いつかまたおなじ空のしたで

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ロドリーと名乗った商人は様々な品物を扱っていた。
それこそ奴隷以外は。
「奴隷はもうからないの?」
私がきくと意外な答えがかえってきた。
「奴隷はいけません。あれは人のする商売ではありませんはい」
「どうしてですか?」
今度はレヴィがつっこむ。
レヴィは自分が商品だったからね、、、。
「えぇ、、奴隷とひと言でいいましても、様々おりますけれど、、、人族の犯罪奴隷などは鉱山労働に就かされたりしますはい」
「ふむふむ」
耳を傾ける私たち。
「ただ、獣人やいわゆる魔族の奴隷ですが、扱いが、、、酷いのですよはい」
「きっとそうですよね、、」
私がついこぼす
「はい、これは私個人の独り言ですが、魔族の彼らも言葉をはなしますでしょう?」
「ええ、そうですわね、、」
トリスも相槌をうつ
「私はね、本当に独り言ですけれども、魔族も同じ人だと思っているんですよはい」
なんだこの人族、、、
「えっ、あのちょっと、、魔族ですよね?」
私は混乱してきた。こんな人族いるの??
「わかりますわかりますはい、ですから私の独り言です、、魔族とはいえそれぞれに家族もあるわけですしはい」
「それは、、、」
ほんとこんな事言う人族は初めてだ、どうなっちゃってるんだろうこの人。
今の世界にこんな人いるの??
私は頭を抱えてうずくまった。レヴィが優しく抱きしめてくれる。
「何か、そう思う出来事でもあったんでしょうか?」
トリスがきいてくれた。
「長くなりますが、、」
前置きをしてロドリーは語り始めた。
「私が夜の森をこわいと言っていた理由もそうなのですけれどはい」
ロドリーが言うにはこうだ。
若い頃、森の中で怪我をした子供を抱えた母親を見つけた。その母親はお金はないが珍しい木の実を持っていて傷薬と交換して欲しいと言う。ロドリーはあやしく思ったが怪我をした子供のためにと木の実と薬を交換し、積荷から他の薬も見本として渡したそうだ。母親は何度も何度も礼を言うと森に帰っていった。
何ヶ月かして同じ森を通った時に前に怪我をしていた子供が待っていて例の木の実をお礼だと言ってくれたのだと言う。ほとんど忘れかけていた出来事だったため前回交換したものも含めて王都に戻ってから調べたところかなりの貴重品だと分かり、ロドリーは定期的にその子供と母親と取り引きをするようになった。
ある時他の商人と馬車2台で森を抜ける事になった。もう1人の商人は護衛を連れており有事の際には任せて欲しいといってきたそうだ。
だが事件は起きた。
森に入ると馬車の隊列が、盗賊に襲われたのだ。
任せろと言った護衛は逃げ出し後ろの馬車の商人は殺された。
盗賊はロドリーがどこかから入手してくる木の実を狙っていたと言う事だった
その日には母子との取り引きの予定はなく、木の実を持っていなかったロドリーは捕まり口を割らなければ殺すと言われた。
その時だった。たくさんの魔族が盗賊に襲いかかり全て倒してしまったというのだ。
凄惨な光景を見てロドリーは気を失ったらしい。
気がついた時ロドリーは藁と木の葉で出来た簡素な寝床に横になっていた。
傍には以前薬をわけた子供と母親が心配そうにみている。
私はどうなったのか?ロドリーが聴くと、2人は全て自分たちのせいだと言う。
なぜだと詰め寄るロドリーに、驚かないでほしい、そう言うと2人はその手につけた腕輪を外した。するとその姿が獣人に変わったのだった。さすがに驚いたロドリーだが何度も取り引きをした中だった事もあり、2人に危険は感じなかったと言う。落ち着いた様子のロドリーを見て、2人は話はじめた。
事件のあらましはロドリーの覚えていた通りだった。
盗賊の襲撃にあい、護衛が逃げだしたために後続の商人は死亡。ロドリーが襲われたのを見て仲間がいてもたってもいられず盗賊を襲った。その後盗賊の死体なと片付けてロドリーと馬車を隠れ里に運んだ、という事だった。
仲間の子供を救ってくれたロドリーには里の皆が感謝していたが、人族と魔族の垣根は越え難い。不思議な腕輪も2つしかなかったため取り引きには2人があたっていたという。
ここまで話してロドリーはひと息入れた。
「こういう事は、私以外でも感じている者もいると思っていますはい」
ない話じゃない、それはわかる、、
「それじゃあどうして森をこわがるの?魔族のみんなに助けてもらったら良いのに」
私の疑問に逆の答えが帰ってきた。
「その逆ですはい、もしまた盗賊の襲撃にあって、助けて貰えたとしても、、里の存在が明らかになっては困るのですはい」
そうか、、恩のある里が人族にバレたら討伐されてしまうかもしれない。だから自分が危ない目には遭えない。ロドリーはそう言ってるんだ。
「わかりました、ロドリーさんは魔族に恩がありますのね?」
トリスが代わって言ってくれた。
レヴィも私の顔を覗き込んで微笑んだ。
「わかった、そういう変わった人がいるのはわかったよ」
ちょっとほっとしている自分をどうしたらいいかわかんなくて、私は乱暴に答えた。
「いえいえ、独り言ですからくれぐれもよろしくおねがいしますはい」
ロドリーは頭をかきながらくれぐれもと繰り返した。
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