わたくしと婚約破棄して、異母姉と婚約するですって? 宜しい、ならば追放だ!

月白ヤトヒコ

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まあ、そんな頭空っぽお花畑共に煩わされるのも今日までのことよ!

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「なっ!? なんでよっ!? あたしがなにしたって言うのっ!?」

 今度は、異母姉が顔を青くさせてわたしに突っ掛かる。

「あら? なにをしたかは、ご自分がよくご存知かと思っていましたが……自覚が無いのであれば、説明致しましょう。我が国は、領地間の抗争が法律で明確には禁止されていません」
「え? は? 法律?」
「はい。故に、貴族家当主にとって度し難い行いをした貴族へと、抗争を仕掛けることが偶にありましてよ? それを踏まえた上で、あなた。この学園でなにをしました? 婚約者のいる殿方に擦り寄っていましたよね? そのせいでわたくし、『貴家は我が家へ喧嘩を売っているのか? もしそのつもりが無いのであれば、あの女をどうにかしろ』と、幾度か忠告・・を受けておりましたの」

 まあ、本気で人死にや領地を潰すまで徹底交戦! という気合の入った領地間の抗争は……例えば、令嬢がどこぞのクソ令息に誘拐されて冷たくなって戻って来たとか、嫁に行った娘が冷遇されて孫共々殺された、というような悲惨な事件を原因としていることが多い。

 婚約破棄なら、被害損額や精神的苦痛などの程度による……と言ったところか。

 国や他貴族家に、『今からどこどこの家と喧嘩するんでよろしく!』的な宣言をして――――

 経済戦争や嫌がらせ、足の引っ張り合いは仕掛けるかなぁ?

 他は、災害が起きたときに支援しないとか? 支援物資などを国や寄り親貴族、親類縁者が届ける際、自領を通るルートなら通行料を取る……または、高額の利子付きで後程請求する、などなど。えげつない報復は割とある。

 そういう領地間抗争を、国はある程度黙認する。貴族家同士で争って、貴族の力が強くなり過ぎるのを抑止できるという側面もあるし。なにより、抗争を黙認しても、仲裁しても、貴族家に恩を売ることができる。

 まあ、あまりに酷い、国が傾きそうな大規模抗争が始まりそうなら、王家や貴族院が介入して止めるが。小領地間の抗争なら、割と気が済むまでやれというスタンスだ。

 一応、小領地は寄り親貴族に助けを求めてはいけない、など。大規模抗争を抑止するための規定は幾つかあるけど。

 そういうお国柄なため、我が国は貴族家当主に武術が必修というワケだ。父が可愛がっている異母姉を、子爵家の後継に任命しないであろう理由でもある。

 ちなみにわたしは、槍が得意だ。それなりに使えるという程度の剣を使っても、元婚約者よりは断然強い。

 そして、『領地間での抗争を止めるため』という名目であれば、次期当主にも、現当主を上回る権限の行使が可能となる。

「なので、たった数ヶ月前に父が、わたくしの母と結婚する前から囲っていた愛人の産んだ、父の実の娘だと判明して我が家に住み始めたお姉様・・・? ほぼほぼ他人同然だったとは言え、父の実の娘でわたくしの異母姉・・・ですので、ほんの少し心苦しくはありますが。次期当主として、他の貴族家との不和を振り撒き、婚約を壊すあなたを、我が子爵家より追放致します。あ、ちなみにですが。我が家から籍を抜けば、そちらの彼と結婚が可能となりますわよ?」
「本当かっ!?」
「ええ、勿論です」

 我が家とはなんの関係も無い平民としてな。

「というワケですので、あなた方が一刻も早く結ばれるよう、わたくしは少々煩雑な手続きをして参りますので。失礼致します」
「そうか! 俺と彼女を祝福してくれるんだなっ!? それなら、俺が父に怒られないようついでに取り成してくれ!」
「ちょっ、なに言ってるのよっ!? ねえ、追放なんて冗談でしょっ!? そんなのあたし、絶対認めないんだからっ!? ねえっ、聞いてるのっ!?」

 隣で異母姉がギャンギャン喚いていて、尚且つこの状況でめっちゃポジティブなことを、本気で言ってのける頭空っぽお花畑の言動は相変わらず理解し難い。

 まあ、そんな頭空っぽお花畑共に煩わされるのも今日までのことよ!

 さっさと貴族院に異母姉と、ついでに義母の分の除籍申請を届け出なきゃ!

 そして、ようこそ平和な日常!

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