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しおりを挟む少しシリアスが入ります。
__________
『毒が入ってるの!』
『は?』
『言い忘れてたけど、この対面こそが、あたし……ネロたんがシエロたんへのメンヘラ化する道の第一歩だから。お茶もお菓子も、絶対に口を付けないで。触っちゃ駄目よ』
『あ、ああ。わかった』
厳しい声と真剣な表情に頷くと、
『側妃と愛妾のごたごたって言えばわかるかしら? 幼少期のエピソードに、シエロたんの毒殺未遂事件があるの。そしてこれはね、ネロたんの母親が、シエロたんに仕掛けたのよ』
ねーちゃんが顔を歪めて、本来のネロルートで起きてしまうことを話す。
ネロの母親が、今日のお茶会で、愛妾の面影を色濃く宿すシエロを害そうとする。けど本当は、仕込んだ毒を飲むのはネロとシエロのどちらでもよくて、シエロの排除を企てている。
そして、この事件をきっかけにして、シエロはネロのことを敵だと思うようになる。第三王子であるネロを、側妃の手先だと勘違いして。
ルートはプレイヤーの選択肢によって、弟か妹(本当はどちらもネロだが)とのお茶会になるらしい。
妹とのお茶会では、妹が毒を飲んでしまい、シエロが妹の毒殺を企んだと疑われてしまう。が、その疑いを晴らそうと、シエロは躍起になって妹を可愛がるようになる。
そして、妹もシエロを慕うようになり、好意を募らせて行く。しかし、妹なんて本当はもういない。この時点では既に、ネレイシアとネロは同一人物。
また、ネロがネロとしてシエロと出会うお茶会のシナリオでは、シエロが毒を飲んでしまう。
ネロは、それが母親がやったことなのだと気付いて顔面蒼白になり、シエロはそんなネロを犯人だと思うようになる。
ネロは、シエロのお見舞いに行くが断られてしまい、それならとネレイシアとしてお見舞いに行くことにして、以降は妹としてシエロと接するようになる。
一人二役で同一人物なのに、シエロは妹ばかりを可愛がり、本物である筈のネロには釣れない態度ばかりを取る。そんな風にされ続けたネロは、やがてシエロに愛されたいと思うあまり、本当のネレイシアになりたいと願うようになり、段々と精神のバランスを崩して行く。
そして、シエロに並々ならぬ愛情を向け――――
というのがネロルートになるらしい。
ねーちゃんがネロとして生まれている時点で、随分と狂ってしまっているが――――
『まぁ、なんつーか……病むわな』
話聞いただけで重くてつらい。
『でしょ? ある意味、両親に興味を持たれなかったネロたんだからこそ、ネレイシアととして可愛がってくれるシエロたんに、精神のバランスを崩すくらい傾倒しちゃったんだと思うわ』
『今更なんだが、ねーちゃんの方は大丈夫なん? なんかこう、ネロのおかんの性格がすっげーキツそうなんだけど? 自分の子が毒飲んでもいいって、信じらんねぇ。本当に母親なのかよ』
『大丈夫大丈夫、いざとなったら姉ちゃん、あのクソアマ牢獄ぶち込んででも止めるから。尊いシエロたんには、指一本触れさせないわ!』
『ねーちゃん。今、自分の母親クソアマ扱いしなかったか?』
『だってマジでクソな性格してんだもん! まぁ、あたしの方でも気を付けたり、邪魔したり、工作は色々と頑張るつもりだけど。アンタも、最低限自分で確り自分の身を守りなさいよ? あたし、また若い身空のアンタの葬式見るのは、絶っ対に嫌よ?』
『わかった。気を付ける』
神妙に頷くと、
『一応、シナリオ通りに気を付けていればある程度は大丈夫そうではあるけど・・・心配だわー。ああもう、本っ当、心の底から心配だわー』
なんかめっちゃ不安そうにされた!
『いや、そんな心配しなくても……』
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