ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
162 / 179
遊び場。

※本編とはあんまり関係無いお正月企画。お遊び第十一段。

しおりを挟む
 ある年の十一月、某日。

「・・・今年も、そろそろあの時期が来ますか」

 考えるだけで憂鬱ゆううつな気分になり、思わず溜め息が零れます。

 毎年毎年、十二月という時期は酷く忙しく、忙殺されていると言っても過言ではありません。

 なぜか、アンデッドの吸血鬼達の能力が著しく低下して弱体化する時期なのです。
 理由としてはおそらく、生前の宗教観の影響なのだと思われますが、個体に拠っては体力面で人間以下に成り下がるモノもいて、仕事になりません。

 なので、まずは仕事の割り振りの調整を考えなくてはいけません。

 そして、更にこの時期がクソ忙しくなる要因がもう一つあるのです。

 我が血統の始祖である真祖の君。

 の君対策で、エレイスの上位三人であるスティングさん、クレアさん、そしてハルト達一家が十二月の下旬から特別哨戒しょうかい任務に就くので、彼らのスケジュール調整と、その穴を埋める為の人事をどうにかしなければいけないのです。※狼一家のこの時期の過ごし方の詳細は、前回お遊び企画をご参照ください。この時点のフェンネルは、全く知りません。

 人外の犯罪者達を取り締まり、場合に拠っては始末する組織の、実質的なトップの三人が抜ける穴は大きく、その調整はとても難しいのです。

 しかも、人手不足の時期に!

 なので、犯罪者達や問題を起こすクソ共の実力の程度と状況、場合に拠っては、僕や父上が現場に出ることもあるのです。純血のヴァンパイアや、それに相当する厄介な連中を相手に・・・
 厄介なモノに実力の足りないモノを当てても、人手が減るだけなので、そういう場合には自分で出てさっさと始末した方が効率的ですからね。

 厄介なモノを相手取るのはそれなりに面倒なのですが、真祖の君対策というのならば、仕方がないのです。我が血統の根絶やしを狙うの君を、警戒してし過ぎということはないでしょうからね。

 全く、毎年頭の痛い時期です。

 というワケで・・・

「・・・ストレス解消を兼ねて、あのアクセルヘタレ野郎へ嫌がらせを仕込みましょう・・・」

 僕が忙殺されているあの時期に、椿達と一緒に過ごすなど、絶対にゆるしません!

 そして、十二月が終わると一月ですからね。

 ヤマト出身の椿は、新年を家族で祝う為にお節料理を作る筈なので、その為の食材を僕が用意すれば、椿と一緒に過ごせることでしょう! ロゼットも呼べば、愛する妹に囲まれた素晴らしい新年が過ごせることでしょうっ!!!

 その時に、あのヘタレがいなければ、椿はきっとあのヘタレに愛想を尽かすかもしれませんからね♪椿はあのヘタレと離縁して、僕の下へ帰って来てくれるかもしれません!

「ふ、フフフフっ、完璧な作戦です!」

 さあ、気合いを入れて、あのヘタレへの嫌がらせ計画を練りましょう!

 椿とロゼットとお正月を過ごす為にっ!!!

 こうして僕は、クソ忙しい十二月を椿とロゼットと過ごすことを目標にクリスマスシーズンを乗り切り、二十八日に椿の暮らすブライトの家へと向かったのです。

 しかし・・・

「椿様、ですか? ヤマトの方へ旦那様と里帰りなさっております」

 ブライト家の家令が出て来て、言いました。

「ヤマトへ、里帰り・・・」

 真っ白になった僕へ、

「ええ。そして、フェンネル様が来たら渡すようにと、お手紙を預かっております。どうぞ」

 渡された手紙には・・・

『フェンネルへ。

 みみっちい嫌がらせしてンじゃないよ。

 馬っ鹿じゃないの?

 あたしと旦那様はしばらく帰らないけど、その間、アレクに変なちょっかい出すんじゃないよ。
 ちゃんと、兄様に気を付けるようレオンハルトとシーフ、リリア達にも言っておいたからね。

 追伸、旦那様にあまり酷いことするようなら、アンタを父様に告げ口する。

 椿・ブライトより』

「っ、椿・・・」

 こうして僕の計画は、椿に拠ってあっさりと潰されてしまったのです。しかも、ブライトの名を名乗って、離縁するつもりは無いと僕へ示しています。

 更には、しっかりと釘まで刺して・・・

 お正月は一応、ロゼットと過ごせました。ハルトとフェイドとリリアナイト達の厳重な監視付きで、でしたけれど。

 どうせなら、ロゼットと二人切りがよかったのですがね? という言葉は、飲み込みました。
 言うと、益々警戒されてしまいますからね。これ以上、愛する妹達と過ごせる貴重な時間を削られては堪りませんし・・・

 無論、僕は椿のことを諦めるつもりは絶対にありません。けれど、ロゼットにまで、逃げられたくはありませんからね。

 焦りは禁物です。

 愛するロゼットを手に入れる為の計画は、もっともっと慎重に練らなくては・・・
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...