いつかまたおなじ空のしたで

自分の明日に魅力も必要性も感じない

いつの間にか私は、幼い頃によく訪れた小さな祠の前で膝をついていた。
永らく誰も来ていなかったであろう石造りの祠は落ち葉に埋もれ、苔むしている。
落ち葉を掻き分けると、両手を胸に祈るようにほんの少し俯く女神の像が現れた。
私も昔、同じように両の手を胸に、大なり小なり様々な事を願っていた。
しかし。
私は全て失った。
頼れる者など、最初からいなかったのだ。
背中を預けらる者はいない。
世界には、ありがたみもない。
私の内なる感情に、女神セレスは微笑む。
「良いのです。私の望みは叶わない。それが定め。」
「ですが、あなたの望みを叶えるお手伝いはできます。」
全く、これはどういう事か。
全てに絶望し、信じる心さえ失った私に女神は望みを叶える手伝いをしてくれると言う。
「ふふふ、、」
私は無意識に自らの口角が僅かに上がるのを感じる。
笑ってしまうではないか。
今更必要のない世界で、何が望みだ。
悲しみも、もちろん怒りも湧かない。
ただ「思う」。
「理解」とは、こういう事なのかもしれない。
良いだろう。
存在する。
ただ、存在する。
死ぬ事もなく、しかし生きている訳でもない。
不確かだが、絶対的な、そんな者としてあり続けるのも、この歪な世界ではお似合いではないか。