いつかまたおなじ空のしたで

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昨日の騒ぎのせいで周りに客が居なかったのが幸いだ。
てゆうか、人族の村でなに自慢げにいってやがりますの？
「険しい道だな」
トリスの言葉もくもる。
「まじ？なんで行きたいの？」
ふつうにきいてみた。
ワドウは決心を固めた風に皮袋をテーブルに置く。
「こいつだ、、、」
「なぁに？それ？」　
ワドウが恭しく袋を開けると中には魔鋼で出来た真四角の箱が入っていた。
ごくりと息をのんで胸元から鍵を出して箱を開ける。
ぱか。
体に力がはいる。
ワドウはすぐに箱を閉じて鍵をかけるといそいそと皮袋にしまい言った。
「こいつは、、、正式な名前はわかんねーけどよぉ、魔封の結晶とか、魔王の宝玉とか言われてるもんでよー、、」
「うん、、」
私は先をうながす。
「勇者って、昔の英雄な？わかるだろ？あいつらが魔王を倒した時によ、魔王の力がこんな赤い玉になって世界中に飛び散ったんだとよ、、」
「魔王のちからが？」
「あーそうらしい、、コレが幾つあるのかは俺もしらねぇ。ただ、魔王が復活した話はきいてるだろ？復活したばっかりの魔王は昔の力は無くってよぉ。飛び散った自分の力を探してるって訳だ」
「そんな話、どこから、、、？」
聞くと、がりがり頭をかきながらワドウは続ける。
「あー、、恥ずかしい話なんだけどよぉ、俺も商人やる前はよー、良くねえ事ばっかりしててなぁ。そん時の腐れ縁っつーか？そいつらから聞いた話をうのみにしてな、探し回ったらほんとにあったってわけよ、、」
「ふむ、、」
トリスが口を挟んできた。
「話が繋がらぬな。その石を復活した魔王に献上する。そういう流れなのは解る」
ワドウはばつがわるそうに目を逸らす。
「そいつぁ、、、」
「対価は、何だ？」
トリスは引かない。
確かにそうだ。お腹以外に人族と見分けのつかないワドウならわざわざ魔族に関わらない生き方だって出来るはずだ。
3人に詰め寄られて観念したのかワドウが打ち明けた。
「あー！！わかったよ！娘がいるんだよ！あいつはよぉ、俺みたいに腹だけじゃねぇ、身体中にウロコがあんだよ！脚にも！腕にも！顔にもなぁ！」
ばんとテーブルに手を置きながら憤るワドウ。
「魔王の力ってのはよぉ、人族を魔族に変えたり、その逆だって出来るっていうじゃねーか！こいつを渡して！娘をちゃんとした人族にしてもらいてぇんだよぉ、、、、」
そんなの出来るの？
トリスをチラ見したけど、腕組みしたまま目を瞑っていて、、ぜんぜん読み取れない。
「魔王城か、、」
無意識に呟いていた。
「ワドウ、ちょっと相談させて」
はっ！と顔をあげるワドウ。
「明日の朝。それまでに一緒に行くか、答えを出すよ」
「お、、おぅ！良い返事を待ってるぜ！」
ワドウの発言を合図に私達は食堂を出て馬車に戻った。
明日からの道中について相談するために。