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ヴァンパイア編。
84.きゃー、妖精君かっこいいー♪
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ざわり、と物騒な気配がした。
これは・・・殺気のようだ。
そして、その気配を辿ると食堂だった。
カキン! キン! と、響く剣戟の音。
一体、食堂でなにが?
不審に思いつつ扉を開くと・・・
雪路《ゆきじ》とアルが、縦横無尽に斬り合っていた。
「は?」
身軽な二人がテーブルや椅子の背など、そして更に器用なことに、壁や天井までをも足場にし、両手に構えたナイフでの応酬を繰り広げている。しかも、全くバランスを崩すことが無い。凄いが・・・
「なにしてんだ? コイツらは…」
アルは病み上がりだ。なのに、よく見ると一方的に斬り掛かっている雪路の、怒気混じりの殺気がビリビリと漂う。意味がわからん。
「ヒュー…」
おろおろしたように座り込んだカイルが、俺を見てホッとしたように溜息を吐いた。
「ハァイ、鬼君♪」
にこりと壁際で手を振るクラウド…女の方の。
なんというか・・・あれだ。
「とうとう雪路がキレたようだな」
クラウドへ向かおうとしている雪路をアルが止めていて、斬り合いをしているように見えている。縦横無尽に壁や天井をも足場にしているのは、雪路がアルを抜こうとしているからだ。
それにしても、雪路を止め続けているアルは凄い。雪路は、この船の中で一番素早い。身体が柔軟な為、予備動作が少なくて瞬発力が高い。だから、その動きはとても読み難い。その雪路に対応しているアルも相当速い・・・いや、雪路が動いてからアルが対応しているのだから、アルのトップスピードの方が、雪路よりも速いようだ。
本気の雪路の足を止めるのは、俺でも無理なんだがな?
この前まで二人でやっていた格闘は、本当にお遊びだったようだ。
一体、アイツのどこが弱いんだ? 全く・・・
まあ、膂力や腕力自体は弱いようだが・・・それは、雪路の方も似たようなものだ。その辺りは雪路もスピードや技術で補っている。
初対面のとき、俺の攻撃を受けたのはしくじりだったとアルが言っていた意味も、よくわかった。
雪路もアルも、真っ正面から斬り合わないことが、強みになるタイプ。だからこその、失敗。
淡々と攻撃を往なして絶対に抜かせないアルに、雪路が段々と焦れて来ている。
「そうなんだよ、ヒュー。ミクリヤさんが、アルの具合いが悪いのはルー…クラウドのせいなんじゃないかって言って、斬り掛かって…」
「? クラウドの、せい?」
確か、雪路は言っていた。クラウドは他人の精神を破壊するのが得意で、何十人も廃人にしているのだと・・・そして、本人もそれを否定はしていない。クラウドは、危険なのだろう。得体も知れない。警戒はして然るべきだとは思う。
そもそも、アルの婚約者候補だというのも自称だ。アル本人からは、なにも聞いてない。
雪路とアルの古馴染で、淫魔。
他者の精神を壊すのが得意。
そして、自称アルの婚約者候補。
クラウドについては、この程度しか知らない。
話そうとは思っていたが、警戒の方が先に立つ。また、クラウド本人も、積極的に俺達に自分のことを話そうとはしなかった。
クラウドは飄々とした態度で、「アルが言わないことを、俺が勝手に話すワケにはいかないからね」と言って、妖艶に微笑むだけ。
その言い分はわかる。だが、ハッキリ言って俺のクラウドに対する信頼度は、雪路やアル以下だ。
「・・・ヒュー?」
「・・・なにか、弁明は?」
クラウドの金色が混じる紫を見据える。
「弁明、ね。特には無いよ。俺がなにをどう言ったところで、君が信じるのは猫君なんだろう?」
身体と声は女のままで、言葉だけを男にしたクラウドが首を振って言う。
「・・・」
腰に佩いたカトラスを、クラウドへと向ける。鞘のまま、刃を抜きはしない。
「ヒュー? なんで、剣を向けるのさ?」
カイルの不安げな声。
「確かに。アンタの言う通りだ。俺はアンタを、雪路程には信じられない」
クラウドは、触れるだけで他者の精神を壊すことができるという。迂闊には触れない。
「それで?」
薄く笑むクラウドに動じた様子は無い。
「だからと言って、アンタの言い分を聞かないとも言っていない。話してもらわないと、わからない」
「剣を突き付けておいて?」
「抜いてはいない」
「そうなんだけどね」
肩を竦めるクラウド。その金の混じる紫の視線は、アルをじっと見詰めている。
「?」
と、剣戟の音が変わったような気がして、
「っ!?」
ガン! と腕に走る衝撃。カトラスがなにかに弾かれ、クラウドから逸らされた。そして、丸い球がアルの手に戻って行くのが見えた。
「ヒューっ! 大丈夫っ?」
「ああ、カトラスが弾かれただけだ」
あれは、流星錘か・・・中華圏内の暗器で、鉄球や金属の錘に鎖や紐を付けて振り回したり、投げ付けるような使い方をする。錘の形状は必ずしも球形ではなく、先が尖った形や、刃物などの場合もある。その場合は、球形に比べて殺傷力が高くなる。また、球形のままだとしても鈍器のような効果を発揮する為、使い手の腕次第では簡単に骨を砕くことができるので、当たりどころに拠っては死ぬ。
しかし、紐や鎖で手元に引き戻す仕様なので、下手をすると自分に当たる。力加減やタイミング、角度や軌道計算など、流星錘は扱いが大変難しい。
ジャラジャラと音がしないから、アルの流星錘は鎖ではなく紐タイプのようだ。
中華圏の武器とは、また懐かしい物を見た。しかし、ヨーロッパ圏内ではかなりマイナーだぞ?
「丸腰で無抵抗な女の子に剣を向けるのはどうかと思うんだけど? ヒュー」
既に雪路へと振り返った翡翠、呆れ混じりの冷ややかなアルトが言う。
「女? クラウドが?」
「今は、ちゃんと女の子だよ」
「ありがとう、アル♥️」
「って、どっから出したそれっ!?」
アルは、片手で流星錘を俺へ。反対の手にはトンファーを握って雪路の攻撃を受けていた。
剣戟の音が変わったのはこれのせいか。
トンファーというのは、握りの付いた短めの棒という感じの武器だ。丁度、トという形に似ている。この、短い握りを確りと掴み、腕に添わせるように構える。防御のときはこの姿勢。攻撃のときは、握りを甘くして棒状の部分を振り回す。回転で遠心力が掛かる為、普通に殴るよりも威力が増す。攻防一体の、こちらも分類は暗器に当たる武器だ。
木製や金属製があるが、アルのは金属製。雪路のアーミーナイフを弾いている。
本来なら両腕に装備して二本で一対の武器だが、アルは片腕だけに装備したトンファーで先程のナイフよりもリーチを長くして、雪路の両手のアーミーナイフを牽制しつつ捌いている。
どうやらアルは、ナイフ使いだけではなくて暗器使いとしての一面も持っているようだ。
返事は無いが、まあ…暗器だから当然、どこかに仕込んでいたということだろう。
「きゃー、アルかっこいいー♥️」
クラウドの黄色い声援に、苛立ったように激しさを増す雪路の剣戟。
「そこっ、煽るなっ! オレ、防衛戦は苦手なんだからなっ! ああもうっ、貴方は全く・・・」
アルが慌てたような声でクラウドへ抗議し、片腕のトンファーで防御と牽制。片手に握った流星錘でアーミーナイフを弾いている。両手で全く違う系統の武器を駆使した、かなり変則的な二刀流。
苦手で、これか・・・
まあ、雪路が狙っているのはクラウドで、アル自体を傷付ける意図が無い(多分)ということもあっての、膠着状態の防衛戦と言ったところだろうか?
・・・それを俺が邪魔をしたということになるが…それにしても、わかっていて雪路を煽るクラウドは、性格が悪い。
そして生憎、俺も引き下がるワケにはいかない。カトラスを鞘のままで再びクラウドへ向けようとしたら、ダン! と食堂のドアが開いた。
「なにしてるんだっ、君達はっ!?」
食堂へ入って来るなり、声を荒げるジン。
「やめろっ、ミクリヤっ!」
と、雪路へ向かうジン。
ジンが土足でテーブルへ乗った瞬間、
「…ああもうっ、いい加減にしてよねっ!!! ここは食堂でっ、ご飯食べるとこっ! テーブルを足蹴にしていい筈ないんだからねっ!?」
カイルが立ち上がりつつ大声で怒鳴る。
「みんな転んじゃえっ!?妖精の悪戯贈呈っ!!!」
キランと光を放つカイル。瞬間、カイルと座っていたクラウド以外の全員がすっ転んだ。
「へ?」
「わっ!」
「ンなっ!?」
「おわっ!?」
足が、強制的に滑らされた感覚。
「あらあら♪」
そして、宙を舞った雪路のアーミーナイフがカランと床に落ちる。
「攻撃しようとしたら、失敗するっ!?」
ビシッと雪路を指すカイル。
「きゃー、妖精君かっこいいー♪」
「っ!」
クラウドの黄色い声に、
「ぬわっ!?」
立ち上がろうとした雪路が、またすっ転んだ。
※※※※※※※※※※※※※※※
妖精は、悪戯が大好きな種族だ。そして、他人が一生懸命に打ち込んでいることを邪魔したり、台無しにするなどの意地悪を好んだりもする。
まあ、僕はそうでもないけどね?
屋敷妖精の僕だって、妖精だ。
僕自体は一生懸命な誰かを邪魔することは好きじゃないけど、邪魔や嫌がらせ自体は、しようと思えばできるんだ。好きじゃないだけで、特技ではある。
屋敷妖精は、嫌いな人や気に食わない人へ手酷く悪戯してその家から追い出すこともある。
特に、この船は僕の家だ。家主はアマラで、アマラ程の支配権は無いけど、ここは僕の領域でもある。
攻撃力は無くても、悪戯や邪魔はできる。
嫌いな喧嘩や、家の中が汚されて行くのを邪魔することを躊躇う必要なんか、全く無い。
存分に邪魔させてもらうんだから!
こうして、喧嘩を強制終了させた。
喧嘩の原因のクラウドと病み上がりのアルを追い出して、ヒュー、ミクリヤさん、ジンに滅茶苦茶になった食堂を掃除させた。
「・・・」
ムスッとして、不機嫌そうに黙々と手を動かすミクリヤさん。そして、そんなミクリヤさんを見て困ったように手を動かすヒュー。
「…なんで俺まで…喧嘩に交ざってないのに」
そして、ぼやくジン。
「ウルサいよっ! アンタも食堂でご飯食べるでしょっ!? さっさと手動かすっ! そうしないと終わらないんだからねっ!?」
当然、僕も手を動かしてるよ?
「さっさと片付けて早く綺麗にしなくちゃ、いつまで経ってもご飯が食べられないんだからさ?」
「わかったよ・・・」
__________
カイルの実力発揮。
家と認めた場所では、案外強いです。
物理的な強さではなくて、邪魔や悪戯で相手の行動を制限と言った感じの嫌がらせに特化した強さですが、実はアマラの次に船の支配権を持っていたりします。
アマラが家主で、カイルが管理人という感じでしょうか?伊達に掃除ばかりしてません。
これは・・・殺気のようだ。
そして、その気配を辿ると食堂だった。
カキン! キン! と、響く剣戟の音。
一体、食堂でなにが?
不審に思いつつ扉を開くと・・・
雪路《ゆきじ》とアルが、縦横無尽に斬り合っていた。
「は?」
身軽な二人がテーブルや椅子の背など、そして更に器用なことに、壁や天井までをも足場にし、両手に構えたナイフでの応酬を繰り広げている。しかも、全くバランスを崩すことが無い。凄いが・・・
「なにしてんだ? コイツらは…」
アルは病み上がりだ。なのに、よく見ると一方的に斬り掛かっている雪路の、怒気混じりの殺気がビリビリと漂う。意味がわからん。
「ヒュー…」
おろおろしたように座り込んだカイルが、俺を見てホッとしたように溜息を吐いた。
「ハァイ、鬼君♪」
にこりと壁際で手を振るクラウド…女の方の。
なんというか・・・あれだ。
「とうとう雪路がキレたようだな」
クラウドへ向かおうとしている雪路をアルが止めていて、斬り合いをしているように見えている。縦横無尽に壁や天井をも足場にしているのは、雪路がアルを抜こうとしているからだ。
それにしても、雪路を止め続けているアルは凄い。雪路は、この船の中で一番素早い。身体が柔軟な為、予備動作が少なくて瞬発力が高い。だから、その動きはとても読み難い。その雪路に対応しているアルも相当速い・・・いや、雪路が動いてからアルが対応しているのだから、アルのトップスピードの方が、雪路よりも速いようだ。
本気の雪路の足を止めるのは、俺でも無理なんだがな?
この前まで二人でやっていた格闘は、本当にお遊びだったようだ。
一体、アイツのどこが弱いんだ? 全く・・・
まあ、膂力や腕力自体は弱いようだが・・・それは、雪路の方も似たようなものだ。その辺りは雪路もスピードや技術で補っている。
初対面のとき、俺の攻撃を受けたのはしくじりだったとアルが言っていた意味も、よくわかった。
雪路もアルも、真っ正面から斬り合わないことが、強みになるタイプ。だからこその、失敗。
淡々と攻撃を往なして絶対に抜かせないアルに、雪路が段々と焦れて来ている。
「そうなんだよ、ヒュー。ミクリヤさんが、アルの具合いが悪いのはルー…クラウドのせいなんじゃないかって言って、斬り掛かって…」
「? クラウドの、せい?」
確か、雪路は言っていた。クラウドは他人の精神を破壊するのが得意で、何十人も廃人にしているのだと・・・そして、本人もそれを否定はしていない。クラウドは、危険なのだろう。得体も知れない。警戒はして然るべきだとは思う。
そもそも、アルの婚約者候補だというのも自称だ。アル本人からは、なにも聞いてない。
雪路とアルの古馴染で、淫魔。
他者の精神を壊すのが得意。
そして、自称アルの婚約者候補。
クラウドについては、この程度しか知らない。
話そうとは思っていたが、警戒の方が先に立つ。また、クラウド本人も、積極的に俺達に自分のことを話そうとはしなかった。
クラウドは飄々とした態度で、「アルが言わないことを、俺が勝手に話すワケにはいかないからね」と言って、妖艶に微笑むだけ。
その言い分はわかる。だが、ハッキリ言って俺のクラウドに対する信頼度は、雪路やアル以下だ。
「・・・ヒュー?」
「・・・なにか、弁明は?」
クラウドの金色が混じる紫を見据える。
「弁明、ね。特には無いよ。俺がなにをどう言ったところで、君が信じるのは猫君なんだろう?」
身体と声は女のままで、言葉だけを男にしたクラウドが首を振って言う。
「・・・」
腰に佩いたカトラスを、クラウドへと向ける。鞘のまま、刃を抜きはしない。
「ヒュー? なんで、剣を向けるのさ?」
カイルの不安げな声。
「確かに。アンタの言う通りだ。俺はアンタを、雪路程には信じられない」
クラウドは、触れるだけで他者の精神を壊すことができるという。迂闊には触れない。
「それで?」
薄く笑むクラウドに動じた様子は無い。
「だからと言って、アンタの言い分を聞かないとも言っていない。話してもらわないと、わからない」
「剣を突き付けておいて?」
「抜いてはいない」
「そうなんだけどね」
肩を竦めるクラウド。その金の混じる紫の視線は、アルをじっと見詰めている。
「?」
と、剣戟の音が変わったような気がして、
「っ!?」
ガン! と腕に走る衝撃。カトラスがなにかに弾かれ、クラウドから逸らされた。そして、丸い球がアルの手に戻って行くのが見えた。
「ヒューっ! 大丈夫っ?」
「ああ、カトラスが弾かれただけだ」
あれは、流星錘か・・・中華圏内の暗器で、鉄球や金属の錘に鎖や紐を付けて振り回したり、投げ付けるような使い方をする。錘の形状は必ずしも球形ではなく、先が尖った形や、刃物などの場合もある。その場合は、球形に比べて殺傷力が高くなる。また、球形のままだとしても鈍器のような効果を発揮する為、使い手の腕次第では簡単に骨を砕くことができるので、当たりどころに拠っては死ぬ。
しかし、紐や鎖で手元に引き戻す仕様なので、下手をすると自分に当たる。力加減やタイミング、角度や軌道計算など、流星錘は扱いが大変難しい。
ジャラジャラと音がしないから、アルの流星錘は鎖ではなく紐タイプのようだ。
中華圏の武器とは、また懐かしい物を見た。しかし、ヨーロッパ圏内ではかなりマイナーだぞ?
「丸腰で無抵抗な女の子に剣を向けるのはどうかと思うんだけど? ヒュー」
既に雪路へと振り返った翡翠、呆れ混じりの冷ややかなアルトが言う。
「女? クラウドが?」
「今は、ちゃんと女の子だよ」
「ありがとう、アル♥️」
「って、どっから出したそれっ!?」
アルは、片手で流星錘を俺へ。反対の手にはトンファーを握って雪路の攻撃を受けていた。
剣戟の音が変わったのはこれのせいか。
トンファーというのは、握りの付いた短めの棒という感じの武器だ。丁度、トという形に似ている。この、短い握りを確りと掴み、腕に添わせるように構える。防御のときはこの姿勢。攻撃のときは、握りを甘くして棒状の部分を振り回す。回転で遠心力が掛かる為、普通に殴るよりも威力が増す。攻防一体の、こちらも分類は暗器に当たる武器だ。
木製や金属製があるが、アルのは金属製。雪路のアーミーナイフを弾いている。
本来なら両腕に装備して二本で一対の武器だが、アルは片腕だけに装備したトンファーで先程のナイフよりもリーチを長くして、雪路の両手のアーミーナイフを牽制しつつ捌いている。
どうやらアルは、ナイフ使いだけではなくて暗器使いとしての一面も持っているようだ。
返事は無いが、まあ…暗器だから当然、どこかに仕込んでいたということだろう。
「きゃー、アルかっこいいー♥️」
クラウドの黄色い声援に、苛立ったように激しさを増す雪路の剣戟。
「そこっ、煽るなっ! オレ、防衛戦は苦手なんだからなっ! ああもうっ、貴方は全く・・・」
アルが慌てたような声でクラウドへ抗議し、片腕のトンファーで防御と牽制。片手に握った流星錘でアーミーナイフを弾いている。両手で全く違う系統の武器を駆使した、かなり変則的な二刀流。
苦手で、これか・・・
まあ、雪路が狙っているのはクラウドで、アル自体を傷付ける意図が無い(多分)ということもあっての、膠着状態の防衛戦と言ったところだろうか?
・・・それを俺が邪魔をしたということになるが…それにしても、わかっていて雪路を煽るクラウドは、性格が悪い。
そして生憎、俺も引き下がるワケにはいかない。カトラスを鞘のままで再びクラウドへ向けようとしたら、ダン! と食堂のドアが開いた。
「なにしてるんだっ、君達はっ!?」
食堂へ入って来るなり、声を荒げるジン。
「やめろっ、ミクリヤっ!」
と、雪路へ向かうジン。
ジンが土足でテーブルへ乗った瞬間、
「…ああもうっ、いい加減にしてよねっ!!! ここは食堂でっ、ご飯食べるとこっ! テーブルを足蹴にしていい筈ないんだからねっ!?」
カイルが立ち上がりつつ大声で怒鳴る。
「みんな転んじゃえっ!?妖精の悪戯贈呈っ!!!」
キランと光を放つカイル。瞬間、カイルと座っていたクラウド以外の全員がすっ転んだ。
「へ?」
「わっ!」
「ンなっ!?」
「おわっ!?」
足が、強制的に滑らされた感覚。
「あらあら♪」
そして、宙を舞った雪路のアーミーナイフがカランと床に落ちる。
「攻撃しようとしたら、失敗するっ!?」
ビシッと雪路を指すカイル。
「きゃー、妖精君かっこいいー♪」
「っ!」
クラウドの黄色い声に、
「ぬわっ!?」
立ち上がろうとした雪路が、またすっ転んだ。
※※※※※※※※※※※※※※※
妖精は、悪戯が大好きな種族だ。そして、他人が一生懸命に打ち込んでいることを邪魔したり、台無しにするなどの意地悪を好んだりもする。
まあ、僕はそうでもないけどね?
屋敷妖精の僕だって、妖精だ。
僕自体は一生懸命な誰かを邪魔することは好きじゃないけど、邪魔や嫌がらせ自体は、しようと思えばできるんだ。好きじゃないだけで、特技ではある。
屋敷妖精は、嫌いな人や気に食わない人へ手酷く悪戯してその家から追い出すこともある。
特に、この船は僕の家だ。家主はアマラで、アマラ程の支配権は無いけど、ここは僕の領域でもある。
攻撃力は無くても、悪戯や邪魔はできる。
嫌いな喧嘩や、家の中が汚されて行くのを邪魔することを躊躇う必要なんか、全く無い。
存分に邪魔させてもらうんだから!
こうして、喧嘩を強制終了させた。
喧嘩の原因のクラウドと病み上がりのアルを追い出して、ヒュー、ミクリヤさん、ジンに滅茶苦茶になった食堂を掃除させた。
「・・・」
ムスッとして、不機嫌そうに黙々と手を動かすミクリヤさん。そして、そんなミクリヤさんを見て困ったように手を動かすヒュー。
「…なんで俺まで…喧嘩に交ざってないのに」
そして、ぼやくジン。
「ウルサいよっ! アンタも食堂でご飯食べるでしょっ!? さっさと手動かすっ! そうしないと終わらないんだからねっ!?」
当然、僕も手を動かしてるよ?
「さっさと片付けて早く綺麗にしなくちゃ、いつまで経ってもご飯が食べられないんだからさ?」
「わかったよ・・・」
__________
カイルの実力発揮。
家と認めた場所では、案外強いです。
物理的な強さではなくて、邪魔や悪戯で相手の行動を制限と言った感じの嫌がらせに特化した強さですが、実はアマラの次に船の支配権を持っていたりします。
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