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ちょっとまって1
しおりを挟む私の放つ気閃と3人の繭で「かつて城」だった辺りの場所はほとんど瓦礫と塵の山と化していた。
最初はたくさんいた兵士も周りには見当たらない。
残るは巨大な礼拝堂だけだ。
「こちらへ」
突然の声に目をこする。
白金の鎧に身を包んだ人族が目の前にいた。
いつの間に!??
「剣を交えるつもりはない。案内しよう」
これだけされて戦わない?
たしかに殺気は感じない。
男は何処へとは言わず背中を向けて歩き出す。
言わずとしれた事か、残った無事な建物なんて礼拝堂しかない。
私達は突然現れた鎧の男について進み、礼拝堂までたどり着いた。
「私はここまでだ」
それだけ言うと私達に背を向けて歩き出した。
「あんたなんなの!?」
鎧の男は答える事なく瓦礫の影に消えていく。
「、、、」
トリスは消えた男は気にせず礼拝堂を睨む。
私とレヴィは頷きあうと扉に手をかけて力を込めた。
すぅーっ。と音もなく扉が開く。
ザワザワと中から大勢の声が聞こえてきた。
礼拝堂の中には貴族らしき装いの人族がひしめき合っていた。
誰かに「ここなら安全」とでも吹き込まれたんだろう。
さっきまで私達を案内していた男とかに。
私達が奥に歩みを進めると「すすすっ」と取り巻くように貴族達が道筋を開ける。
誰だって死にたくはないだろう。
歩くだけで街を瓦礫に変えてしまう魔族が、それも3人も目の前にいるんだから。
祭壇前には「司教」みたいな人族が2人待ち構えていた。
「ここまで破壊してくれるとはな」
1人が言う。もう1人は黙ったままだ。
祭壇の上。普通なら崇める対象の、女神像とか神様っぽい石像みたいのがあるはずの場所には黒い金属っぽい真四角い立方体のなにかが乗っかっている。
「何も変わらぬようだな」
何処からともなく声がする。
いや、違う。
喋っているのは目の前の「立方体」だ。
パカっと「立方体が」開くと中には丸い筒状の水槽っぽいものが姿を現す。
「なに?それ、、?」
私は中に入っているそれを知ってはいたけれど、こんな感じになっているのを見た事はなかった。
「建国の主、か、、」
トリスが呟く。
えっ、、これが?、、「脳みそ」だよね?
「きもちわるいー、、」
レヴィは素直に感想を言う。
私だっておんなしだ。
こんな感じの脳みそは見たことはない、、っていうか、どうやって生きてるの?
「久しいな、ベアトリクス、、」
脳みそが言う。
「随分と見違えたな?だが、貴様にはその容貌が良く似合う」
トリスは嫌味が鋭い。
「クハハ、、言うものよな?」
こいつを倒せば全てが変わる!
私は剣を握る手に力を込める。
さっとトリスとレヴィが下がると同時に私は横薙ぎに気閃を放った。
「ウゥエィッ!」
キシっ!
気閃の巻き添えに撫でられて神官達と取り巻く貴族の半分ほどが血しぶきをあげる。
目の前の「脳みそ」も水槽ごと真っ二つになって中のなんか水みたいなのが礼拝堂の床に流れて貴族達の血を洗い流した。
半分になった「脳みそ」はみるみる赤黒く変色して生き絶えたようだった。
「妾の出る幕はなかったか」
そう言うけれど、トリスは険しい表情を崩していない。
「ほんとに死んだかな?」
ぽつり呟くと、私はちゃんと見てみようと近づいた。
水浸しの床を、ちょっと気持ち悪いなって思いながら歩く。
水槽の前くらいまで近づいてじっと見る。
動かない、、、。
「脳みそ」はちゃんと死んだっぽいのがわかった。
「トリス、ちゃんと死んだみたい!」
私が言うとレヴィもたたたって近づいてきた。
私が2人のもとに戻ろうと1歩踏み出した時だった。
私の足下が淡く光って文字が浮かびあがる。
「くっ!リーナっ!避けろっっ!!」
トリスが叫ぶ。
びっくりした私は濡れた床に足を取られてしまう。
まずい!こけるっ!なんかわかんないけどトリスが焦るなんてこれはやばい事だ!
ばしゃっ!
「リーナ!!」
転びそうな私にレヴィが駆け寄って抱きついて支えてくれた。
足下の文字は魔法陣を描いて私とレヴィを黄色い光で取り囲んだ。
「リーナ!レヴィ!必ず見つける!合図、、、、」
トリスの声が聞こえずらくなる。
私達を囲んだ光が視界を阻む。
なんだかわかんないけど、レヴィだけは離さない!
私は折れちゃうかも?っていうくらいにレヴィを抱きしめて光が収まるのを待った。
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