いつかまたおなじ空のしたで

S e v

文字の大きさ
206 / 212

まだちょっとまって2

しおりを挟む

「ぐぶふぁっ!!」
串刺しにされて盛大に血を吐く私。
上半身は剣が吹き出す炎に焼かれて自分が焦げる臭いが鼻につく。
でも貫かれるのは初めてじゃない。
200年間切り刻まれた私の胆力をなめるな!
どんなに速くてもこの状態なら逃がさない。
私は胸に突き刺さる剣をロジィの腕ごと掴み、にやりと笑うと杖を伸ばして胴切りを放つ。
「ウェイっ!」
咄嗟に離れるロジィ。
くそう!また届かない。てゆうかあれ?なんか今、すごい違和感が、、。
え?!私の手にはロジィの右腕が、肘から先の右腕が掴まれたままだ。
ロジィと手に握られている腕を見返す私。
ロジィには右腕がない!
取れるの!?
突き刺さった剣にはすでに石が嵌っている。これが更なる技術で作られたものなら私すら封印できるはずだ。
ばっと離れて距離をとると刀身を握って剣を引き抜く。
「んっ!ぐぅっ!」
ガシャンと金属音をたててロジィの腕が落ちる。どうなってんの??取れた腕はひっそりとしていて、もう動かないみたい。
「っつっ!」
いてて、、。
聖剣に焼かれた私の巻き添えでせっかく直したお気に入りの上着が台無しだ。
引き抜いた剣を構えながら次元収納からローブを出して羽織る。
たぶんこの剣は「新しい聖剣」だ。
私の魔力を拒んで握られながらも炎を吹き出し続けているし。
まあこれも経験済みだからだいじょぶ。
いちおう石は外しておこう、私でもこの剣で石が作れるか試しておきたい。
「どうなっている?」
ロジィは学者らしき白衣の人族に目をやる。
「い、いえ!更なる改良を施してありその宝玉で封印出来ぬ魔族はおりません!!」
やっぱり新しい剣か。
「ふっ、、。では目の前の「これ」はなんだ?貫かれ、炎に焼かれながら私に反撃してきたが?」
うんうん。封印されてないよ私。
「いえ!そんなはずはありません!いや、一体なぜ!?宝玉が形成された聖剣で傷つけたなら封印出来ないはずはありません!」
どういう事?私は睨を外さず2人のやり取りを見守る。
「ふん。では「これ」は聖剣では封印出来ぬという訳か?ん?」
「いや!お待ちくださいロジィ様!そんなはずは、、、」
言い訳をする間も与えず白衣の男に歩み寄ると徐ろに男の首を掴み床に叩きつけるロジィ。
「ぼへぁ!」
床に叩きつけられた白衣の男はそれきり動かない。
「ウェイッ!」
隙を見逃さず斬りかかる私。
斬撃を全て避けてみせるロジィ。
「くそう!」
「ふん。時間の無駄だな」
ロジィはまるで「お前の技など届かない」とばかりに背中を向けて部屋の奥へと歩いていく。
ロジィが石段にたどり着くと魔法陣が光った。
しまった!「転移魔法」だ!
逃すか!私は未だ炎を吹き出す「新しい聖剣」を握り直して斬りかかる。
「ウェイッ!!」
しかし遅かった。
「転移」の間はどちらの空間からも干渉不可能だ。
私の斬撃は空を斬りぶつかった壁を切り刻む。
「勝負は預けておく」
ぱらり。
かろうじて届いた攻撃で切り取られたロジィのマントの裾が床に落ちる。
「うーっ!もうっ!!」
光の粒を纏って消えて行く敵をなす術なく見送るしかないなんて!
追いかけようにも私の斬撃で石段もろとも魔法陣は粉々だ。
「うーっ!あーっ!」
目の前に居たのにまんまと逃げられた。
切り刻まれて大穴の開いた壁の向こうに見える森に向かって、私はただ叫ぶ事しかできなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。 それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。 今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。 コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。 日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……? ◆◆◆ 「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」 「紙でしょ? ペーパーって言うし」 「そうだね。正解!」 ◆◆◆ 神としての力は健在。 ちょっと天然でお人好し。 自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中! ◆気まぐれ投稿になります。 お暇潰しにどうぞ♪

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...