1 / 13
あの人の奥さんに会いに行く。
しおりを挟む⚠地雷注意⚠
※モラハラ・DV・クズ男が出て来ます。
※妊娠・流産など、センシティブな内容が含まれます。
※少しでも駄目だと思ったら、自衛してください。
別作品『わたしの娘を返してっ!』よりも、内容的にはこちらの方がエグめです。
__________
今日、あたしは――――
あの人の奥さんに会いに行く。
あの人が結婚していることは……出逢ってすぐに、左手薬指のリングで気が付いていた。
けど、でも、あの人はあたしに優しくしてくれて・・・あたしの些細な変化に気付いてくれて。あたしのことを気遣ってくれて。仕事でのミスを繰り返しても、怒らずに何度もカバーしてくれた。
あたしが、そんなあの人のことを好きになるのに……そう時間は掛からなかった。
ダメ元の振られる覚悟で告白をすると――――
少し困ったような顔で、奥さんのことで悩んでいるのだと彼は弱音を吐いた。
あたしは、こんなに素敵な彼のことを困らせる奥さんのことが許せなくなって、思わず言ってしまった。
「あたしなら、あなたにそんな顔をさせて悲しませないのに……」
すると、彼はあたしのことを抱き締めてありがとう、と言ってくれた。
あたしは、傷付いている彼を慰めたい一心でそっと彼に口付けた。
一瞬の驚いたような表情が可愛いと思ったのも束の間、触れている彼の唇がゆっくりと開いて・・・
ああ、彼があたしを受け入れてくれたのね! という喜びが胸一杯に広がり、あたしはうっとりしながら目を閉じ、彼に身を任せた。
それから、彼が奥さんのことで悲しい顔や困った顔をしているとき、どこか元気がないようなときには、彼を慰める――――という関係が続いた。
ぽつぽつと、吐き出される彼の弱音によると・・・
彼の奥さんは働いてもいないのに家で怠けて、家事の手を抜くのだそうだ。彼が注意をしても、なかなか改善しないでだらだら過ごす人。
彼の奥さんは、化粧っ気の無い人。あたしみたいに彼の前で綺麗でいることを怠る人。服だって、同じのばかり着ておしゃれをしない人。
彼の奥さんは、彼が一生懸命話をしても、その話を聞いてはくれない人。
あたしだったら、彼の話をちゃんと聞くのに。
彼から奥さんの話を聞く度に、あたしだったら、あたしだったら……と、そればかりが浮かぶ。
そして、彼の奥さんは・・・
自分の不注意で流産をしたクセに、それを彼のせいだと言って、彼を詰りながら嘆くような人。
もう、奥さんが再び妊娠することはないのだと、彼は寂しそうに言っていた。
彼は、そんな酷い奥さんを許して、やり直そうとしているというのに――――
奥さんがヒステリーを起こして暴れ、話を聞いてくれないのだそうだ。部屋に閉じ籠り、全く彼に顔を見せない日が何日も続いたりするらしい。
あたしなら、彼に酷いことなんてしない。暴れたりもしない。彼と一緒に暮らしているクセに、何日も顔を見せないだなんて……彼と顔を合わせようとしないだなんて、本当に信じられない。
でも彼は、そんな酷い奥さんでも見捨てないで、奥さんが暴れて自分で怪我した傷の手当までしてあげる上、彼女の面倒は自分が一生見るのだと言っている責任感の強い人。
子供が欲しかった、と彼は寂しそうに笑った。
だから――――
21
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる