。
「だが、俺達はそれを望んでない」
「なんだと? 」
「俺達は、わけも分からずこの地に飛ばされ、具体的な事は聞かされずにもてなしを受けた。と、言うより受けざるを得なかったんだ」
「なにを……陛下から承諾は得たと聞いているが? 」
余裕の表情を浮かべる騎士団長。
ここの時点でソウは既に分かっていた。
もし、自分達が力で反抗して王国側は数で抑え込む気だと。
ここに国王が来たのも、反発が起きることを予想して、その反発に対処しやすいつまり……兵士を集めやすい訓練所で全てを説明したのだり
恐らく、以前も召喚を行った事があるのだろう。
対応が完璧である。
だが、これは全て向こうが勝手に行ったこと。説明も録にされていない。
そんな状況で言い負けるほど、俺は馬鹿ではない。
「なんの承諾だ? 」
「決まっている。魔王討伐及びその為の訓練だ」
「それはおかしいな。俺達は魔王討伐をする必要があることは理解しているが、それを了承した覚えは1度もないぞ」
「な……そんなはず」
俺は、少し狼狽える騎士団長から目線を外し、すぐ側で見ていた王女を見る。
「王女様、俺達は魔王討伐をしなければ元の世界に帰れないとは聞いたが、だからと言って魔王討伐を行うとは一言も言ってないよな? 」
「えぇ、そうですよ。お父様、何を勘違いなさっているのでしょう」
これでハッキリわかった。王女が嘘をついているかは鑑定のスキルでお見通しだ。
この王女は、あちら側の人間ではない。
「だ、だからと言ってもてなしを受けたのだから、対価は払ってもらわねば! 」
「だから、それがおかしい。俺達に選択権は無かったのだ。言われるがままに行動したと言っただろう。俺達は、半ば強制的にここで寝泊まりし、飯を食った」
つまりと、ソウは続ける。
「騙されたんだ。俺達は」
何かを提供する時、あたかもそれが善意かのように振舞っていた。
対価、リスクなどを説明せずにだ。
これは、騙されたと言っても過言ではない。
後ろでは、普段口を開かない俺が饒舌な事に驚きを隠せていない物が多数いるようだが、俺は気に停めなかった。
騎士団長の顔はわかりやすく変化する。
余裕の表情が崩れ、赤く染まる。怒っているのは一目瞭然だ。
なんせ、王国側が俺達を騙したと、侮辱にも等しい言葉をかけられたのだから。
「我ら王国が、たかが平民如きを騙すなんて事をするはずが無い! 身分を弁えろ! 」
「この王国は平民如きに最高のもてなしをするのか。物好きな国もあるものだな」
俺はそう言ってさらに挑発する。
この世界の騎士団長の強さがわからない今、もし戦闘になっても良いように、思考能力を著しく落とすためだ。
人は、怒れば怒るほど冷静な判断が出来なくなると、何かの本で読んだことがある。
異世界であるこの国と、地球の食事がどのように違うかまた、口に合うか等と不安はあったものの、不思議なことに食材などの物は地球と全く同じであった為安心できた。
こんな時にでも、思考の余地を設ける食事は、人間にとってどれほど大事なものなのか改めて実感出来る。
「さて、皆様には今日から訓練を行ってもらいたい」
そう言うのはこの国の国王だ。
どういう訳だが朝、突然現れて自己紹介をして以来、訓練の為に来た訓練所にまで着いてきているのだ。
「訓練って、私達は戦いなんてしたことありません! 」
委員長がそう言う。
「分かっておる。その辺の事はこいつに任せろ」
そう言って後ろに控えていた1人の男を示す。
王国の紋章だろうか、獅子を象った金色のそれが胸の辺りにひとつついている。
剣を腰に携え、体格のいい大男だ。
だが、年齢は若くない。顎に生えた綺麗にとは言えないがある程度整えられた髭と顔の所々にシワが現れている事から容易に推測ができる。
「俺は、この国の騎士団長を務めているラングラスだ。陛下から、貴殿らの指導の命を請け負った。よろしく頼む」
「と、言う事だ。今後は彼に指導して貰ってくれ。では私はもう行く」
国王は、幾分かの兵士と騎士団長を残してその場を立ち去った。
「では、早速訓練を始めたいと思う。だが、貴殿らは戦闘以前に基礎体力を付けてもらう。とりあえず、この訓練所を50周してからだ」
(は、50周? )
俺はその無駄に広い訓練所を見渡す。
その訓練所は、ソウが通っていた高校よりも広い。そんなにグランウドが広い高校では無いものの、それよりも断然広いこの訓練所を50となると、気が遠くなる。
「お、俺達が何故こんな訓練を! 」
「そうだ、俺達がする必要は無い! 」
「私……ムキムキになんてなりたくないわ!」
明らかに1人だけ違う趣旨の批判があるが、殆どのものがこの訓練を受けたくはないようだ。
みな、思い思いに批判の言葉を投げている。
「五月蝿い! 貴様らはこの宮殿で養われている。現に泊まる場所も食事も最高峰を与えたでは無いか! 」
そう言われると返す言葉がないようだ。
現に、最高峰のもてなしを受けているのだから。
だが、かと言ってこの訓練は俺も嫌だ。
ソウは、普段めったに開かない口を開いた。
「だが、俺達はそれを望んでない」
「なんだと? 」
「俺達は、わけも分からずこの地に飛ばされ、具体的な事は聞かされずにもてなしを受けた。と、言うより受けざるを得なかったんだ」
「なにを……陛下から承諾は得たと聞いているが? 」
余裕の表情を浮かべる騎士団長。
ここの時点でソウは既に分かっていた。
もし、自分達が力で反抗して王国側は数で抑え込む気だと。
ここに国王が来たのも、反発が起きることを予想して、その反発に対処しやすいつまり……兵士を集めやすい訓練所で全てを説明したのだり
恐らく、以前も召喚を行った事があるのだろう。
対応が完璧である。
だが、これは全て向こうが勝手に行ったこと。説明も録にされていない。
そんな状況で言い負けるほど、俺は馬鹿ではない。
「なんの承諾だ? 」
「決まっている。魔王討伐及びその為の訓練だ」
「それはおかしいな。俺達は魔王討伐をする必要があることは理解しているが、それを了承した覚えは1度もないぞ」
「な……そんなはず」
俺は、少し狼狽える騎士団長から目線を外し、すぐ側で見ていた王女を見る。
「王女様、俺達は魔王討伐をしなければ元の世界に帰れないとは聞いたが、だからと言って魔王討伐を行うとは一言も言ってないよな? 」
「えぇ、そうですよ。お父様、何を勘違いなさっているのでしょう」
これでハッキリわかった。王女が嘘をついているかは鑑定のスキルでお見通しだ。
この王女は、あちら側の人間ではない。
「だ、だからと言ってもてなしを受けたのだから、対価は払ってもらわねば! 」
「だから、それがおかしい。俺達に選択権は無かったのだ。言われるがままに行動したと言っただろう。俺達は、半ば強制的にここで寝泊まりし、飯を食った」
つまりと、ソウは続ける。
「騙されたんだ。俺達は」
何かを提供する時、あたかもそれが善意かのように振舞っていた。
対価、リスクなどを説明せずにだ。
これは、騙されたと言っても過言ではない。
後ろでは、普段口を開かない俺が饒舌な事に驚きを隠せていない物が多数いるようだが、俺は気に停めなかった。
騎士団長の顔はわかりやすく変化する。
余裕の表情が崩れ、赤く染まる。怒っているのは一目瞭然だ。
なんせ、王国側が俺達を騙したと、侮辱にも等しい言葉をかけられたのだから。
「我ら王国が、たかが平民如きを騙すなんて事をするはずが無い! 身分を弁えろ! 」
「この王国は平民如きに最高のもてなしをするのか。物好きな国もあるものだな」
俺はそう言ってさらに挑発する。
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