あなた達を異世界の勇者として召喚してあげますよ?

しまうま弁当

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一章

消えた女の子

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牧野が晴南達に言った。

「えっ?あなた何言ってるの?」

牧野が店長に尋ねた。

「店長見ましたよね?この子の右側に紫色の服の女の子が座ってましたよね?」

店長が牧野に言った。

「いや、この子の右側には誰も座ってなかったと思うんだが。」

牧野が店長に言った。

「店長まで何言ってるんですか?」

店長が牧野に言った。

「それじゃあ安全カメラの映像を確認してみるか?」

牧野が店長に言った。

「そうですね、お願いします。」

店長が牧野に言った。

「分かった。」

晴南達はキッチンの奥にある従業員スペースへと入っていった。

従業員スペースには更衣室やモニター室や休憩室があった。

店長がモニター室の鍵を開けて晴南達をモニター室に入れた。

モニター室は10畳ほどの広さでたくさんのモニター画面が並べられており店内の至る所の映像が映し出されていた。

晴南はモニター室を興味津々に見渡していた。

晴南が言った。

「へえ???ここがモニター室なのね。モニターがいっぱいあって面白いわね。」

麻衣子が晴南に言った。

「晴南?面白がってる場合じゃないでしょ?イジメをしてたって疑われてるのよ?」

店長が画面を操作しながら言った。

「早速安全カメラの映像を確認してみよう。君達が入店したのが確か午後1時10分頃だったね。あそこは20番テーブルだから8番カメラの範囲だな。」

晴南が麻衣子に言った。

「さあ一体何が映ってるのから?ワクワクしちゃうわね?衝撃的な映像だったらどうしようかしら??」

麻衣子が晴南に言った。

「だから楽しそうにしないで!!」

すぐに8番カメラの映像が調べられた。

晴南達が座っていたテーブルが写っている8番カメラの映像が巻き戻された。

8番カメラの映像の再生が始まった。

晴南達が店長に案内されて20番テーブルにやってきた時の映像が映し出されていた。

晴南が麻衣子に言った。

「あっ、麻衣子!!見て見て!!私達が映ってるわ!!」

麻衣子が晴南に言った。

「そりゃ私達が来た時間の所を再生してるんだから映ってるでしょ。」

店長が牧野に尋ねた。

「それで牧野君が20番テーブルに行ったのが午後1時28分だったね。」

牧野が店長に言った。

「はいそうです。」

店長は映像を午後1時28分の所まで早送りしていった。

そして午後1時28分の所まで早送りを完了させるとそこで映像を静止させた。

店長が静止させた映像を見ながら言った。

「牧野君?その紫色の服の女の子はどこにいるんだね?」

牧野が店長に言った。

「そんな確かにこの子の右側に座ってたのに?」

店長が言った。

「続きを見てみよう。牧野君のいう女の子が映っているかもしれない。」

店長は再び再生ボタンを押して映像の再生を始めた。

再生される映像を確認していったが牧野がいうような女の子はどこにも映っていなかった。

何度も繰り返しその映像を再生して確認したが結果は同じだった。

牧野は信じられない様子で言った。

「そんな?どうしてあの子が写ってないの?」

店長がみんなに言った。

「念のため他のカメラ映像も確認した方がいいかもな。時間がかかるが仕方ないか。」

すると晴南が店長に言った。

「なら私達もお手伝いします。」

店長が晴南の方を振り向いた。

「いいのかね?」

麻衣子が店長に言った。

「いいですよ。ここで突っ立てても仕方ないですしね。」

店長が少し考えた後でみんなに言った。

「分かったではお願いするよ。」

店長がみんなに言った。

「みんな何か気がついたら教えてくれ。」

晴南達も加わってすべてのカメラ映像の確認作業が始まった。

手分けして各カメラの映像を再生して確認していった。

しばらく経って麻衣子が大きな声で言った。

「ちょっといいですか??」

店長が麻衣子に尋ねた。

「何か見つけたのかね?」

麻衣子がみんなに言った。

「はい。5番カメラの映像なんですけど、入店ノートを書いてる時に晴南の後ろに誰かいるみたいなんです?」

店長がみんなに言った。

「すぐに5番カメラの映像を巻き戻してみよう。」

すぐに5番カメラの映像が巻き戻されて再生が始まった。

全員で5番カメラの映像を確認していった。

すると麻衣子のいう通り晴南の後ろに少女が立っている映像が写し出された。

優斗が麻衣子に言った。

「晴南の後ろに誰か立ってるね。」

店長が画面を確認しながら牧野に尋ねた。

「ふむ??女の子みたいだが??紫色の服を着ているが下を向いてるから顔が分からないな。牧野君が見たというのはこの子かね?」

牧野が店長に言った。

「そうです。この子です。この子が20番テーブルにいたんです。」

すると晴南が麻衣子に尋ねた。

「ねえこの子おかしくない?なんでこの子の影が無いの?」

麻衣子が聞き返す。

「影??」

晴南が麻衣子に言った。

「ほら私のはちゃんとあるじゃない?」

映像をよく見てみると確かに晴南の影が映像に映っていた。

「でもさ?この子のは影がないのよ?」

指摘通りその子の足元には影らしきものが見当たらなかった。

麻衣子が晴南に言った。

「へえ晴南??よく気がついたわね。」

晴南が麻衣子に言った。

「もっと誉めていいわよ。」

麻衣子がみんなに言った。

「でも確かにおかしいわね。晴南や私の影は映ってるのにこの子の影だけ映らないなんて事あるのかな?」

晃太が麻衣子に言った。

「まずないだろうな。それと他にも気になる点がある。この紫色の服の女の子が映ってるのは、ここの午後1時8分5秒から8秒の数秒だけなんだ。」

麻衣子が晃太に尋ねた。

「それがどうかしたの?」

晃太が麻衣子に言った。

「入店ノートはレジの横に置かれているだろう。ベルガのレジは店の奥の方にある。レジに来るのなら当然店の出入口から入ってくるはずだろう。」

晴南が晃太に言った。

「そんなの当たり前でしょ。」

晃太が晴南に言った。

「出入口を記録してる2番カメラの録画映像にはこの女の子の姿は見つけられなかった。だとしたらこの子はどうやってレジ横までやってきたんだ。この子が外から入ってきたのなら当然2番カメラにあの子が映ってないとおかしいだろう。」

長孝が晃太に言った。

「なら窓を開けて入ってきたんじゃないっすっか。」

晃太が店長に尋ねた。

「窓を開ける事はできるんですか?」

店長が晃太に言った。

「開けるのは無理だな。この店の窓は全てはめ殺し(壁に直接はめ込まれた窓)だ。開け閉めができるようにはなっていない。」

晴南が晃太に言った。

「従業員用の入口からこっそりはいってきたんじゃないの?」

麻衣子が晃太に言った。

「カメラの死角をくぐり抜けてきたのかもしれないわ。」

店長が言った。

「どちらも無理だろうな。今日はレジ前にうちのスタッフが常に待機していた。スタッフ用の出入口から店内スペースに行くとなると必ずレジ前を通らなければならない。誰かがこっそり入ってこればレジやキッチンにいるうちのスタッフが気づくはずだ。あと安全カメラは死角ができないように設置してある。入店すれば必ずどれかの安全カメラに映り込むはずだ。カメラに映らないようにレジの所まで行くなんて絶対に無理だ。」

優斗がみんなに言った。

「となるとやっぱりおかしいですね。この子は5番カメラのこの数秒の映像以外どこにも映っていない。この子はどうやって店の中に入ってきてどうやって店の外に出ていったんだろう??」

晃太がみんなに言った。

「これじゃあこの子は突然晴南の後ろに現れて忽然と店の中で消えたって事になる。」

すると店長が牧野に言った。

「とにかく牧野君、この子達に謝りなさい。少なくともイジメではなさそうだ。」

牧野が晴南達に言った。

「みんな、本当にごめんなさい。私が早とちりしちゃったみたいね。」

晴南が牧野に言った。

「いえ楽しかったから全然いいです。」

麻衣子が牧野に言った。

「私の方こそむきになっちゃってすいませんでした。」

冬湖が牧野に言った。

「間違いは誰にでもありますから、あまり気になさらないでください。」

由香が牧野に言った。

「わ、私も大丈夫です。」

店長が牧野に言った。

「牧野君今日はもう帰っていいから。ゆっくり休みたまえ。明日も休んで構わないから。」

牧野が店長に言った。

「はい分かりました。」

店長が牧野に言った。

「牧野君、勘違いしないでほしいんだが、君を責めるつもりはない。君は優秀なパティシエであり店員だ。君の代わりなど誰もできない。きっと色々あったから疲れて幻を見てしまったんだ。また明後日から頼むよ。」

牧野が店長に言った。

「はいありがとうございます。」

店長がみんなに言った。

「みんな今日は本当にすまなかったね。せっかく来店してくれたのに気分を悪くしてすまなかった。」

冬湖が店長に言った。

「ちゃんと分かってもらえましたし、あまり気になさらないでください。」

晃太が店長に尋ねた。

「牧野さんが言ってた女の子は一体何だったんでしょうか?」

店長が晃太に言った。

「このところ営業再開の為にみんな超過勤務が多くなっていたからね。牧野君も疲れ果てていたんだろう。それで幻を見てしまったんだろう。」

晃太が店長に尋ねた。

「ですが安全カメラに映っていたあの子は?」

店長が晃太に言った。

「きっと光の錯覚か何かだろう。まあ君達はもう気にしなくていいから。完全にこちらの不手際だった。本当にすまなかった。」

店長が深々と晴南達に頭を下げた。

そして店長が晴南達に言った。

「お詫びの印にケーキを持って帰るといい。好きなケーキを選んでくれて構わないから。」

晴南達はこれを聞いて大喜びしたのだった。

晴南達はケーキをたくさんもらってベルガを後にしたのだった。

帰り道で美咲が笑顔で言った。

「わーい!!おみやげにこんなにケーキが貰えるなんて!!」

冬湖が麻衣子に尋ねた。

「こんなにもらっちゃって良かったんでしょうか?」

麻衣子が冬湖に言った。

「いいんじゃないかな?店長さんもお詫びの印って言ってたし。」

優斗がみんなに言った。

「でもさっきのはどういう事だったんだろう?店長さんは牧野さんが疲れてただけだろうって言ってたけど?」

晃太が優斗に言った。

「確かに牧野さんが疲れてて勘違いをしてた可能性はあるけどな。」

麻衣子が晃太に言った。

「安全カメラにも牧野さんが見た女の子と同じ服装の女の子が写ってたもんね。これを疲れてたの一言で片付けちゃっていいのかな?」

晃太が麻衣子に言った。

「そうだな、色々とおかしい点があるな。」

晴南が麻衣子に言った。

「まあベリエのケーキがたくさん貰えたからいいんじゃない?」

美咲がみんなに言った。

「そうそう店長さんも気にしなくていいって言ってたでしょ。ベリエのケーキがこんなにあるのよ。はやく帰りましょうよ?」

晴南達はベリエでの事を気にしつつも九木礼に帰るためにバス停へと向かった。
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