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音楽家セスの場合。

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「・・・ホント、なんとも言えないアホみたいな茶番だったねぇ?」

 高等部の第四音楽室に置かれた柔らかいソファーへ腰を下ろし、クスクスとミカエルが口を開く。と、その隣へ、当たり前のようにごろんと寝転がる白髪頭の気怠けだるげな人物。

「ん。お昼寝邪魔された。ちょー迷惑」
「・・・まあ、それは災難だろうけどさ? セス」

 苦笑と共に名前を呼ばれたセスは、

「ん~?」

 ごろんと真上を見上げ、

「なんで君は、ここに来るといつも僕の膝を枕にするのかな? 僕なんかより、幼馴染みのアウル(アウラ)の方がいいでしょ」

 眠たげにミカエルへ答える。

「・・・アウルせわしない」

 アウル達は学園内を忙しく動き回っていて、セスのお昼寝に付き合ってはくれない。

「それに、ミカのがぷにぷに。柔らかい・・・」
「ふっ、ミカに勝った! わたしの方が逞しい!」
「ぁ~……まあ、ミカよりわたし達の方が鍛えてはいるけどさ・・・というか、それ嬉しいの? ねぇ、アウル?」
「もちろんだよ、アウル」

 ふふんと胸を張るアウルに、もう一人のアウルとミカエルの視線とが交わった。

「「・・・」」

 女の子のアウレーリアことアウラ・・・を差し置いてぷにぷにと称され、しかもアウラに勝ったと喜ばれたミカエルは、なんとも微妙な気分になった。
 ちなみに、ミカエルは標準体型の少年なので普通の女の子よりは当然ながら硬い。アウラが諜報員ふくろう見習いつ、普段から身体を鍛えているアスリート系女子なだけだ。

 そして、アウレーリオことアウル・・・の方も兄としてはなんだか微妙な気分だ。

「・・・相変わらずミカエル様に無礼な連中だな。退けセス・リオール。そして、身内ならちゃんと注意しろ。グラジオラス共が」

 顔をしかめたショーンが嫌そうにアウル達へ言うと、

「えー? セスのお世話をミカに頼まれてるのは君でしょ? ショーン・マクレガン」
「そうそう、なんならショーンがセスに膝枕したげればいいんじゃない?」

 ニヤニヤ笑う双子のアウル。今日の二人は男子生徒の制服姿だが別々の変装をしている為、いつものようには似ていない。ちなみに、アウラ・・・の方は野次馬の中に紛れて最初に野次を飛ばし、アウル・・・の方がローとして前に出ていた。

「断固許否する!!!」

 グラノワール公爵家の傘下のマクレガン家に生まれたショーンは演奏家志望ではあるが、同時に次期公爵と決まったミカエルの駒の内の一人だ。
 次期公爵として決まる前から、仕えるなら上二人(現在廃嫡済み)より断然この人がいい! と思っていたミカエルに頼まれて仕方なく、芸術家気質で常識が無い上に、中身が幼児という扱いに困るセス・リオールの面倒を見ているに過ぎない。そして、何度も言うようだが、ショーンは彼のことが大嫌いだ。

「これ以上の厄介事は御免だ。自分達で面倒を見ればいいだろうに? 全く・・・」
「あはは、無理。知ってるでしょ? グラジオラスは代々武門に偏ってるし」
「わたし達を含め、音楽科へ入れる奴ってなかなかいないんだよね」

「「というワケで、セスのことよろしく~。わたし達の弟みたいなものだしさ」」

「それが人にものを頼む態度か!」

「「わたし達はミカの友達で、ショーンの一つ先輩だしー? セスも、ミカと友達だよねー?」」

「・・・」

 双子の言葉に返るのは、寝息。

「「セス?」」

 そして、

「もう寝てるよ」

 愉しげに笑みを含んだ声。

__________

 ショーンはセスと同学年だったのが運の尽き・・・嫌々ながらにお守りさせられてます。
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