いつかまたおなじ空のしたで

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ジェシー。
思いついた名前はジェシーだった。
がばっと起きて私はレヴィを起こす。
「あむぅ、、おはようリーナ、、」
「おはようレヴィ」
お寝坊な私達が宿の馬屋へ行くと店主がちょうど帰るところだった。
トリスがお淑やかに会釈すると、深々と頭を下げて店主は帰って行った。
もちろん私達2人はこっそりみていたわけだけど。
トリスがこいこいと手招きする。
たたたっとかけよって早起きの先生に挨拶する。
「おはようトリス」
「おはようー」
ぶるるっ。
ジェシー、新しい私達の仲間。
「名前ね、ジェシーにしたい」
ふふっと笑ってトリスはうなづく。レヴィも「うんうん」と快諾してくれた。
あとはジェシー本人だ。
「あなたの名前は、今日からジェシー。どう?」
ぶるるっ!
ひとつ身震いして私に頬ずりして顔を舐めてくれた。
よかった。
「ジェシー!よろしくね!」✖️2
私とレヴィの2人に両側から抱きつかれて、ジェシーは後ろ脚立ちに伸び上がり元気に嘶いた。
「あははは!」
ジェシーにぶら下がりながら2人で笑う。
そのあと、私達はジェシーに馬車を引いてもらう事を説明したり撫でたり毛繕いしたりしてから遅い朝ごはんを食べた。
「もう出発する?」
私は気になってた事を聞いてみた。
「そうだな、ロドリーはここまでだろうし、、今日発つことにしよう」
「うん」
私はお茶を飲み干して立ち上がりながらうなづいた。レヴィもすでに支度は出来ている。
ロドリーさんに挨拶したら出発しよう。
ジェシーを連れて馬車屋に行くとロドリーさんがいた。
なんだろ?なにか揉めてるっぽい。 
「ですから!こちらの馬車は点検で車輪の破損が見つかったので新しい車輪に交換したんです!」
「わたしが言っているのは昨日はそんな破損はなかったはずでは?という事ですよ!はい!」
「どうしたの?」
たまらず口をはさむ。
「あ!みなさん、車輪を変えたので値段が上がると言うんですよ!はい、、」
あー、、まだだいじょぶだけど直して、余計にお金とるつもりなのかな??
えげつないな、、、。
「どういたしましょう、、はい、、」
困った困ったという感じのロドリーさん。
「車輪は破損していたのでしょう?それで、そちらのご厚意で新しいものと交換して頂いた。という事ですよね?」
トリスが良い部分だけ切り取って状況説明する。
「はい、その通りです。」
馬車屋はよしよしとばかりに肯定した。
ばかだなートリスにしてやられちゃうのに、、
「では、馬車の代金と新しい車輪、それと修理の作業の代金をお支払いしたらよろしいのですわね?」
「ちょっとトリスさん、それは、、」
ロドリーさんは心中穏やかではない様子だ、、
「はいその通りです!」
馬車屋はやられてしまった
「では契約をお願いいたします、すぐに出発の予定なので準備をしてもよろしいかしら?」
「はいどうぞ!お支払いとご契約はこちらへへ!」
はあ、準備しよう。
「ジェシー!こっち!」
ぶるるっ!
「大丈夫なのですか?、、、」
心配そうにロドリーさんがきいてくる。
「だいじょぶだよ?ちゃんと正規の代金をはらってくるから、トリスは」
「はあ、、?」
ジェシーが馬車を引く準備ができた頃ちょうどトリスが戻って来た。
トリスの後ろには3、4人の男達がそれぞれ荷物を抱えて着いて来ている。
クッション?お布団?あの木箱なに?
男達はそれぞれ無言でいそいそと、荷物を馬車に運び込んだり設置作業をしている。
トリスに見守られながら。いや、トリスに監視?されながら
結果、私達の馬車はというと、、。
骨組みが軽量強化素材の最新の物に換装され。
幌は新品で防水仕様、御者席にはふかふかのクッションが張られ、屋根?ひさし?も付けられて雨でも心配いらなそうだ。
荷台には防虫の特殊加工された内張りが貼られ、ベッドにもなるソファーがセットされている。
さらに内張り天井には布団や荷物の入れられるロフトが付けられ。
そしてもちろん車輪や車軸も新品である。
「ふむ、こんなものか、、」
作業が終わると男達がもどり、代わりに店主が具合わるそうにふらふらと出て来た。
「この度は、お買い上げ、ありがとうございました、、、」
「うむ、契約書のとおりだな、、。この装備ならあの金額で申し分ない、知り合いにも贔屓にするよう事付けておこう」
店主の顔が青ざめる。
「ありがとう、、ございます、、」
それだけ言うと、店主はまたふらふらと奥に戻っていった。
「トリスさん、なにをされたのでしょうか?はい」
ロドリーさんが心配そうにきいてくる。
にこりと笑ってトリスが答える。
「なにって、、足りないと思ったものを付けてもらっただけですわ」
「それは、、」
ロドリーさんがくちごもる。
「もちろん、先程ロドリーさんからお預かりした契約書通り、正規の金額で、ですわよ?」
ロドリーさんがはっとなる
商人が使うには小さい売れ残りの馬車に、少しでも利益を上げようと要らない整備を内緒でした結果がこれだ。
この馬車を作るとなれば、本当にどこかの貴族がお忍びで使う馬車と同等の金額が必要になってしまうだろう。
それを売れ残りに車輪を新品にしただけの代金で買われたら、しかもそれを知り合いにふれてまわるとまで言われたら、、。
ロドリーさんは、私達と本音で語り合って来た事に今まさに感謝していた。
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