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お前みたいな奴が幸せになれると思うなよ。
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※胸クソ。
――――――――
ああもうっ、苛々するっ!?
苛々する苛々するっ!?
なんなのっ!? なんなのっ!?
なんで、わたしだけがこんな目に遭うのっ!?
わたしは、ただ……幸せになりたかっただけなのにっ!?
なんでなんでなんでなんでなんでなんでっ!?!?
なんっでっ!? なんで、わたしはっ!? わたし、は……幸せになれないのっ!?
あの子を妊娠したから、あの人の子だから産みたいって思って結婚したのに……
妊娠を告げたらびっくりした顔をして、
「責任……取らなきゃな……」
って。そう言って、結婚することになったのに。
「うん、幸せにしてね?」
「ああ、そう……だな。努力する」
って、そう言ったのに。
結婚したのに、幸せじゃなかった。妊娠があんなに大変だなんて知らなかった。
頑張ったのに、わたし頑張ったのよ?
慣れない家事とか、あの人の好きなごはん作ったりとか、頑張ったの。そりゃあ、お料理苦手で……よく失敗しちゃったりしたけど。でも、あの人は顔をしかめながら食べてくれたのに。
どこから間違ったのかな?
いつの間にか、あの人のやることなすことにすっごく苛々するようになった。
だって、わたしが体調悪いときに全然傍にいてくれないのよ? 連絡もくれない。返事ちょうだいって、何度も催促したのに、返事もしてくれない。
言葉がキツかったのは……ちょっと反省してるけど、でも、しょうがないじゃない。自分でも自分が止められなかったんだから!
大体、あの人も悪いじゃない!
わたしのこと幸せにするって言ったのにっ!? 全然幸せじゃなかった!
寂しかったし、ずっと不安だった。なんで慰めてくれなかったの?
わたしがあんなに不安になったのって、全部あの人の責任でしょ?
それなのに……
「責任取らなきゃって、頑張ってたけど……もう、君の束縛には耐えられない。別れよう」
って、そんなのおかしくないっ!?
子供は自分が引き取るって言ったけど、そんなの駄目! 絶対嫌だって、子供には母親が必要なんだからって、拒絶した。
養育費と子供に会いに来ることを約束させて、わたしと別れたことを後悔して不幸になれ! って、そう思いながらリコンに応じてやった。
それから、わたし……頑張ったの。あの子を一人で産んで、毎日毎日をなんとか生きて来たの。
あの人は、数ヶ月に一度あの子の顔を見に来ていた。
なのに、なのに、数年……
たった数年、で……あの人は浮気をした。そんなの許せないでしょっ!?
わたしは、あの子を育てるのに女手ひとつでこんなに苦労して、大変な思いをしてるのにっ!?
新しい彼女と結婚することになったから、もうあの子に会うのをやめる?
そんなの許せるはずないじゃないっ!?
あの人が、あの子の顔見に来るからっ!? だから、大変だけど育ててやったのにっ!?
まあ……あの人に似てるから、ちょっとむしゃくしゃしたときに叩いたり、わざとごはんをあげなかったりしたけど。だって、泣いてるあの子を見ると少しスッキリするんだもの。
でも、わたし、ちゃんとあの子を育てて頑張ったのにっ!?
あの人が会いに来ないなら、あの人が別の女と幸せになるって言うなら――――
そんなの、そんなの、許せるはずないでしょっ!?
なんのためにあの子を妊娠したと思ってるのっ!?
別れたいって言ってたあの人を引き留めるためだったのにっ!!
ああもうっ、
「アンタなんか産むんじゃなかったっ!? 本当は要らなかったのにっ!? これじゃなんの意味も無いじゃないっ!?」
そんなことを大声で叫んで――――
泣きそうな顔のあの子に、あの人と似たあの子に無性に腹が立って……あの人に直接殺意をぶつけられない代わりに、思いっ切りぶん殴ってやろうとしたのに。
いつの間にか、あの子がいなくなってた。どこかに隠れたのかと、また腹が立って――――
気が付くと真っ暗になってて、灯りを点けると部屋の中が大荒れしていた。
あ~あ、疲れた。片付けんのめんどくさ!
もうヤだ。なんでわたしだけ、こんな目に遭うの?
わたしはただ、幸せになりたかっただけなのに……
あの子の名前を呼びながら、部屋の中を見て回ったけど、あの子がどこにもいなくて。
「は? なんでいないワケ? 片付けさせようと思ったのに……」
なに? もしかして、遊びに行ったワケ?
わたしが、こんなにつらい思いしてるのに?
さすが、あの人の子。こんな酷いところまで似なくてもよくない?
「隠れてないで出て来なさいよっ!?」
怒鳴っても、部屋に響くのはわたしの声だけ。あの子の気配は無い。
あ~あ、酷い。酷い、酷い酷い酷い酷い……
こんな状態のわたしを一人にするとか、なんなの?
最悪なんだけど?
あの子は馬鹿みたいに、わたしのこと大好きでいればいいのに。我慢してわたしに殴られてればいいのに。なんにもできないでわたしに迷惑掛けるしかできない上、あの人を繋ぎ留めることもできない役立たずなんだから。せめて、あの人の代わりにサンドバッグになるしかないのに……
なんでいないワケ?
まあ? あの子がいなければ、わたしは自由になれると思ったことはあるけどさ?
チカチカと、蛍光灯が瞬いた。は? なに? 切れそうなワケ? めんどくさ、って思った瞬間。
『要らないって言うから、捨てただけ。でも……』
ふっと、近くで高いのに……ぞっとする程低くて、冷たい声がしたような気がした。
「え?」
チカチカと瞬く蛍光灯。隣には誰もいないのに、床にはチカチカ真っ黒な影が映る。どこか歪な形の、フードを被った子供の姿。
捨てた? なにを? と、思って……あの子の姿が無いことに閃いた。
ああ、わたし。これで自由じゃん、って。ストンと、そう思えた。
『お前みたいな奴が幸せになれると思うなよ』
チカチカ瞬く蛍光灯。フードの子供が、わたしの顔を見上げて、真っ赤な顔が、真っ黒で真っ暗な眼窩がわたしを見詰めて言った。
「……っ!? キャーっ!?!?」
遅れて恐怖が込み上げ、わたしは叫んでいた。
ふと、思い出した話。
この部屋、事故物件だったわ。
何年も前に、この部屋から飛び降り自殺した子供がいるんだって。それで、その死んだ血塗れの子供の幽霊が出るとかなんとかで、家賃が相場より大分安かった。
他にも、この近くの公園は心霊スポットらしくて、寂しいから一緒に遊んでと言う小さい女の子の幽霊が出るとかで寂れている。
噂だと、両親に虐待されて死んじゃった子で、遊ぼうって誘われて『いいよ』とか『遊ぶ』って答えちゃった子は、その女の子に連れて行かれる……なんて噂もあったっけ?
そんなこと、全然信じてなかったのに! 思い出したら、ぶわって一瞬で全身に鳥肌が立って、こんな家いられないってなって、財布とケータイだけ持って飛び出してた。
「……もう、ヤだ……なんで、わたしばっかり……こんな酷い目に遭うの……?」
『ねぇ……さみしいの? いっしょにあそぼ?』
「え?」
夜の公園で、女の子が真っ暗な瞳でわたしを見上げていた。
『ね? おかぁさん』
甘えるような声に、なぜかさっきよりも、全身が粟立った。
違うのに、こんな子知らないのに! わたしの子じゃないのに……
捕まったっ!! ヤバい、ヤバい、ヤバいっ!! って、頭の中で強く警鐘が鳴っている。
逃げ、なきゃ……この子から、早く! 早く早く早くっ!!
『おうち、かえるの? あたしもいっしょにかえる♪』
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