純粋な疑問なのですが、あなたは一生虐げられたいのでしょうか?

月白ヤトヒコ

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お姉ちゃんって呼んでもいい? えっとね、それでね、あたしとお友達になってください!

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「えっと、あんまり……酷いざまぁにはならないようにするから……宿題五倍とか、ダメ?」

 言ってることはアホっぽいけど、悪い子ではなさそう。でも、もしかしてこの子……

「その程度で済む可愛らしいざまぁなんて、聞いたことありませんわ。それと、これは純粋な疑問なのですが、あなたは一生虐げられたいのでしょうか?」
「え? は? なに言ってるの? 意味わかんないんだけど?」
「あなたの言うヒロイン像は、虐げられないと攻略対象に見向きもされない、ということですよね?」
「えっと……うん?」

 わたくしがなにが言いたいのか判っていないように頷く彼女。

「それ、まんま吊り橋効果なのだと思うのですが」
「吊り橋効果? なにそれ?」
「聞いたことありません? 一応、恋愛テクニックの一つです。有名なのは、お化け屋敷のドキドキなどですね」
「あ、お化け屋敷に行くとカップルが上手く行くってやつ! 知ってる!」
「ええ。ですが、これには問題もありますの」
「問題って?」
「お化け屋敷などでくっ付いたカップルは、破局も早いのです」
「ええっ!? それ、ホントなのっ!?」
「ええ。恐怖心のドキドキを恋愛的なドキドキと勘違いをさせ、恋を成就させるというテクニックですが。所詮は紛い物。熱するのも早ければ、冷めるのも早いのですわ」
「知らなかったっ!?」
「つまり、あなたが虐められ、虐げられて、それを攻略対象が助けるとします。その高揚を恋愛と勘違いして、一時期はラブラブになるでしょうが。そのドキドキが一生続くワケも無し。というワケで、割と早く飽きられて捨てられるのではないかしら? ほら? 貴族は一度結婚すると離婚するのに苦労しますけど。貴族が平民をポイ捨てするのはよくあること、で済ませられますから」
「そうなのっ!?」
「ええ。残念ながら。若いときの火遊びだとか、武勇伝の一つ。または、『俺ってば昔、平民の女なんかに入れ込んじゃってさー。馬鹿だよなー。ハハッ』などと、笑い話にされますわね」
「酷いっ!? ど、どうにかならないのっ!? ずっとあたしを好きでいてくれる方法とかないっ?」
「ずっと……あなたが虐げられていれば、攻略対象ヒーローが『可哀想なあなた』から目を離さないのかもしれませんわね。というワケで、あなたは一生虐げられたいのですか? と、お聞きしたのです。結婚した後、旦那に嫌われないようにと、婚家で一生虐げられる生活なんて、大分キツいかと」
「そ、そんなの嫌~っ!?」
「なら、素の自分を受け入れてくれる相手と楽しく伸び伸びと過ごした方がいいですわよ」
「……うん、そうする……」

 涙目で素直に頷くヒロインさん。

「あの……いきなりむちゃくちゃなこと言って、ごめんなさい」
「……ねえ、あなた」
「? なんですか?」
「もしかして、前世はまだ子供だったりする?」
「ぁ~……えっとね、あたし。は、小さい頃からずっと入院してたの。注射も点滴も痛いし。薬は苦くてマズいし。ベッドの上で、ゲームするのだけが楽しみだったんだ。小学校は……卒業、できなかったの」
「そう……」

 道理で、子供っぽい子だと思った。だから、全年齢対象・・・・・の乙女ゲームだったのね。

「それなら、はできなかったことを、この世界ではやってみたらどうかしら? 一生懸命遊んで、一生懸命お勉強をするの。ゲームの世界と似ていて、あなたがヒロインに似ているとは言っても、あなたはあなたでしょう? その時点で、もうこの世界はゲームとは違っていると思うわ」
「そうなの?」
「ええ。だから、ヒロインとしての行動に縛られるより、あなたがやりたいことをやりたいように、楽しく過ごしなさいな」

 ぽんとふわふわの頭を撫でて言うと、

「お姉ちゃんみたい……」

 きらきらの瞳に見上げられる。

「え?」
「お姉ちゃんって呼んでもいい? えっとね、それでね、あたしとお友達になってください!」

 と、なんだか懐かれてしまった。

 それから――――

「お姉ちゃんは誰にも渡さないんだからっ!!」

 自称ヒロイン……をやめた彼女は、なぜかわたくしの婚約者候補共にガルガルして威嚇し捲っている。

 あなた、彼らと恋愛したがってなかった? と思うも、

「お姉ちゃん、大好き!」

 満面の笑みでぎゅっと抱き付いて来る彼女のことを、邪険にはできない。

「ふふっ、ありがとう」

 あれ? これ、もしかして乙女ゲームで言うところの百合エンド? とか、頭を過ぎった。まあ、深く考えるのはよそう。

「あのね、お姉ちゃん。あたし、お店でケーキ食べたい! はね、ごはんが毎日美味しく食べられて、みたいに食事制限も無いから。お腹いっぱいお菓子食べてみたいの♪」
「あらあら、お菓子をお腹いっぱいになるまで食べるのは、身体によくないのよ? 程々にしましょうね?」
「え~! 食ーべーたーいー!」
「ほら、むくれないの。可愛いお顔が台無しよ? 二人でケーキを何種類か頼んで、一緒にシェアしましょうね」
「えへへ♡あたし、可愛い?」

 さぁて、しばらくは手の掛かる妹ちゃんに構ってあげますか。

 ――おしまい――


✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧


 読んでくださり、ありがとうございました。

 なんか、当初の想定よりも大分ほのぼの百合エンドになってしまった。Σ(*゜Д゜*)

 元は、虐げられないと運命の出逢いが始まらないカップルってどうなん? そんな野郎と付き合って幸せになれるか? と思ってて。「そんなに虐げられたいなら、一生虐げられてなさいな」と、主人公ちゃんがニヒルに笑って去って行く微ダークな感じ予定だったのに。なぜか、全然別物になった謎。(੭ ᐕ))?

 多分、最近は百合書いてないからだ。まあ、これはこれで善し!♡(*>ω<)ω<*)ギュ~ッ♡

 感想を頂けるのでしたら、お手柔らかにお願いします。

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みんなの感想(6件)

Vitch
2025.08.31 Vitch
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penpen
2025.06.26 penpen
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さごはちジュレ
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