4 / 5
まあ、そんな頭空っぽお花畑共に煩わされるのも今日までのことよ!
しおりを挟む「なっ!? なんでよっ!? あたしがなにしたって言うのっ!?」
今度は、異母姉が顔を青くさせてわたしに突っ掛かる。
「あら? なにをしたかは、ご自分がよくご存知かと思っていましたが……自覚が無いのであれば、説明致しましょう。我が国は、領地間の抗争が法律で明確には禁止されていません」
「え? は? 法律?」
「はい。故に、貴族家当主にとって度し難い行いをした貴族へと、抗争を仕掛けることが偶にありましてよ? それを踏まえた上で、あなた。この学園でなにをしました? 婚約者のいる殿方に擦り寄っていましたよね? そのせいでわたくし、『貴家は我が家へ喧嘩を売っているのか? もしそのつもりが無いのであれば、あの女をどうにかしろ』と、幾度か忠告を受けておりましたの」
まあ、本気で人死にや領地を潰すまで徹底交戦! という気合の入った領地間の抗争は……例えば、令嬢がどこぞのクソ令息に誘拐されて冷たくなって戻って来たとか、嫁に行った娘が冷遇されて孫共々殺された、というような悲惨な事件を原因としていることが多い。
婚約破棄なら、被害損額や精神的苦痛などの程度による……と言ったところか。
国や他貴族家に、『今からどこどこの家と喧嘩するんでよろしく!』的な宣言をして――――
経済戦争や嫌がらせ、足の引っ張り合いは仕掛けるかなぁ?
他は、災害が起きたときに支援しないとか? 支援物資などを国や寄り親貴族、親類縁者が届ける際、自領を通るルートなら通行料を取る……または、高額の利子付きで後程請求する、などなど。えげつない報復は割とある。
そういう領地間抗争を、国はある程度黙認する。貴族家同士で争って、貴族の力が強くなり過ぎるのを抑止できるという側面もあるし。なにより、抗争を黙認しても、仲裁しても、貴族家に恩を売ることができる。
まあ、あまりに酷い、国が傾きそうな大規模抗争が始まりそうなら、王家や貴族院が介入して止めるが。小領地間の抗争なら、割と気が済むまでやれというスタンスだ。
一応、小領地は寄り親貴族に助けを求めてはいけない、など。大規模抗争を抑止するための規定は幾つかあるけど。
そういうお国柄なため、我が国は貴族家当主に武術が必修というワケだ。父が可愛がっている異母姉を、子爵家の後継に任命しないであろう理由でもある。
ちなみにわたしは、槍が得意だ。それなりに使えるという程度の剣を使っても、元婚約者よりは断然強い。
そして、『領地間での抗争を止めるため』という名目であれば、次期当主にも、現当主を上回る権限の行使が可能となる。
「なので、たった数ヶ月前に父が、わたくしの母と結婚する前から囲っていた愛人の産んだ、父の実の娘だと判明して我が家に住み始めたお姉様? ほぼほぼ他人同然だったとは言え、父の実の娘でわたくしの異母姉ですので、ほんの少し心苦しくはありますが。次期当主として、他の貴族家との不和を振り撒き、婚約を壊すあなたを、我が子爵家より追放致します。あ、ちなみにですが。我が家から籍を抜けば、そちらの彼と結婚が可能となりますわよ?」
「本当かっ!?」
「ええ、勿論です」
我が家とはなんの関係も無い平民としてな。
「というワケですので、あなた方が一刻も早く結ばれるよう、わたくしは少々煩雑な手続きをして参りますので。失礼致します」
「そうか! 俺と彼女を祝福してくれるんだなっ!? それなら、俺が父に怒られないようついでに取り成してくれ!」
「ちょっ、なに言ってるのよっ!? ねえ、追放なんて冗談でしょっ!? そんなのあたし、絶対認めないんだからっ!? ねえっ、聞いてるのっ!?」
隣で異母姉がギャンギャン喚いていて、尚且つこの状況でめっちゃポジティブなことを、本気で言ってのける頭空っぽお花畑の言動は相変わらず理解し難い。
まあ、そんな頭空っぽお花畑共に煩わされるのも今日までのことよ!
さっさと貴族院に異母姉と、ついでに義母の分の除籍申請を届け出なきゃ!
そして、ようこそ平和な日常!
285
あなたにおすすめの小説
侯爵家を守るのは・・・
透明
恋愛
姑に似ているという理由で母親に虐げられる侯爵令嬢クラリス。
母親似の妹エルシーは両親に愛されすべてを奪っていく。
最愛の人まで妹に奪われそうになるが助けてくれたのは・・・
(完結)初恋の勇者が選んだのは聖女の……でした
青空一夏
ファンタジー
私はアイラ、ジャスミン子爵家の長女だ。私には可愛らしい妹リリーがおり、リリーは両親やお兄様から溺愛されていた。私はこの国の基準では不器量で女性らしくなく恥ずべき存在だと思われていた。
この国の女性美の基準は小柄で華奢で編み物と刺繍が得意であること。風が吹けば飛ぶような儚げな風情の容姿が好まれ家庭的であることが大事だった。
私は読書と剣術、魔法が大好き。刺繍やレース編みなんて大嫌いだった。
そんな私は恋なんてしないと思っていたけれど一目惚れ。その男の子も私に気があると思っていた私は大人になってから自分の手柄を彼に譲る……そして彼は勇者になるのだが……
勇者と聖女と魔物が出てくるファンタジー。ざまぁ要素あり。姉妹格差。ゆるふわ設定ご都合主義。中世ヨーロッパ風異世界。
ラブファンタジーのつもり……です。最後はヒロインが幸せになり、ヒロインを裏切った者は不幸になるという安心設定。因果応報の世界。
王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~
葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」
男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。
ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。
それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。
とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。
あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。
力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。
そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が……
※小説家になろうにも掲載しています
妹は病弱アピールで全てを奪い去っていく
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢マチルダには妹がいる。
妹のビヨネッタは幼い頃に病気で何度か生死の境を彷徨った事実がある。
そのために両親は過保護になりビヨネッタばかり可愛がった。
それは成長した今も変わらない。
今はもう健康なくせに病弱アピールで周囲を思い通り操るビヨネッタ。
その魔の手はマチルダに求婚したレオポルドにまで伸びていく。
(完)婚約破棄ですか? なぜ関係のない貴女がそれを言うのですか? それからそこの貴方は私の婚約者ではありません。
青空一夏
恋愛
グレイスは大商人リッチモンド家の娘である。アシュリー・バラノ侯爵はグレイスよりずっと年上で熊のように大きな体に顎髭が風格を添える騎士団長様。ベースはこの二人の恋物語です。
アシュリー・バラノ侯爵領は3年前から作物の不作続きで農民はすっかり疲弊していた。領民思いのアシュリー・バラノ侯爵の為にお金を融通したのがグレイスの父親である。ところがお金の返済日にアシュリー・バラノ侯爵は満額返せなかった。そこで娘の好みのタイプを知っていた父親はアシュリー・バラノ侯爵にある提案をするのだった。それはグレイスを妻に迎えることだった。
年上のアシュリー・バラノ侯爵のようなタイプが大好きなグレイスはこの婚約話をとても喜んだ。ところがその三日後のこと、一人の若い女性が怒鳴り込んできたのだ。
「あなたね? 私の愛おしい殿方を横からさらっていったのは・・・・・・婚約破棄です!」
そうしてさらには見知らぬ若者までやって来てグレイスに婚約破棄を告げるのだった。
ざまぁするつもりもないのにざまぁになってしまうコメディー。中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。途中からざまぁというより更生物語になってしまいました。
異なった登場人物視点から物語が展開していくスタイルです。
高慢な王族なんてごめんです! 自分の道は自分で切り開きますからお気遣いなく。
柊
恋愛
よくある断罪に「婚約でしたら、一週間程前にそちらの有責で破棄されている筈ですが……」と返した公爵令嬢ヴィクトワール・シエル。
婚約者「だった」シレンス国の第一王子であるアルベール・コルニアックは困惑するが……。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
妹の婚約者自慢がウザいので、私の婚約者を紹介したいと思います~妹はただ私から大切な人を奪っただけ~
マルローネ
恋愛
侯爵令嬢のアメリア・リンバークは妹のカリファに婚約者のラニッツ・ポドールイ公爵を奪われた。
だが、アメリアはその後に第一王子殿下のゼラスト・ファーブセンと婚約することになる。
しかし、その事実を知らなかったカリファはアメリアに対して、ラニッツを自慢するようになり──。
(完)婚約破棄ですね、従姉妹とどうかお幸せに
青空一夏
恋愛
私の婚約者は従姉妹の方が好きになってしまったようなの。
仕方がないから従姉妹に譲りますわ。
どうぞ、お幸せに!
ざまぁ。中世ヨーロッパ風の異世界。中性ヨーロッパの文明とは違う点が(例えば現代的な文明の機器など)でてくるかもしれません。ゆるふわ設定ご都合主義。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる