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しおりを挟む「そう、ですか……その、シエロ様はいつそのような特殊な言語の習得をされていたのでしょうか?」
「へ?」
日本語での会話が怪しまれてるようだ。ちなみに、我が国の公用語は日本語ではない。だから尚更、聞いたこともない知らない言語を、身近な子供がいきなり流暢に話し出したら普通に驚くか。
「俺が見ている限り、シエロ様がその耳慣れない言語を話しているところも、勉強している場面も、見たことが無かったものですから」
『ストーカーの片鱗、バッチリ出てるわね♪』
うふふと、グレン(ストーカー予備軍)へとなまあたたかい眼差しを送るねーちゃん。
『・・・マジかっ!?』
「シエロ様? どうされましたか?」
「いや、なんでもない」
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、グレンに引いちまっただけだ。将来ストーカーにならねぇよな、コイツ? と・・・
『確か、シエロたんが子供の頃、グレンと一緒にいるとき。偶々目を離した隙に、シエロたんがどこぞの賊に連れ去られそうになって、シエロたんが大声で泣いて助けを呼んだから助かったけど、そうじゃなかったら・・・って、のがトラウマになって、それからシエロたんから片時も目を離さないようにって、騎士を目指しつつ身体を鍛え捲り、グレンは粘着ストーカー化しちゃうのよねぇ』
『俺のせいかよっ!?』
『まぁ、アンタのって言うよりは環境のせいなんじゃない? ほら、シエロたんは、思わず誰もが舐め回したくなるような美ショタな王子様なんだもん』
舐め回し~というのは、スルーする。一々つっこんでられねぇよ、ねーちゃん。
『あ~、腐った神の采配ってやつな』
「シエロ様?」
『俺』達の日本語に、怪訝な顔をするグレン。
「昔に使っていた言葉、ですわ」
すると、ねーちゃんが口を挟んだ。
「昔、とは……古語ということでしょうか?」
「ええ。そのようなものですが……わたくしは、シエロお兄様と、もっとお話ししたいと思います。仲良くしたいのです。ダメ、でしょうか? グレンお兄様」
きらきらと、神秘的な紫の瞳でグレンを見上げるねーちゃん。潤んだ上目使いがあざといぜ!
「い、いえ。心配になったもので、ついお邪魔をしてしまいました。申し訳ございません」
美幼女の上目使いでのお願いに、あっさりと引き下がるグレン。
「ありがとうございます、グレンお兄様」
「いえ」
ほんのり色付くグレンの頬。
う~ん……チョロいな。まぁ、まだBLに目覚めていないことを喜ぶべきなんだろうか?
『おーおー、騙されてる騙されてる』
『失敬な! かわゆ~い美幼女のお願いを、快く聞いてくれたストーカー予備軍ショタの図でしょ』
『言い方な! 言い方! あと、自分でかわゆいとかイタくねぇの? ああもう、ツッコミと叫び過ぎで喉渇いたわー』
と、淹れられてから随分経って、既に冷めてしまったお茶のカップを手に取る。と、
『飲んじゃ駄目っ!!!!』
慌てたようなねーちゃんの必死な鋭い声に、
「っ!?」
思わずカップを取り落としそうになる。
『毒が入ってるの!』
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