1 / 11
1
しおりを挟む※シリアスなのは最初だけで、すぐにコメディになって行きます。
__________
腹違いの妹とやらが僕に「是非ともお会いしたい」と、面会を求めていると聞いて――――
なんとなく、了承した。
腹違いの妹は側妃の子で、我が国の第一王女。名前は確か・・・ネレイシア。彼女には双子の兄がいるという。第三王子のネロ。
彼ら双子は癇癪持ちと噂される側妃似の容姿で、長い黒髪にアメジストの瞳をしているというが、幸いなことに二人共その性格は母親には似なかったようで、大人しくて聡明な子だと聞いた。
そして、ネレイシアとネロの二人は母である側妃との仲が上手く行っていない、とも。
そして僕は、父の愛妾の子。第二王子シエロ。
本来なら、僕は庶子として王子と名乗ってはいけない筈だった。
けれど、国王である父の横紙破りにより、僕は第二王子として扱われている……らしい。
父とは、一度も顔を合わせたことは無いけど。
愛妾であった母と、異母弟妹の母である側妃との仲は良かった……ということはない。むしろ、僕がいなければネロが第二王子を名乗れた筈……と、疎まれてすらいる。
僕の乳母とその息子の乳兄弟であるグレンには、「呉々もお気を付けください」と散々言われたけど――――
もしかしたら僕は、母親と上手く行っていないという妹と、傷を舐め合いたいのかもしれない。
母の命と引き代えにして生まれた僕は・・・
❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅❆❅
それから数日が経ち、とうとうやって来た件の妹との面会の日。
先にテーブルに着いて待っていた、妹だと紹介された幼女が、食い入るように僕を見詰め……
長い黒髪、赤く染まった白い頬に潤む紫の瞳、さくらんぼのような半開きの唇で、
『あぁ・・・生シエロたん、しかも無垢なショタバージョン、マジ尊い♥』
と、鼻息を荒くして聞き慣れない意味不明な言葉を、鈴の鳴るような声で小さく呟いた。
その瞬間――――
『俺』の脳裏に、藍色の星夜から暁へと変わるグラデーションの美しい空を背景に、顔のわからない男に後ろから抱き締められている美少年のスチルのパッケージが浮かんだ。
タイトルは確か、【愛に染まる空~ Il ciero si è tinto di amore ~】だった気がする。読み方は……なんだっけ? 【イル・シエロ・スィ・ティント・ディ・アモーレ】……だったかな? 覚えるまで繰り返させられた、イタリア語だかスペイン語辺りの言葉で、まんま【愛に染まる空】というタイトルと同じサブタイトル。
「っ!?」
なんかこう、嫌な、厭な予感がひしひしとして――――唐突に・・・思い出したっ!?!?
『俺』は確か、十九歳の大学生だった。
あの日。姉貴に頼まれて、限定版のゲームを買いにパシらされたんだった。
タイトルは、そう・・・
【愛に染まる空~ Il ciero si è tinto di amore ~】というゲームだっ!?
75
あなたにおすすめの小説
【 完 結 】言祝ぎの聖女
しずもり
ファンタジー
聖女ミーシェは断罪された。
『言祝ぎの聖女』の座を聖女ラヴィーナから不当に奪ったとして、聖女の資格を剥奪され国外追放の罰を受けたのだ。
だが、隣国との国境へ向かう馬車は、同乗していた聖騎士ウィルと共に崖から落ちた。
誤字脱字があると思います。見つけ次第、修正を入れています。
恋愛要素は完結までほぼありませんが、ハッピーエンド予定です。
透明な貴方
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
政略結婚の両親は、私が生まれてから離縁した。
私の名は、マーシャ・フャルム・ククルス。
ククルス公爵家の一人娘。
父ククルス公爵は仕事人間で、殆ど家には帰って来ない。母は既に年下の伯爵と再婚し、伯爵夫人として暮らしているらしい。
複雑な環境で育つマーシャの家庭には、秘密があった。
(カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています)
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
聖女は魔女の濡れ衣を被せられ、魔女裁判に掛けられる。が、しかし──
naturalsoft
ファンタジー
聖女シオンはヒーリング聖王国に遥か昔から仕えて、聖女を輩出しているセイント伯爵家の当代の聖女である。
昔から政治には関与せず、国の結界を張り、周辺地域へ祈りの巡礼を日々行っていた。
そんな中、聖女を擁護するはずの教会から魔女裁判を宣告されたのだった。
そこには教会が腐敗し、邪魔になった聖女を退けて、教会の用意した従順な女を聖女にさせようと画策したのがきっかけだった。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる