10 / 13
我慢する必要性を感じなくなった。
ある日のことだった。
親戚のおばさんに、「紹介したい女性がいるから会ってみない?」と言われた。
付き合っている人はいなかったし、おばさんの顔を立てるために、その女性と会ってみた。
おばさんの利用している、介護施設で介護士をしている女性だった。
食事をして実際に会ってみたところ、彼女は化粧っ気の無い顔で控えめな性格。しなやかな身体をしている……という印象。介護士をしているとのことで、体力には自信があるようだ。
「真面目で、献身的な介護をしてくれるし。努力家で、いい子なの。彼女、どうかしら?」
と、どうやらおばさんのお気に入りの介護士のようで、結婚相手にと勧められているらしい。
それから、何度か会ってみて・・・
まあ、悪くないと思って結婚した。
彼女は、幼い頃に両親を事故で亡くし、児童養護施設で育ったそうだ。
道理で。控えめで、面倒見が良く、我慢強い性格をしているワケかと思った。
結婚するに当たり……俺は働く女は好きではないので、彼女に仕事を辞めてもらった。これからは、俺が彼女を養って行くから、と。
彼女との結婚生活は、割合上手く行っていると思う。
育ちのせいか、少々俺とは合わないところもあるが、それもキチンと言い聞かせれば少しはマシになった。
まあ、何度言っても直らないところには苛立ったりもしたが……基本的に彼女は俺に従順で、これまでに付き合って来た女達に比べると、非常によく出来た女だと思う。
俺は彼女と結婚して、煩わしいと思っていた家事を彼女に任せ、以前に比べると苛立つことも少なくなり、仕事の効率も、人当たりも良くなり、色々なことが上手く行くようになった。
そして――――一応、我慢はしていた。
以前に付き合っていた女達は……軽くでも怒鳴ったり殴ったりすると、すぐに連絡が途絶えて、逃げられていたから。
でも、気付いた。コイツには、行く当てが無い。親族が、仲の良い友人が、頼れる人が、誰もいない。
そう気付いてから、段々歯止めが利かなくなった。むしろ、我慢する必要性を感じなくなった。
誰も頼れる人がいない。行く先がどこにも無い。誰も心配する人がいない。
今のまま、家の中に閉じ籠めてしまえば、殴りたいだけ殴れるんじゃないか? と。幸い、コイツは身体が丈夫だ。すぐに死ぬことはないだろう、と。
少々やり過ぎたのか、離婚を切り出された。
目の前が真っ赤になり――――
気が付くと手に血が付いていて、彼女が気絶していた。丁度いい。今のうちにと、ケータイや通帳などを取り上げて、隠した。
もう、これでこの女は俺から逃げられない。
それからは、俺の気の済むまで、アイツを殴ったり蹴ったりと繰り返した。
ああ、気持ちいい。快感だ。
俺は、今まで以上に他人に優しくできるようになり、仕事もプライベートも充実して行った。
それで、調子に乗ったのがいけなかったのかもしれない。
アイツに、妊娠したと告げられた。
そう言われても、俺にはピンと来ない。今まで通りの生活を続けていたら・・・
アイツが、体調が悪いからと家事をサボるようになった。
何度かは、我慢した。けれど、俺が疲れて家に帰って来ても、全然食事が用意されていない。服が畳まれていない。食器やらなにやらが出しっぱなし。家の掃除がされていないこともある。
綺麗好きな俺には、我慢できなかった。
__________
書いててなんだけど、「自分でやれや、このドクズ外道がっ!?」と、めっちゃ言いたい。(ノ`Д´)ノ彡┻━┻
あなたにおすすめの小説
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
予言姫は最後に微笑む
あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。
二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
姉から全て奪う妹
明日井 真
ファンタジー
「お姉様!!酷いのよ!!マリーが私の物を奪っていくの!!」
可愛い顔をした悪魔みたいな妹が私に泣きすがってくる。
だから私はこう言うのよ。
「あら、それって貴女が私にしたのと同じじゃない?」
*カテゴリー不明のためファンタジーにお邪魔いたします。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。