2 / 2
お姉ちゃんって呼んでもいい? えっとね、それでね、あたしとお友達になってください!
しおりを挟む「えっと、あんまり……酷いざまぁにはならないようにするから……宿題五倍とか、ダメ?」
言ってることはアホっぽいけど、悪い子ではなさそう。でも、もしかしてこの子……
「その程度で済む可愛らしいざまぁなんて、聞いたことありませんわ。それと、これは純粋な疑問なのですが、あなたは一生虐げられたいのでしょうか?」
「え? は? なに言ってるの? 意味わかんないんだけど?」
「あなたの言うヒロイン像は、虐げられないと攻略対象に見向きもされない、ということですよね?」
「えっと……うん?」
わたくしがなにが言いたいのか判っていないように頷く彼女。
「それ、まんま吊り橋効果なのだと思うのですが」
「吊り橋効果? なにそれ?」
「聞いたことありません? 一応、恋愛テクニックの一つです。有名なのは、お化け屋敷のドキドキなどですね」
「あ、お化け屋敷に行くとカップルが上手く行くってやつ! 知ってる!」
「ええ。ですが、これには問題もありますの」
「問題って?」
「お化け屋敷などでくっ付いたカップルは、破局も早いのです」
「ええっ!? それ、ホントなのっ!?」
「ええ。恐怖心のドキドキを恋愛的なドキドキと勘違いをさせ、恋を成就させるというテクニックですが。所詮は紛い物。熱するのも早ければ、冷めるのも早いのですわ」
「知らなかったっ!?」
「つまり、あなたが虐められ、虐げられて、それを攻略対象が助けるとします。その高揚を恋愛と勘違いして、一時期はラブラブになるでしょうが。そのドキドキが一生続くワケも無し。というワケで、割と早く飽きられて捨てられるのではないかしら? ほら? 貴族は一度結婚すると離婚するのに苦労しますけど。貴族が平民をポイ捨てするのはよくあること、で済ませられますから」
「そうなのっ!?」
「ええ。残念ながら。若いときの火遊びだとか、武勇伝の一つ。または、『俺ってば昔、平民の女なんかに入れ込んじゃってさー。馬鹿だよなー。ハハッ』などと、笑い話にされますわね」
「酷いっ!? ど、どうにかならないのっ!? ずっとあたしを好きでいてくれる方法とかないっ?」
「ずっと……あなたが虐げられていれば、攻略対象が『可哀想なあなた』から目を離さないのかもしれませんわね。というワケで、あなたは一生虐げられたいのですか? と、お聞きしたのです。結婚した後、旦那に嫌われないようにと、婚家で一生虐げられる生活なんて、大分キツいかと」
「そ、そんなの嫌~っ!?」
「なら、素の自分を受け入れてくれる相手と楽しく伸び伸びと過ごした方がいいですわよ」
「……うん、そうする……」
涙目で素直に頷くヒロインさん。
「あの……いきなりむちゃくちゃなこと言って、ごめんなさい」
「……ねえ、あなた」
「? なんですか?」
「もしかして、前世はまだ子供だったりする?」
「ぁ~……えっとね、あたし。前は、小さい頃からずっと入院してたの。注射も点滴も痛いし。薬は苦くてマズいし。ベッドの上で、ゲームするのだけが楽しみだったんだ。小学校は……卒業、できなかったの」
「そう……」
道理で、子供っぽい子だと思った。だから、全年齢対象の乙女ゲームだったのね。
「それなら、前はできなかったことを、この世界ではやってみたらどうかしら? 一生懸命遊んで、一生懸命お勉強をするの。ゲームの世界と似ていて、あなたがヒロインに似ているとは言っても、あなたはあなたでしょう? その時点で、もうこの世界はゲームとは違っていると思うわ」
「そうなの?」
「ええ。だから、ヒロインとしての行動に縛られるより、あなたがやりたいことをやりたいように、楽しく過ごしなさいな」
ぽんとふわふわの頭を撫でて言うと、
「お姉ちゃんみたい……」
きらきらの瞳に見上げられる。
「え?」
「お姉ちゃんって呼んでもいい? えっとね、それでね、あたしとお友達になってください!」
と、なんだか懐かれてしまった。
それから――――
「お姉ちゃんは誰にも渡さないんだからっ!!」
自称ヒロイン……をやめた彼女は、なぜかわたくしの婚約者候補共にガルガルして威嚇し捲っている。
あなた、彼らと恋愛したがってなかった? と思うも、
「お姉ちゃん、大好き!」
満面の笑みでぎゅっと抱き付いて来る彼女のことを、邪険にはできない。
「ふふっ、ありがとう」
あれ? これ、もしかして乙女ゲームで言うところの百合エンド? とか、頭を過ぎった。まあ、深く考えるのはよそう。
「あのね、お姉ちゃん。あたし、お店でケーキ食べたい! 今はね、ごはんが毎日美味しく食べられて、前みたいに食事制限も無いから。お腹いっぱいお菓子食べてみたいの♪」
「あらあら、お菓子をお腹いっぱいになるまで食べるのは、身体によくないのよ? 程々にしましょうね?」
「え~! 食ーべーたーいー!」
「ほら、むくれないの。可愛いお顔が台無しよ? 二人でケーキを何種類か頼んで、一緒にシェアしましょうね」
「えへへ♡あたし、可愛い?」
さぁて、しばらくは手の掛かる妹ちゃんに構ってあげますか。
――おしまい――
✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧
読んでくださり、ありがとうございました。
なんか、当初の想定よりも大分ほのぼの百合エンドになってしまった。Σ(*゜Д゜*)
元は、虐げられないと運命の出逢いが始まらないカップルってどうなん? そんな野郎と付き合って幸せになれるか? と思ってて。「そんなに虐げられたいなら、一生虐げられてなさいな」と、主人公ちゃんがニヒルに笑って去って行く微ダークな感じ予定だったのに。なぜか、全然別物になった謎。(੭ ᐕ))?
多分、最近は百合書いてないからだ。まあ、これはこれで善し!♡(*>ω<)ω<*)ギュ~ッ♡
感想を頂けるのでしたら、お手柔らかにお願いします。
354
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
出戻り娘と乗っ取り娘
瑞多美音
恋愛
望まれて嫁いだはずが……
「お前は誰だっ!とっとと出て行け!」
追い返され、家にUターンすると見知らぬ娘が自分になっていました。どうやら、魔法か何かを使いわたくしはすべてを乗っ取られたようです。
冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
王子と令嬢の別れ話
朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
「婚約破棄しようと思うのです」
そんなありきたりなテンプレ台詞から、王子と令嬢の会話は始まった。
なろう版:https://ncode.syosetu.com/n8666iz/
伯爵令嬢のぼやき
ネコフク
恋愛
「違う、違うんだよなぁ・・・・・・」
目の前にいる相手に聞こえないくらいにつぶやきそっとため息を吐く。
周りから見るとたおやかに紅茶を飲む令嬢とバックに花を散らすように満面の笑みを浮かべる令息の光景が広がっているが、令嬢の心の中は・・・・・・
令嬢が過去に言った言葉が上手く伝わらなかった結果、こうなってしまったというお話。
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
答えられません、国家機密ですから
ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。