いつかまたおなじ空のしたで

S e v

文字の大きさ
6 / 212

6

しおりを挟む


振り向きざまに駆け出した私の目の前には鎧を着た男が3人、1人はミーシャの折れた左腕を掴んでいる。
もう1人は丸いなにか?を持っている、あの丸いのがたぶんサーチャー。
そしてもう1人、1人だけ白い鎧を着て立派な剣を持っている、、たぶんこいつがグレン!
おじさんとおばさんのかたき!
「ほう、しぶとく生きていたか」
黙れグレン、今はお前に用はない!
私はミーシャを助けるんだ!
「リーナ!」
「ミーシャ!!」
その時、私の思いもよらない事がおこった。
ミーシャを捕まえていた男が、ミーシャを離したのだ。
え?罠?
なんでも良い、ミーシャを連れて逃げる!
「ミーシャ!こっち!」
私は走りながらミーシャに両手を伸ばした。
次の瞬間、グレンの剣がミーシャを袈裟斬りにした。
「!!!」
ミーシャにたどり着いた私は崩れ落ちる彼女を支えたる。
「リ、、、ナ、、」
「ミーシャ!ミーシャ!」
「ふむ、気刃も使えるな」
グレンがさも自慢げに剣をくるくると回してみせる。
「グーレーンー!!」
私がつよかったらこんなやつ絶対に野放しにしないのに!
「ん、俺様を知っているのか?」
なんだコイツ、、睨まれてなに嬉しそうに言ってるんだ?、、、
「知らない、、、さっきまでの会話を聞いてただけ」
ミーシャを抱きしめながら私は3人から目を離さない。
「そうか、それなら名乗っておこう!」
誇らしげに地面に剣を突き立ててグレンが言った。
「俺様は勇者グレン!アメリアが誇る勇者の1人だ!この白金の鎧と聖なる剣が俺様の勇者たる証だ!」
だれもそんな事聞いてない。
私はミーシャを抱えるように後ずさりながら睨み続けた。
「リーナ、、」
ミーシャが搾り出すように私を呼ぶ。
「ミーシャ!しゃべったらだめ!すぐ逃げるよ!」
「リーナ、、聞いて、私はもう無理だから、お父さんとお母さんのところにいくから、、」
動かせる右の手だけで私の背中をぽんぽんしながらミーシャが言った。
そんな事言わないでよ、、。
でも、もうだめなのかな?
グレンは「気刃」とか言ってるけど斬撃を剣の長さより遠くに放てるみたいだし、、。
走って逃げても2人とも斬られておしまいなんじゃないの?
ぎゅっと歯を食いしばりながらグレンを睨むけど、もう走る元気も出ないよ、、。
「いやだよ!ミーシャあ、、、」
くたりと私にもたれるミーシャに抱きついて、私もへたりこんでしまった。
「ごめんね、、最後に、、」
私の首筋に口付けるようにミーシャが言う。
「、、、なぁに?」
ミーシャを覗き込んで震えながらきいた。
「私の血を、のんで、、」
「!!」
バンパイヤは血を吸った年齢で成長が止まる。今、血を吸えば私は死ぬまで15歳のままだ。そんな事はどうでもいい。
ミーシャの血を、今ミーシャの血を吸ったらそれこそミーシャは出血多量で確実に死んでしまう。
でも、逃げられなかったら、、
そうしたら2人ともきっと死んでしまう。
ミーシャはそれをわかって言ってるんだ、、
「わかった」
ミーシャはもう話す力も残っていないらしく弱々しく微笑んでうなずいた。
「ふむ、最後の別れはおわったか?」
グレンが茶化すように言う声が耳に入るけど、あんなやつもうどうでもいい。
私はミーシャに微笑み返すとおでことおでこをくっつける。
そして、、
ミーシャの首筋に牙を立てた。
ブツッ、牙が皮膚を貫く音が骨伝導で頭に響く。
そして毛並みを濡らしながら溢れ出す血を吸った。
ミーシャの血はとても甘く、それからあったかかった。
口の端から血がこぼれる。私は齧り付いたミーシャの首筋から噴き出す血を夢中で飲んだ。
ごくごく、ごくごくと、、
心臓の鼓動が速まるのが判る。
身体中が熱くなって幸福感が頭を満たす、、、、
私は最後の一滴まで逃すまいとミーシャの血を啜り続けた。
「!!」
ふいに幸福感と高揚感を飛び越して全身に痛みが走った。
運動をしすぎた次の日の筋肉痛。あれの超レベル高いやばいやつ。
体がきしんで耳鳴りがする、、それを感じながら、私はバンパイヤに覚醒するんだ、、そう感じていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。 それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。 今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。 コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。 日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……? ◆◆◆ 「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」 「紙でしょ? ペーパーって言うし」 「そうだね。正解!」 ◆◆◆ 神としての力は健在。 ちょっと天然でお人好し。 自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中! ◆気まぐれ投稿になります。 お暇潰しにどうぞ♪

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...